旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

消えゆく「国鉄形」 別れ別れになった兄弟たち【2】

 EF66形もまた貨物列車の課題解決のために開発されました。
 当時の貨物列車は、特急貨物列車でも最高速度が85km/hが限度で、汐留(東京)-梅田(大阪)間を結ぶコンテナ貨物列車は10時間55分の所要時間がかかっていました。
 これを、最高運転速度を一気に100km/hに引き上げて所要時間を短縮し、コンテナ貨物だけではなく当時は鉄道で輸送されていた鮮魚を水揚げされた漁港近傍の貨物駅から、消費地である大都市の市場近傍の貨物駅まで鮮度を落とさずに輸送するという構想が立ち上がります。


前回までは

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 こうした構想の下、貨車でありながら空気バネ台車を装備し、旅客列車に比べて重量があり長大編成になることからブレーキ装置も電磁ブレーキと呼ばれる応答性のよいブレーキ装置を採用するなど、もはや特急用客車並みの装備をした貨車を開発・製造しました。
 そしてこの貨車としては特殊な装備をもった車両で組成される列車を牽引する機関車も、これに対応した装備を求められることになりました。空気バネ台車を装備する車両は、常にバネに圧縮空気を送り続ける必要があります。そして、電磁ブレーキという特殊なブレーキを作動させるためには、機関車と車両の間に電気回路を構成しなければなりません。

f:id:norichika583:20180428173239j:プレーン新鶴見機関区で待機するEF65形500番台(F形)。EF66形が登場するまでの「つなぎ」として、空気バネ台車や電磁自動空気ブレーキ、密着自動連結器など特殊装備をもった10000系貨車を牽引できる装備をもった。出力は従来機と代わらなかったため、特急貨物列車を牽くときには重連で運用したために経済的ではなかった。(筆者撮影)

 客車であれば、従来からある機関車にそれらの装備を追加すれば済むのですが、貨物列車の場合は列車自体に重量があることに加えて、この重量がある列車をこれまでにない高速で牽くということもあって、機関車にも相応のパワーが必要でした。
 この頃の貨物列車には、EF60形やEF65形といった機関車が使われていました。これらは出力2550kWで、通常の貨物列車を牽くには十分な性能をもっていました。旧式機であるEF15形も運転速度は低くなりますが、それでも1900kWの出力をもっていましたので、支線区などの列車で活躍していました。ところが、国鉄が立てた計画では1000トンの重量列車を、最高速度100km/hで運転するというものだったので、新型機であるEF65形でも力不足でした。
 そうした背景もあって、さらにパワーのある機関車が求められた結果、EF66形が誕生することになります。
 EF66形は1968年に登場しました。難産の末に開発された主電動機は650kW。当時の持てる技術をすべて投じて開発され、これを6基搭載したEF66形は、定格出力は3900kWと先輩であるEF65形よりも1450kWも出力が上がりました。これだけのパワーであれば、重量列車を100km/hという高速で牽くという過酷な仕事にも余裕でこなすことができます。
 加えて、空気バネ台車と電磁ブレーキという、特急用客車にも匹敵する特殊な装備を施した高速貨物列車用の貨車を牽くことが前提だたったために、これまた貨物用機としては異例となる電磁ブレーキ指令器や、コンプレッサーを2基も搭載しました。
 EF66形が異例づくしなのは装備した機器だけではありませんでした。
 なによりも、その外観は他の兄弟たちとは一線を画すものでした。
 従来の国鉄電気機関車は機能面を重視した車体構造とデザインで、それが青い直流機であろうと赤い交流機であろうと、基本設計はすべて共通のものでした。たくさんの機関車を必要としていた当時の国鉄にとって、機関車の電気機器だけではなくブレーキ装置や台車、さらには車体設計も標準化することで、できるだけコストと整備の手間を減らす必要があったのでしょう。
 ところが、このEF66形はそうではありませんでした。正面は従来の機関車よりもさらに高い位置に運転台を配置し、当時、特急列車の象徴となっていた「こだま形」電車のボンネットを短縮させたような機関車としては独特の意匠は、EF66形が牽くことになる特急貨物列車への国鉄の期待のようなものが滲み出ていたようにも思えます。

f:id:norichika583:20180428174100j:プレーン京都鉄道博物館に展示されているEF66形35号機。(筆者撮影)

 それもそうでしょう。当時の国鉄の貨物輸送は、整備されていく高速道路網と、それに伴うトラック輸送にシェアを押されはじめていたので、高速で走る特急貨物列車はシェアを確保する上で大きな期待がもたれていたのですから。
 車体側面も機器室内に採光する小窓が、従来のものよりも天地方向に広がって大きめになり、外気を取り入れるためのルーバーもまた従来機とは異なる形状のものになりました。そして、機能重視だった従来の車体設計とは異なり、側面も途中から折り曲がり、上部へ絞り込まれる形状となりました。
 それだけではありません。台車もEF66形は特別でした。電気機関車としてはこれまた初めてとなる空気バネ台車を採用。運転台も従来機に比べて面積を広くとり、横一列に並んだ計器類は機関士の執務環境を改善しました。