旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第一章・その12「操車の実習は暑くて眠くなるディーゼル機関車」【1】

◆操車の実習は暑くて眠くなるディーゼル機関車

 貨物駅には営業の仕事の他に、操車という仕事がある。お客様からの注文に応じて、列車のコンテナ枠を確保して何号車の何番枠に積みつける指定をするのが、旅客でいうところのみどりの窓口で指定席券を発券するのであれば、操車は何両もの貨車を入れ換えて列車として組成し、時刻が来たら列車を発車させるという仕事で、旅客の駅でいえばホームに立つ仕事のそれかもしれない(厳密には違うのだけど)。
 操車の仕事はとにかく頭を使い危険がいっぱいだ。

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 何両もの貨車を、どの列車に組み込むのかという、まるでパズルでもするかのような事から始まる。貨車の中には定期検査のために車両所へ送らなければならないものもあるし、中継といって一度は駅に到着して荷役をするが、そのまま折り返すのではなく、さらに次の駅へと行くために他の列車に連結させなければならない。
 しかもそれは単純ではなく、いくつもあるコンテナホームから何両目から何両目が中継で、何番線に付け替えるなどなど、非常に複雑なものだった。しかも、福岡貨物ターミナル駅のような大きな貨物駅は線路も数多く敷かれていて、複雑に分岐しているものだから、これまた単純には行かない。それ故に、事前にどの順番で、どの線を使って入れ換えていくかを綿密に計画を立てなければならない。
 しかも、効率的な入換計画を立てなければ、入換用の機関車を運転する機関士にも負担を強いることになるし、何より無駄な燃料を使うことになってしまう。これもまた、経験を積んだ熟練の駅員が為せる業だった。

 そんな複雑な作業を、入社して二か月しか経っていない素人には任せることはできるわけもない。だから、私は先輩たちがその計画を立てているのを横で見て、勉強するしかなかった。
 さあ、入換開始の時刻が来た。鉄道はどの作業もダイヤによって時刻が指定されている。日勤の勤務でも、列車の運転に直接かかわらない現場の仕事も、すべてダイヤが組まれている。入換も同じことで、駅の作業ダイヤというものが組まれていて、例えばこの時間の入換は輸送係AとB、そして輸送指導Aと輸送主任Aが行う、という具合だ。
 当然、研修生の私にそのようなダイヤの指定(担務指定)はない。
 でも、一緒になって作業をすると思い、意気揚々と構内本部の詰所を出ると、
「入機に乗ってよく見ちょれ」
 といわれた。

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 はあ、ここでもまた見学か。内心、面白くなかったが、それも仕方ない。
 線路を渡って待機している入機ことDE10形ディーゼル機関車へと行き、車端のデッキから狭いランボードをボンネット伝いに歩いて運転台へと入っていった。
 入機の機関士に挨拶をすると、反対側の運転席に座っているように指示を受けたので、私は機関士の視点で貨車の入換を見学させてもらうことになった。いずれは機関士を目指す一員だから、ある意味運がよいと思いしっかりと見よう、機関士の操縦や輸送係との無線のやりとりをしっかり見ることにした。