旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

悲運のハイパワー機 期待を一身に背負ったはずが【6】最終章

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  2017年は2号機と17~19号機を除いて廃車となり、ついに2018年にはすべての定期的な仕事から外されてしまいました。製造からたった25年足らずで、現役でいるのはたったの4両。しかも定期的な仕事をもたず、吹田機関区で留置されたままの毎日なってしまいました。


前回までは

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 1600トン列車という、途方もない超重量列車を高速で牽くという構想の下、国鉄時代では考えられなかった新機軸を積極的に採り入れ、出力6000kWという日本の電気機関車史上、最も強力なパワーを与えられたEF200形。
 日本の物流の一端を担い、そのパワーをもって重量列車を高速で走ることで効率的な輸送をすることを期待されたにもかかわらず、その性能が仇になり地上設備が追いつかなかったが故に、旅客会社から敬遠されパワーを持て余す日々を16年間送り続けるというのは、なんとも悲運だったといえるでしょう。
 ようやくそのパワーを発揮したのも束の間、鉄道車両としては比較的短命で終わりを告げようとしています。この短さは、期待とは裏腹という言葉どおりに、過剰だった性能と少数機故の運命だったともいえなくもありません。

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 しかし、期待通りの活躍をすることは叶いませんでしたが、VVVFインバーター制御装置とかご形三相誘導電動機という新しい技術の採用、さらに運転台への冷房装置の標準装備、ボルスタレス台車の装備などは、後に続くEF210形をはじめとした新型機関車たちに引き継がれました。
 また、乗務員の労働環境という面でも、大量の機関車を必要としていたが故に、標準化された機器に囲まれ、窮屈な姿勢での運転操作を強いられた運転台とは異なり、余裕のあるレイアウトと操作性・視認性ともに向上した操作機器や計器類は、さらには冷房装置を標準装備したことは、大きな意味があったといえるでしょう。

 そうした意味で、このEF200形は、新型機関車の方向性を示したともいえ、機関車自身にとってそうしたことは本意ではなかったでしょうが、その功績は大きかったのではないでしょうか。
 そんなEF200形は、おそらく近いうちに全機が廃車になり形式消滅する日は近いと思われます。吹田で仕事を与えられることなく留置されている残りの4両の機関車たちは己の運命を悟り、静かに「その日」を待っているのでしょう。
 新製時に甲種輸送という特殊な貨物列車として新鶴見機関区に運び込まれ、このうちの何両かは座席にかけられたビニールも外されていないような真新しい運転台に上がって無線装置を取り付けるという、図らずもこの機関車にかかわった人間としては、もっともっとその持てる力を発揮して活躍してほしかったという思いを抱かざるを得ません。
 輸送力の向上と効率化など、多くの期待を背負って誕生したにしては何とも寂しい終わり方のような気がしてなりません。

 



「将来、ドライバーになったらこれを運転することになる」
 冒頭でも紹介した先輩の言葉もまた、この機関車に対する期待に溢れていたように思います。この先輩は、同じ高校出身で現役の機関士でした。
 それだけ、この機関車に対する会社と現場の期待は大きかったのではないでしょうか。

<了>