旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

再び空の上でプロの仕事を見た!

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 一度旅に出かけると、いろいろなことが身の回りに起こります。
 名所を訪れて、感動することやものに出会ったり、これ以上ないという美味しいものを食べたり・・・などなど。
 所用で関西へ出かけた時に、驚くほど「プロフェッショナル」なお仕事をされている方に出会いました。 

1.空路で西へ

 所用で関西へ出かけてきました
 普段なら大阪方面へ行く時は新幹線を利用することが多いのですが、昨年から溜まったマイレージを失効する前に消化しなければと、飛行機を利用する機会が増えました。
 東京羽田から離陸して1時間もすると大阪伊丹に下りている。
 本当に乗っているだけなら飛行機は速いですが、乗る前の搭乗手続や保安検査、着陸してからゲートまでの誘導路の時間を考慮すると、やっぱり新幹線と時間は余り変わらないかな?と思います。

 さて、今回は東京羽田を7時30分に出発する便に乗りました。
 飛行機を利用しての移動は、少なくとも出発の30分前までには空港に着いていなければなりません。この日も、7時には空港に着いていなければならないし、空港までの時間を考えると出発は6時、起床は・・・何時だったけ?忘れるほど早かったです(;´Д`)

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2.空港へ到着~チェックイン

 空港には1時間前の6時30分には到着。出発ロビーには、年末年始の繁忙期は過ぎ去ったようで、それほど混んでいるという印象はありませんでした。もっとも、7時頃になると混雑することが多いので、この日もこの後混んだのかもしれません。
 チェックイン端末で搭乗手続を終えて、保安検査も無事に通過。あとは搭乗時刻までカードラウンジで眠気覚ましのコーヒーを飲んで一休みをし、出発20分前にはゲート前へと行きます。
 搭乗時刻になると、ゲートで地上係員の方が優先搭乗順にお客さんを案内し始めると、私はいつものようにICチップの内蔵されたカードを出しました。そして、いざ自分の搭乗の順番がくると、そのカードを改札機にタッチして、ボーディングブリッジを通りました。

3.搭乗ゲートから機内へ

 この間にいつもならカードをしまうのですが、この時はコートやらカバンやらを手に持っていたので、なかなかカードをしまうことができず、手に持ったまま飛行機の入口まで行きました。
 飛行機の入口では、その日の客室乗務員の責任者でもある専任客室乗務員の方が、入口の脇に立ってお客さんを出迎えます。専任客室乗務員の制服はほかの客室乗務員と違って、白いジャケットなのですぐに分かります。
 次々に通って行くお客さんに、チーフパーサーは「おはようございます」「お待ちしておりました」と丁寧にあいさつをして出迎えていました。
 私もいつも飛行機に乗る時と変わらず、あいさつをされると会釈をするか、「お世話になります」などあいさつを返すのですが、この時は少し違いました。
 「おはようございます」とほかのお客さんと同じあいさつのあと、一瞬だけ間が空いて「いつもご利用ありがとうございます」と、一言付け加えてくださいました。

4.「いつもご利用ありがとうございます」

 専任客室乗務員の方の「いつもご利用ありがとうございます」の言葉。
 「いつも」とは、いったい何のことかな?と、ほんの一瞬だけ考えてみると、数ある航空会社の中で常に利用していただいている、ということだと思いました。あたりまえですけど・・・。で、どうしてその一言が付け加えられたのかは、私は自分の座席に辿り着くまで分かりませんでした。
 とはいえ、いつもと同じように「お世話になります」と一言あいさつをして、旅客機特有の狭い通路を進んでいきました。
 そして、自分の座席に辿り着くと、荷物をハットラック(座席上の荷物棚)に入れて、指定された座席に座るとき、手にしたままのカードに気付きました。
 そうです。専任客室乗務員の方は私のもっていたカードを見て、「いつもご利用ありがとうございます」の一言を付け加えたのでした。

5.その一言を付け加えた理由

 専任客室乗務員の方の「いつもご利用ありがとうございます」の言葉。
 「いつも」とは、いったい何のことかな?と、ほんの一瞬だけ考えてみると、数ある航空会社の中で常に利用していただいている、ということだと思いました。あたりまえですけど・・・。で、どうしてその一言が付け加えられたのかは、私は自分の座席に辿り着くまで分かりませんでした。
 とはいえ、いつもと同じように「お世話になります」と一言あいさつをして、旅客機特有の狭い通路を進んでいきました。
 そして、自分の座席に辿り着くと、荷物をハットラック(座席上の荷物棚)に入れて、指定された座席に座るとき、手にしたままのカードに気付きました。
 そうです。専任客室乗務員の方は私のもっていたカードを見て、「いつもご利用ありがとうございます」の一言を付け加えたのでした。

