旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第一章・その10「エアサスペンション」(2)

◆エアサスペンション(2)

 空気バネを使った台車を履くコキ10000形式。実は、車両の検修に携わる人たちからすると、非常に厄介な貨車だった。空気バネは空気を入れなければバネとして使い物にはならないのだが、貨車には電車や気動車のように空気を供給するためのコンプレッサーなどついていない。だから何らかの方法で空気を入れなければならないのだが、ただ単に入れればよいというものではなかった。
 コンテナ車には台車を2台履かせているが、その台車には左右それぞれ一組ずつのバネが取り付けられている。だから、全部で4組のバネがついているのだが、金属のコイルバネなら台車に組み込んでハイお終い、になるところを空気バネではそうはいかなかった。

 

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 空気バネは空気を入れるときに車体に傾きがないように慎重に調整しなければならなかった。一つでも空気が少なかったり多すぎたりすると、車体に傾きができてしまい、最悪の場合は転覆事故を起こしかねないというのだ。
 実際、全検が終わって台車の再組み込みの作業は、ほかの貨車と比べてとても手間がかかっていた。車両所にある大型のコンプレッサーから空気を送り込んでバネを膨らませていくときに職員が4組分かれて、声を掛け合いながら調整するという、なんとも手間のかかる貨車だった。

 速く走ることができて、貨物といえどもエアサスなら揺れも少なくなって荷崩れも起こしにくいと思いきや、実はこんなに手間暇かかる貨車を開発したものだと、知識が少ない私なりに考えもしたものだ。
 もちろん、この貨車を開発した当時としては、その時のもてる技術を結集して開発したのだから、これはこれでよかったのだろう。
 最も、この当時で既に旧式化していて12フィートコンテナを4個までしか積むことができず、台車の空気バネに空気を送り続ける必要から、組み込める列車も限定されてしまい会社にとっては非常に厄介な貨車だったと思う。おまけに、これに対応した機関車に牽かせる必要もあるので、ますます使いづらかったに違いない。

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 民営化後にコンテナ貨物列車の高速化をねらって開発したコキ100系は、台車のバネも金属製のコイルバネを使っているので検修の手間も汎用性の高いコキ50000形式と変わらず、しかもコンテナ5個積みができて時速110km/hで走行できるようになった。やはり技術の進歩というのは凄いものだなあと関心もした。

 研修生だった私は先輩たちが台車にとりついてバネを調整する姿を見ながら、一見してよさそうに見えるものでも、実は見えないところで多くの手間がかかることもあるんだということを学んだのだった。このことは後年、仕事を変えシステムエンジニアや、今の仕事でも大いに役に立つ見地になった。