旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

「のぞみ34号」重大インシデントについて元鉄道マンの考察と提言(9)

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91.社員の教育体系の根本的な見直し【2】

 今回の重大インシデントではコミュケーション不足を指摘しました。その指摘の中で、コミュニケーション能力を開発する訓練に航空業界で用いられるCRM(Crew Resource Management)プログラムを取り入れることが考えられるとお話ししました。もちろん、異業種である航空業界のCRMをそのまま取り入れることはできないので、鉄道業界に合わせたないように改良したコミュニケーション能力を向上させる訓練は必須であると考えられます。

 前回までは・・・

 特に近年、情報機器の急速な発達とともに、携帯電話やスマートホンといった手軽な文字コミュニケーションツールの普及とともに、自分の考えや思いなどを言葉にして伝えるという対人コミュニケーション能力の不足が若い人を中心に指摘されています。とりわけ本来であれば学校教育の中で育てられるはずの「考える」「話し合う」「伝える」「聞く」という力を満足に身につけることなく、どちらかというと知識を身につけることに偏りがちな教育を受けた人たちが多くなっている現実があるということを指摘せざるを得ません。(こうした能力を身につけるための授業は文科省から指導するように示されていますが、実際の学校現場でこれを適切に指導することができる教員が少ないという実態もあります)

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 今回の重大インシデントでは車両保守の技術者と、輸送指令の指令員との間の意思疎通の欠落や、指令内での指令と指令長のやりとりでの割り込みや確認不足が、実際に危険な状態にある台車を抱えたまま運転を続行させるという誤った判断に繋がっていたことを考えると、こうした訓練は欠かすものができないと考えられるでしょう。

 さらに実際に現場で業務に就く職員に対する、日常的な訓練も必要だと考えられます。運転・営業・技術の各系統の職員が異常時に適切な連携で対処できるように、シミュレーション訓練は効果的であるといえます。同じ大量輸送機関である航空業界では、運航・客室・整備といった各ポジションでのシミュレーション訓練は欠かすことのできないものであると考えられ、地上機材を活用した訓練を義務づけることで技量の維持と向上を図っています。
 こうした他業種の例を見る限り、鉄道業界においてはこうした日常的な訓練はあまり行われていないという現実があり(あっても年に1度程度)、異常時における対処能力にも限界があると言わざるを得ません。こうしたことからも、現場配置後にも定期的に一定程度の頻度で、体系的に組まれたカリキュラムでの訓練は必要不可欠ではないかと考えられます。