旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

消えゆく「国鉄形」 首都圏から去って行く湘南色

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 3月17日のダイヤ改正で去りゆく車両たちの中でも、この電車を知る人は多いのではないでしょうか。

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 ほんの少し前まで、東海道本線でも見かけた濃緑色と橙色のツートンカラーの電車。湘南色と呼ばれる塗装で、多くの人には「かぼちゃ電車」という名前で呼ばれていました。
 この色を身に纏った電車は比較的全国でも多く見られました。
 その、かぼちゃ電車こと湘南色の塗装を纏った電車も、とうとう首都圏から姿を消していきます。

response.jp 115系と呼ばれるこの電車、1963年から製造が始められて以後、改良を重ねながら量産が続けられてきたと言うから驚きです。今回引退していく群馬県信越本線などで走るのは1977年から製造されてきた1000番台と呼ばれるものですので、それでも40年以上は走り続けてきました。

 特急列車や急行列車のように目立つ運用ではなかったですが、通勤通学の貴重な足として活躍し続けてきた、いわば多くの人の生活に欠かすことができない存在だったのではないでしょうか。
 加えて、40年以上も走ることができたというのは、様々な事情があるにせよ、工業製品としての観点からも元々の設計が堅牢であったといえるでしょう。なにせ、最近の車両はこんなに長く使おうとすると、あちこちにガタがきてしまい20年も経たずにお役御免になることすらあるのですから、本当に頑丈にできているのだと思います。

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 この電車の特徴・・・というより、昔は当たり前だったこの車内。
 ドアの間にあるボックスシートと短いロングシート(日本語的には少し変ですが)の組み合わせ。見ようによっては古くさい感じもしますが、今となっては懐かしさのあるつくりです。
 この115系ではないですが、もう20年以上も昔、横須賀線を利用して通勤していた時代には、この車内レイアウトをした113系によく乗りました。残業を終えて疲れた体を引き摺り大船駅からこの電車に乗ると、空いている車内でボックスシートに座っては、揺れる車内でよく居眠りをしていました(;´Д`)

 そういえば、10年ほど前に職場の先輩と旅行に行ったとき、その先輩は呉線に乗って尾道まで行くといいながら、駅の売店で缶ビールとつまみをたくさん買い込んで嬉々として駅のホームへと姿を消していきました。恐らく、このボックスシートに座って瀬戸内の海を見ながら一盃やる積もりだったのでしょう。
 ところが、待ち合わせの広島空港で合流すると、その先輩はえらく不機嫌で酔っ払っていました。なぜなのか理由を尋ねると、乗った電車はロングシートで写真のようなボックスシートは皆無。これでは首都圏の通勤電車と変わらないじゃないか!ということでした。
 やはり、このボックスシートは旅を楽しむのに必須アイテムだったのでしょう。私もこのボックスシートが好きでしたから。

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 115系電車自体はまだまだ現役でいるところもありますが、首都圏から姿を消してしまうのは寂しい限りです。ちょっと乗りに行こうか!と気軽に行けなくなってしまいます。
 オリジナルの湘南色過去帳入りとなり、昔の「国鉄」の雰囲気を残した列車がまた一つ消えていきます。時代の流れといえばそれまででしょうが、やはり年を追うごとにこの手のニュースに接すると寂しいものです。
 残った同形の電車も(運営する会社の台所事情もあると思われますが)引退が近づくのではないでしょうか。