旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・隅田川駅で見た「モノ」とは【前編】

連絡船でしか見られないはずの貨車

 ある日、隅田川駅構内で信号機の見学をすることになった。信号機といっても、道路の信号機のように単純ではなく、鉄道では目的によって種類も多いから憶えるのがとにかく大変だった。
 よく見かけるのは道路の信号機のように赤や黄、そして青の信号機。灯色信号機といって最も基本てきな信号機だ。青は「進行」、黄は「注意」で制限速度は45km/h、赤はもちろん「停止」でそこから絶対に進んではならない。この灯色信号機にも種類があって、出発信号機や閉塞信号機、そして遠方信号機と設置される場所や、目的、それにその路線の閉塞方式によって異なる。
 このほかにも、駅構内での入換に使う入換標識と入換信号機。かまぼこ形をした白色の3つの灯火の信号機で一見すると見た目は同じだが、かまぼこ形の信号機の下にある紫色の灯火の有無によって使い方が変わるという。入換標識は駅の輸送係が誘導しなければ車両は動いてはならないが、入換標識は輸送係の誘導なしで移動ができるという規則になっている。ちょっとした違いで、種類も運用の仕方も変わってしまうから驚いた。
 信号機の説明を受けながら駅構内を歩いていると、ちょうど入換が始まってDE10形ディーゼル機関車が発するエンジン音ともに、貨車が押し込まれてくる「ガチャンガチャン」という音が聞こえてきた。
 もちろん、私は線路上にはいないので身の危険はなかったが、どうも音がいつもと違って聞こえたので、入換の車両の方に目を向けると、DE10形の前には3両か4両ほどの板ッペラだけの二軸貨車がつながっていた。そのうち一両には操車をする輸送係が乗っていた。
 二軸貨車といえばワム80000形といった有蓋車があることは知っていたし、民営化後も多くが使われていることも知っていたが、板ッペラの二軸貨車は初めてだった。そして、走りゆく貨車の標記を見ると「ヒ600形」という形式だった。
 この貨車、控車という種類の貨車で、普段はあまり使われないという。その昔、青函連絡船宇高連絡船といった船に車両を載せるとき、船の中に敷かれたレールと地上のレールをつなぐ可動橋という橋に入換機関車が乗らないように、船に載る車両との間に挟むように連結して使われた貨車だった。
 では、なぜ隅田川駅に?となるが、当時の隅田川駅国鉄時代の配線のままで、上野方の引上線や発着線とコンテナホームとの間は比較的急なカーブになっていた。カーブを通過する時、貨車の連結器は横方向に力がかかってしまうが、このまま連結器を外ししたり繋げたりしようとすると上手くいかないことがある。そのため、カーブ上にコンテナ貨車がかからないように、わざと「無駄」な貨車として控車を連結していた。
 まさか、都心に近い貨物駅で控車が使われているとは思いもしなかったので、少々驚いたものだった。