旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

消えゆく「国鉄形」 常に目立つことなく隠れた力持ち【4】

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 こうして重入換用機の試作機であるDE10 900番代が操車場で仕事を始めてみると、DE10形とくらべて重い貨車を連ねてハンプを押し上げる作業を難なくこなすことができました。
 いくら緩いとはいえ重量の嵩む貨車を坂道で押し上げるというのは過酷な仕事で、こうした入換作業では軸重が重い方が動輪とレールの間にできる摩擦も大きくなって有利になります。

 重入換用の試作機の働きぶりは操車場で機関車を運転する運用側にも、操車場で入換作業をする運転現場にも好評だったようでした。これを受けて国鉄は、各地の大規模操車場での入換専用機として、DE10形を改良したDE11形を1967年からつくり、蒸気機関車が残存する操車場へと送り込むことにしました。

DE11 43 shunting at Shinagawa
▲操車場における重入換用機関車としてつくられたDE11方は、その外観はDE10形とほとんど変わらなかった。写真の2位側ボンネット内には客車暖房用の蒸気発生装置を載せない代わりに、デットウェイトとなるコンクリートブロックを載せて軸重を増やした。また、重連での運用は考慮しなかったため、重連総括制御も省略されたために、デッキの手摺りはDD13形同様にシンプルなものとなり、連結器周りのジャンパ栓類もなくブレーキホースがあるのみというスッキリした印象になった。(©Hahifuheho [CC0], ウィキメディア・コモンズより

 1967年からつくられ始めたDE11形は、外観こそDE10形と大きく変わりませんでした。それもそのはず、エンジンも同じ1,250PSの出力をもつV形12気筒で排気量61リットルのDML61形エンジンを1基装備し、台車もエンジン側は3軸台車、反対側は2軸台車を履いて、運転台も長いボンネットと短いボンネットに挟まれた「セミセンターキャブ」の形でした。言い換えれば、DE10形の車体や走行装置、そしてエンジンをそのまま同一というものでした。

 しかし、車両の重量はDE10形が65トンであるのに対し、DE11形は70トンまでに増加させました。これは、車両の重量を増すことで軸重を14トンまでに増やし、入換作業をする時に動輪とレールの摩擦を大きくするためでした。DE11形が入換専用機なので、DE10形のようにローカル線を走ることを考慮する必要がなかったために、こうした思い切った重量増加ができたのです。

 その重量を増やすために、短いボンネットの中には本来あった暖房用の蒸気発生装置を取り除き、代わりにコンクリートブロックを載せました。このブロックの重さは合計で5トン以上もあるという、とても大きく重い物でした。
 また、本線上を客車や貨車を牽いて走ることを想定していませんでした。本線を走っても、せいぜい仕事場である操車場や貨物駅と住処である機関区などとの間を単機(1両)で行き来するだけなので、重連総括制御装置なども必要はありません。DE11形ではこうした機器類も省略しました。
 つまりDE11形は、重量の嵩む貨車を押したり牽いたりして走るために、必要な最低限の機器を装備した機関車だったのです。