旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

消えゆく「国鉄形」 極寒・北の大地を駆け抜けたディーゼル特急

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 2018年のダイヤ改正まで残すところ2日になりました。
 ダイヤ改正の度に、列車の増発や運転時間の見直しなど、利用者のニーズに合わせたダイヤになるようにするとともに、できるだけ効率のよい運用ができるように、各社のダイヤ担当者は苦心しているようです。

 もちろん、定期列車だけではなく季節列車や臨時列車のスジも考えなければならないので、その苦労は並大抵ではないことが想像できます。厳密に言えば、ダイヤ改正は「ほぼ毎日」ように行われていますが、それは保守工事などにより減速が必要だったり、あるいは臨時列車で運転される車両が予め想定された速度に至らずやむを得ず減速運転をせざるを得なかったり・・・などなど、挙げればキリがないほどダイヤはめまぐるしく変わっています。
 そんな中で、利用者へのサービス向上もダイヤ改正をする要素の一つになっています。新しい車両の導入で、サービス面での改善をはかり利用者をさらに増やす、なんてことも鉄道事業者には重要なことなのです。

 さて、経営が非常に厳しいJR北海道でもダイヤ改正が行われます。
 営業係数(100円の収入を得るのにかかる費用)がほぼ全線にわたって芳しくない状況ですが、老朽化した車両をいつまでも走らせ続けるわけにはいきません。まして、基本設計が古い車両で最高速度130km/hという過酷な運転が祟って火災事故を起こしてしまっては、安全に対する利用者の信頼性も失われてしまいます。
 3月17日のダイヤ改正では、函館-札幌間を結ぶ特急「北斗」からキハ183系気動車が運用を退き、代わって新型のキハ261系に置き換えてすべて「スーパー北斗」となります。
 キハ183系は1979年に開発された、北海道向けの特急形気動車です。極寒の北の大地・北海道で運用することを前提に設計されたので、従来の特急形気動車とは一線を画する車両でした。

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 中でも特徴的なのは先頭車であるキハ183形。スランとノーズと称する角張った独特の形状で、それまでの気動車特急のイメージを大きく変えました。この形状は冬季に走行中、着雪を防ぐための形状で電車特急の先頭車のデザインをもとに平面構成としたものでした。
 また、前灯も運転台屋上に2灯、正面腰部に左右1灯ずつ配置し全部で4灯としました。これも485系1500番台や781系電車の着雪対策の流れを汲むもので、いかにも北海道らしい装備でした。

 また、国鉄時代に製造された特急形気動車でしたが、前任のキハ82系では食堂車を製造、連結されていたのに対してキハ183系では食堂車の設定がありませんでした。これは、登場が国鉄の財政事情が極端に悪化していたことと、この頃既に特急列車の短編成化と食堂車の業績が悪く営業休止となっていた列車も多かったために、あえて食堂車をつくらなかったようです。
 代わりに、グリーン車であるキロ182形には座席定員を減らしてビュッフェ車のような厨房と売店が設置されています。
 グリーン車の定員を減らしてまで?と思われるかも知れませんが、この頃にはグリーン車の需要も減っていたのかもしれません。その座席定員を犠牲にしてまで厨房と売店を設置したのは、従来は当たり前のように食堂車を連結してきた国鉄の長距離特急の常識というか伝統を少しでも守りたかったのではないでしょうか。

 

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 1987年の分割民営化直前には性能を維持したまま製造コストの軽減を図った500番台・1500番台が製造され、極寒の大地で非常に厳しい運用を続けていたキハ82系を置き換えました。
 民営化後に速度性能を向上させた550番台・1550番台が製造され、特急「北斗」に投入されて最高速度120km/h運転を実現させました。
 さらに特急「北斗」のスピードアップによる所要時間の短縮は、JR北海道にとっても重要なことだったようで、1994年には最高速度130km/h運転に対応させるため、ブレーキ装置などを改造した2550番台・3550番台が登場しました。

 北海道の冬は非常に厳しく、極寒の言葉通りに冬は雪と氷との闘いでした。
 落雪や氷柱などによる窓ガラスの破損事故が起きたために、窓にはポリカーボネートの保護カバーが取り付けられるなどもしました。
 一時は北海道の全特急列車がこのキハ183系で運転され、まさに北海道の主役として活躍しました。しかし、製造から40年近くが経ったことと、もともと冬季の気象条件が本州以南に比べて厳しく、その中で運用され続けてきたために老朽化が進行していきました。
 また、都市間高速バスとの競合で所要時間を短縮するために、設計当初の想定にはなかった130km/h運転という無理が祟ったのか、ついにはエンジンブローを起こして火災事故という不名誉な事態に発展してしまいました。

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 今回のダイヤ改正で「北斗」の運用から退き、独特な形状のスラントノーズをもつ0番台が引退します。ダイヤ改正後は引き続き特急「オホーツク」「大雪」として活躍が続きますが、こちらは500番台・1500番台・1550番台といった改良形での運用で、その数も残り僅かという状況になるようです。
 一時は北海道の鉄道のスターとして、数多くの特急列車の運用について活躍し、札幌を中心とする都市間輸送という大きな役割を過酷な気象条件の中でこなしてきた実績は評価に値するのではないでしょうか。