旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・転轍機(てんてつき)の定期検査【前編】

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◆転轍機の定期検査【前編】

 1か月近くの隅田川での研修を終えて、ようやくもとの職場に戻って本格的に仕事を始めることができた。運転や車両に行った同期と比べると、研修期間が長かったが、まあこれも仕事のうち。

 貨物駅はとにかく広い。大規模な駅だと東京ドーム何個分なんていう広さがある。どんなに小さな駅でもそこそこの広さ。どちらにも共通していえるのが、本線から分かれて貨物用の側線があり、そこには必ず転轍機があるということだ。


前回までは

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  転轍機(てんてつき)という言葉はあまり聞き慣れないと思う。簡単に言えば「ポイント」だ。この転轍機は信号の用語で、施設(保線)の人は分岐器(ぶんぎき)という。同じモノを指していても、専門が変わると用語も変わるから、なんともややこしく慣れるまでは苦労させられた。
 例えば・・・

 

新鶴見の76ロの転轍機の保全(検査)をするんだけど、施設さんは検査の予定ある?」
 と、信号の人が話すと、
「ああ、76のロの分岐器は、来月に細検(細密検査)をすることになっているから、電気さんそこまでもたせられる?」
 と、施設の人が話す。これで話が通じてしまうから、専門の世界というのはある意味驚きだった。そうはいいながらも、私自身、気がついたらどっぷりと浸かっていた。

 あとで分かったことだが、分岐器は二つ以上の方向へ振り分ける線路を指している。転轍機はその分岐器を操作する装置を指していて、多くは信号装置に連動しているので電気区または信号通信区の管轄になるが、車両の通過が極端に少なく万一誤って他線に進入しても大きな影響がないところに設置される分岐器には簡易な転轍機が設置されていて、こちらは保線区の管轄だった。
 まあ、これを見分けるのにも苦労したものだ。

 さて、一言に同じ転轍機といっても、その種類はいくつもある。大きく分けると電気で作動するものと人力で作動するものだ。電気で作動するものは電気転轍機といい、電気モーターで分岐器を転換させる。もちろん、信号装置につながっていて、駅の信号扱所かCTCセンターで操作しなければ動かない。

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 人力で動かす転轍機は、分岐器の傍に「転轍てこ」とか「ポイントリバー」と呼ばれる長いハンドルがあり、それを駅で操車をする輸送係が引いたり回したりして操作し、分岐器を転換させる。
 もちろん、こうした転轍機も多くが信号装置とつながっていて、不用意に操作できないように「電気鎖錠装置」というのが取り付けられ、駅の信号扱い所で解除の操作をしなければ動かすことができないようになっている。