旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・線路際で働く鉄道マンの持ち物【前編】

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◆線路際で働く鉄道マンの持ち物

 運転士や車掌といった乗務員は、列車の乗る時には必ず携帯していなければならない持ち物があるのは、いろいろな書籍や雑誌などで紹介されているからご存知の方もいると思う。

 駅で乗務員が交代をする時に、必ずといっていいほど手に持ったり肩からかけたりしている大きな鞄には、乗務ダイヤや規定集など諸々の物が入っている。

 

 線路に出ることが仕事の施設・電気系統の鉄道マンも、同じように現場に出る時には必ず持っていなければならないものや、持っていかなければ仕事にならないものがある。

 私が勤めたのは電気区だったので、電気系統ということになると思う。と、一言でいってしまうのは簡単だ。

 前にもお話ししたように、同じ電気といっても大きく分けて弱電と強電。弱電は電圧が低い電気を扱うが強電はその反対で電圧が高い電気を扱う。

 鉄道でいえば、信号と通信が弱電、電灯と電車線が強電となり、どれもが列車を安全に、そして安定して走らせるためには様々な設備があるので、専門も細かく分かれている。

 だから、一見同じように見える鉄道マンも、実は専門がそれぞれあって、技術と知識はもちろん、持っている物が違うことが多い。だから先輩方も、国鉄時代に何を専門にしていたかによって、持っている道具は違っていた。


 ところが、私のように民営化後に貨物会社に採用され、しかも電気区に配属された新人には先輩方のように専門などあるわけがない。だから、新人は信号の仕事をしたかと思えば、次の日には電灯の仕事をするなんてことはしょっちゅうだった。

 もちろん、毎日が勉強だった。けれど、あまりに極端に違うことを憶えなければならない時もあって、それはそれで苦労もしたもの。

 そんなわけで、私のような新人が持つ道具も先輩方が持つものとは少し違っていたし、仕事によって道具を使い分けなければならなかったから、ある意味人の倍近くの工具を持っていた。