旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

消えゆく「国鉄形」 常に目立つことなく隠れた力持ち【2】

広告

 DD13形には排気量31リットルの直列6気筒エンジンであるDMF31形を2基装備していました。このエンジンは最大出力を370PSを出すことができました。
 しかし、当時つくられていたバス用のエンジンが、同じ直列6気筒、排気量8.5リットルで最大出力が160PSという性能であることと比べると、DD13形のエンジンは燃料の消費量が多い割には出力が低いものでした。言い換えれば非力で効率の悪いエンジンで、車両の入れ換えという力の要る仕事を担わされていたのでした。

 このエンジンの非力さに加えて、車両重量が56トンという入換用機関車としては軽量級で、貨物を満載した重量の嵩む貨車を0km/hから引き出すのには苦労をし、ようやく走ったかと思えば今度はブレーキ力が不足してしまうなど、操車場での入換作業には不向きでした。
 後にエンジンは改良されて、1基あたりの最大出力500PSにまで上がって改善されたとはいえ、やはり動輪が4軸であるために重量の嵩んだ貨車を牽引している時のブレーキ力の不足は悩みの種でした。
 そしてもう一つのお仕事である支線などでの小運転では、DD13形の軸重(車輪にかかる重量)が14トンという重さが、国鉄のローカル線の軌道がその構造から耐えることができず、DD13形が入って走ることができませんでした。

 こうして、動力近代化の一翼を担うと期待されたDD13形も、大規模操車場では使うことができず、ローカル線にも入ることができないことから、小規模の貨物駅での入換作業を中心とした仕事に甘んじるほかありませんでした。

DSC04435 -1

 しかし、大規模操車場での入換作業に、黒煙をモクモクと吐く蒸気機関車をいつまでも使い続けるわけにはいきません。こうした操車場は、大都市圏の近郊にあることが多く、そのままでは公害を撒き散らしていると批判されかねませんでした。

 DD13形の改良形は、エンジンの出力が500PSまでに向上し、それを2基装備しているので機関車1両あたりの出力は1,000PSとなり、ようやく貨車の入換作業にも耐えうる性能をもつに至りました。

 そして国鉄は、この改良形エンジンを2基を1つまとめて、より大出力のエンジンをつくろうと開発を続けました。
 V形12気筒、排気量61リットル、出力1,000PSという大出力の性能をもったDML61形エンジンを開発し、この大出力エンジンを2基装備した本線用のディーゼル機関車であるDD51形が、1962年から量産されていきます。

 DD51形は試作機をつくらず、先行量産機をつくることか始まりました。
 大出力エンジンとトルクコンバーターを組み合わせた、いわゆる「液体式」とよばれる方式の本格的な本線用ディーゼル機関車であるDD51形は、まさに当時の国鉄が待ち望んだ「本命」といえるものでした。
 このDD51形が成功すれば、非電化路線に多く残存している蒸機機関車を淘汰し、動力車の近代化と無煙化を成し遂げることができます。ですから、国鉄としても是が非でも成功させなければなりませんでした。

 そんな期待を一身に背負って登場したDD51形は、1号機での試験をおこないます。そして、改良箇所を洗い出し、2号機から4号機の二次試作機の製造とさらなる試験を経て、ようやくDD51形は本格的に量産へと移されていき、各地の非電化路線へと配置されていきました。