◆2番目の実習・福岡貨物ターミナル駅(2)
おお、これてようやく鉄道マンらしい勤務になったと意気揚々と出勤すると、その日の担務指定は営業研修。ん?貨物で営業って、何をするんだ?頭の中にいっぱいの「?」をつくると、要は駅の営業部門で通運会社から注文を受けてコンテナの枠を列車に割り当てること。そして、組成された列車の積み付け検査などをすることだった。言い換えれば、みなさんもご存知の「みどりの窓口」の貨物版といったところだろうか。
しかし、研修生にそのような知識と経験を必要とする仕事はどうかということで、なんと日中は列車から取り下ろしたコンテナを荷主さんのところまで運ぶ通運会社のトラックに便乗せよとのことだった。つまり、JRの制服とヘルメットを被ったひよっこが、荷主さんのところへ集配にいくというものだった。
さすがに頼まれた通運会社のトラックドライバーはびっくり仰天。まさか、国鉄(この頃はまだ多くの人がそう思っていたようだった)の新人職員がトラックに乗る?しかも、一日乗せて積荷の積み卸しをさせる?
私がお世話になった通運会社のドライバーも、さすがにビックリしていた。
「はぁ~、看板も変わるとやり方も変わるんかね?」
そう聞かれても、私も答えに困ってしまい苦笑いするしかなかった。
そして、私が関東からやって来たことを知ると、二重にびっくり仰天。
「エライ、遠いところから来ちょるんな」
まあ、これも会社の命令なんで仕方ないんです、はい。
そんなわけで、列車から降ろしたコンテナを積んだトラックに乗って、配送先へ行くとそこは建設現場。トラックのドライバーが荷主のところへ行っている間、私はといえばそこでただただ立ち尽くすだけ。やがてドライバーが荷主と一緒に戻ってくると、さすがに見慣れない制服を着た私を見てビックリ。JRの職員だと自己紹介をして、さらにビックリ。
「は~、JRさんも変わったんね」
感心されたのか呆れられたのかは分からないが、とにかく貨物の集配にJRの職員がついてくること自体、驚きに値するできごとだったようだ。
▲通運事業者のJRコンテナトラック Wikimedia commonsより(作者 Comyu (投稿者自身による作品) [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], ウィキメディア・コモンズ経由で
コンテナを厳封している「封緘リング」と呼ばれるアルミのリングを取り外してコンテナの中を見ると、そこにはタイルだったかレンガだったか、建築資材が載せられていた。コンテナは、こういう物も運んでいるのかと改めて知ったのだった。
現場の作業員の方と一緒になって積荷を下ろすと、再び駅へ戻っていく。
途中、ドライバーの方とは世間話や、日頃の仕事について話を聞いた。JRの貨物輸送は、こうした方たちがいて初めてお客様に利用していただけるのだと知るいい機会だった。