旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

シリーズ「駅弁」の旅 信越本線横川駅「峠の釜めし」

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「駅弁~駅弁、駅弁はいかがですかぁ~」
 と、駅のホームに立った売り子が、大きな盆を抱えて駅弁を売っていたのは、もうずいぶんと昔の話になってしまいました。最近では、車内販売ですら姿を消しつつあるので、列車で旅をしていても楽しみが減ってしまう今日この頃です。
 でも、列車で旅に出たなら、やっぱりお供に駅弁は欠かせないと思うのは私だけでしょうか。
 堅いお話ばかり続いていたので、ちょっと視点を変えて、旅の楽しみ「駅弁」を紹介するシリーズを始めることにしました。ちょっとした「うんちく」も交えて、紹介していきます。

 その「栄えある」1回目を飾るのは・・・やっぱり「峠の釜めし」です。
 群馬県にある信越本線横川(よこがわ)駅で売られていた、有名な駅弁の一つです。
 何が有名か?それは、「器」なんです。

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 ご覧の通り、益子焼の立派な「釜」に入っています。しかもこの器、お持ち帰りOK。家に持ち帰って、ご飯も炊ける本格的な「釜」なんです。もちろん、その分だけ重さもどっしりとしています。

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 中身は、鶏肉とウズラの卵、山の幸の椎茸や栗などがぎっしりと詰め込まれ、その下にご飯があります。このご飯、ちゃんと味付けがされている「炊き込みご飯」です。その味はというと、濃すぎず薄すぎずちょうどよい味付けです。

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 量も多すぎず、少なすぎずなので、男性はもちろんですが、女性も「食べ過ぎた」という感じはしないと思います。香の物もついていて、柴漬けやわさびの粕漬けなどもあります。
 そしてなにより、駅弁といえば「冷めている」というのがふつうですが、この「峠の釜めし」はほんのりと温かいのが特徴なんです。実は、この温かいというのが、「峠の釜めし」の大きなセールスポイントにもなっています。
 駅弁といえば折り詰めというのが一般的ですが、駅弁黎明期の頃、横川駅で駅弁の販売を始めた「おぎのや」は、思ったよりは売れないことに頭を抱えていたそうです。どうすれば売れる駅弁が作れるのかと、当時の社長が実際に列車に乗り込んで、乗客たちに「リサーチ」したところ、温かくて楽しいお弁当がほしいということでした。
 今でいうところの需要のリサーチですね。そして、後に副社長となる社員と一緒に考えて作り出されたのが、この「峠の釜めし」だったそうです。駅弁といえば「お茶」ですが、当時は陶器の入れ物で売られていたことも、大きなヒントになったとか。そのリサーチによる商品開発が功を奏して、一躍人気駅弁になったとか。
 こうして誕生した「峠の釜めし」。現在は残念なことに、横川駅のホームでは売られていません。駅の改札横にある売店か、駅前の国道を少し行ったところにある、おぎのやの本店で購入することができます。ちょっと変わったところでは、東京駅の駅ナカにある「駅弁屋 祭」でも入手可能です。

 ちなみに、名前の由来ですが、北陸新幹線が開業するまで、この横川駅ではすべての列車に補助機関車を連結していました。その機関車を連結して国鉄(⇒JR)でもっとも急勾配だった碓氷峠に由来しています。
 実際、この機関車の連結作業に10分弱程度の時間がかかるので、当時はこの「峠の釜めし」を求めて、停車中の列車から多くの乗客がホームに降りて買い求めたとか。それだけ人気もあり有名な駅弁だったそうです。
 販売形態も変わってしまいましたが、いまも健在の駅弁なので、一度食べてみるのもいいと思います。
峠の釜めし本舗おぎのや