旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

地震で交通機関が麻痺したときには ~大阪北部地震に寄せて~

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はじめに

 本日(2018年6月18日)7時58分頃、大阪府高槻市震源とする大きな地震がありました。この地震で亡くなられた方のご冥福をお祈りしますとともに、被災された方へお見舞い申し上げます。

 今回のような規模の大きな地震が起きると、それまで当たり前で平穏だった生活が一変してしまいます。特に、電気や水道、ガスといったライフラインが破断し、不便な避難生活を余儀なくされます。加えて、鉄道やバスといった交通機関も止まり、移動することも困難になります。
 ところが、自宅にいるときに地震に遭うとは限りません。いつ何時襲ってくるのが分からないのが自然災害ですから、今回のように通勤・通学の途中で地震がやってくることもあります。

列車に乗っている時に地震がきたら

 走行する列車に乗っている時に地震が襲ってくることも十分あり得ます。
 今回の地震でも、列車に乗っている時に地震がきたという方も多いと思います。

 列車が走行中に地震がきたとき、多くの場合は一定以上の揺れが観測された場合、または一定上の揺れが予測される場合、鉄道会社は輸送指令(運輸指令)から一斉に列車を止める措置を行います。

 新幹線では気象庁のものとは別の観測網をもつ早期地震警報システムによって、大きな揺れが予測される地震波を観測した場合には、その揺れが到来する区間を走行する列車への電気の供給を止め、列車の非常ブレーキを作動させて停止させます。

 列車が脱線などすることなく安全に停止したら、まずは落ち着いて乗務員の指示を待ちます。間違っても、勝手にドアを開けて線路上に出ることは絶対にしてはなりません。乗っている列車が止まったとはいえ、ほかの列車が止まっているとは限りません(あってはならないことですが)。

 もしも電気の供給が止まっていて、空調装置が動いていなかったら、近くの窓を開けて換気ができるようにします。
 大勢の人が乗った空調も効かない車内に閉じ込められた状態が長時間続くと、車内の空気は知らず知らずのうちに汚れていきます。人の吐く二酸化炭素の量が増え、酸素が少なくなってしまうと、脳の働きが阻害されて冷静な判断ができなくなってしまいます。
 また、夏場であれば車内の気温上昇を防いで、熱中症などを予防できる効果も期待できます。

 ただし、最近の新型車両は窓を開けることができない構造のものがあります。そうした車両に乗り合わせたときは慌てなでも大丈夫です。車両の両端の窓だけでも開く構造になってい場合もありますので、そちらの窓を開けてみます。

バスに乗っているときに地震がきたら

 バスは道路を走る交通機関です。
 走行中に地震がきたら、運転士はハンドルの取られ具合で異常が起きたことを知ります。その時点で、運転士はバスを安全に停車させるでしょう。
 列車と同じく、勝手に車外へ出ないで、運転士の指示に従います。

出先(勤務先など)で地震に遭ったら

 お仕事の最中に大きな地震に遭い、仕事がストップするなどして帰宅するように指示が出ることもあります。もちろん、これはそれぞれの会社の判断ですので、退勤時刻になるまで仕事をしてようやく帰宅という場合もあると思います。
 巨大地震などでは、もしかするとお子さんのことが心配で心配で、一分一秒でも早く家に!という気もちはよく分かります。が、ここでも落ち着きましょう。
 もし、お子さんが小学校に通っているのなら、多くの学校ではお子さんを下校させずに学校で預かってくれています。保護者の方が学校に迎えにきて、直接引き渡すことになっているはずです。

 出先から駅へ向かう前に、まずは情報を集めることから始めてください。
 ただし、ここで携帯電話やスマートホンなどでテレビを見ないようにします。テレビ機能を使うと、バッテリーの消耗が激しくなり、肝心なときに使えなくなってしまいます。
 情報を集めるときには、ニュースアプリやニュースサイトを活用します。また、自分が利用する鉄道会社のサイトを見ることも有効です。ただ、こうしたときにはアクセスが集中してつながりにくい状態になることもあるので、確実な情報を手にするまでは不用意に行動しない方がいいでしょう。

 もしも、利用する鉄道が動いていれば駅に向かいます。もっとも、乗換がある場合は、その乗り換え駅から先の鉄道が動いていない場合もありますが、そこまでは行けるので乗っていくのも方法の一つです。

列車が動いていない!

 大きな地震がきたとき、ほとんどは列車の運転を止めて、線路の安全点検を行います。これは、法令で定められていることなので、鉄道会社はこれを省略することができません。
 問題は、その点検がいつ終わるか、ということです。

 もしかすると、1時間で終わるかも知れませんし、1日かかるかも知れません。
 地震が大きければ大きいほど、時間はかかると考えてください。

 交通機関は使えないので、歩いて帰ることを考えることと思います。
 交通機関があてにならない状態なので、それはある意味正しいかもしれません。

 でも、そこでワンストップして考えるといいかもしれません。
 自宅まで何時間歩けば着くことができるか、ということを考える必要があります。
 もし、自宅まで10kmの距離があった場合、何時間かかるのでしょう。
 普段なら時速6kmであることができる方なら、1時間40分で行くことができますが、こうしたときは周りの人も同じことを考えます。そうすると、道路には普段の何杯の人が歩いていることになり、歩く速さも遅くなってしまいます。ですから、普段の倍の時間がかかると考えた方がいいと思います。この人の場合、3時間20分かかると計算できます。

 もしも出発するのが日没前なら、すぐに行動してもいいかもしれません。
 日没後の早い時間、例えば17時30分に出発するのであれば、家に着くのは20時50分頃になるでしょう。
 ですが、出発時刻があまりに遅い場合は、よく考えてから動き始めるといいかもしれません。こうしたときは停電になっていることもあり、場所によっては真っ暗で何も見えないところもあるかもしれません。思わぬ事故や事件に巻き込まれる危険性が、普段以上に高いので、会社や近くの避難所で安全を確保しながら待機するのも一つの方法だと思います。
 大きなケガを負ったり、最悪命を落としてしまっては何もなりません。夜が明けて、明るくなってから行動することは、自分の命を守ることにもつながります。

 おわりに

 東日本大震災の時に経験したことをもとに、交通機関が麻痺したときにどうすればよいかを考えてみました。
 日本はまさに地震の巣の中にある国です。いつ、何時、どこで地震が起きても不思議ではないと思います。今回の地震でも、震源とされる活断層での地震発生率は0.1%だと予測していたようですが、結果として地震が起きてしまっています。言い換えれば、地震の予測はあてにはならない地震は予測ができないということではないでしょうか。それ故、普段から地震への備えをしておくことが、色々な意味でその後を変えてしまうといえるでしょう。
 この記事がお役に立つことがないことが一番ですが、万一の備えの参考にしてた抱ければ幸いです。