6.専任客室乗務員の鋭い観察眼

 お世辞にも広いとはいえないボーディングブリッジからは、次々と乗客がやって来ます。ともすると、言葉どおりに「押し寄せるように」やって来るので、一人ひとりをじっくり観察する余裕などないことでしょう。
 恐らくは、新人はもちろんですが、経験年数の若い乗務員だったら、あいさつをして出迎えるのが精一杯だったかもしれません。
 しかし、専任客室乗務員の方は次々にやって来るお客さんを、一人ひとりしっかりと観察していたのでした。それも、ほんの一瞬という時間だけで、様々な情報を得ているのでしょう。手助けが必要なのか、留意すべきことはあるのか・・・などなど。
 そして、私の場合は手に持った荷物と一緒に、この航空会社のカードを持っていたことを、ほんの一瞬で読み取り、あの「いつもご利用ありがとうございます」という一言を付け加えたのだと思います。

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7.プロフェッショナルな仕事

 まさにプロの観察眼に、驚くとともに、非常に感心させられました。
 ただ漠然と仕事をこなすのではなく、利用するお客さん一人ひとりのニーズは何か、留意すべきことはあるのか、などなど恐らく若い頃から乗務する中で、その観察眼が培われてきたのだといえるでしょう。
 ただただ漫然と仕事をこなすだけでは、身につかないプロの技でした。

8.自ら機内を見回る・・・放たれる鋭い視線

 この専任客室乗務員のプロの仕事は、これだけではありませんでした。
 最後のお客さんが機内に入ってきて、ほぼ全員が座席に座ってシートベルトを締め終えた段になって、前方から挨拶をしながら通路を進んでくる専任客室乗務員の方の姿が見えました。
「おはようございます」
「ご搭乗、ありがとうございます」
 会釈をし、挨拶をしながらこの方はゆっくりと後方へと進んできました。
 これには少々驚きました。客室の責任者である専任客室乗務員が、わざわざ通路をる来ながら挨拶とは、あまり経験がないことです。非常に丁寧だなあ、と感心していましたが、この方にはもう一つの目的があったことに気付かされました。
 それは、丁寧でもの柔らかなあいさつをし、会釈をしながらゆっくり歩いてくるのですが、その方の表情は柔らかくても目が笑っていませんでした。顔は笑顔でも、目から放たれている視線が鋭かったのです。
 いったい何を見ているのかと思うと、その視線の先には乗客のシートベルトや、座席の足回りがありました。乗客一人ひとりがシートベルトを締めているのか、足回りに離陸に差し障るような手荷物がないのかを確認しながら、乗客にあいさつをして回っていたのです。

9.伊丹空港に到着、まだまだ続くプロの仕事

 飛行機は何事もなく目的地に到着しました。
 わずか50分のフライトなので、離陸して上昇したかと思えば、すぐさま降下して着陸となります。最高高度もせいぜい20,000ftから25,000ftほどまでしか上がりません。
 飛行機の乗務員にとって、一回あたりの乗務時間は少ないのですが、その分だけ離陸と着陸の回数も多くるので、負担も多くなってしまいます。まあ、飛行機にとっては短距離となる国内線なので、仕方がないことなのですが、それでも疲労の度合いは国際線に比べると大きいようです。
 目的地に着くと、座席から立ち上がって荷物を取り出し、再び狭い通路を抜けて、ボーディングブリッジへと向かいます。
 飛行機の出入口には、客室乗務員の方が見送りに並んでいました。
 もちろん、先ほどの専任客室乗務員の方も乗客の見送りをしていました。
 そして、私もほかの乗客と一緒にそこを通り抜けようとしたとき、
「いつもご利用ありがとうございます」
 あの、搭乗するときと同じ言葉を付け加えて挨拶をしてくださいました。
 もはや、この言葉は私に向けられたものだと思いました。
 搭乗するときに、カードを持ったひとりの乗客の身なりと顔を覚え、50分後に降機するときに再び同じ言葉で、贔屓にしていただいていることへの感謝の言葉をかけるということ。
 それは、まさしくその道のプロであり、鋭い観察眼と記憶力、そして乗客をもてなすとともに、感謝の気持ちをもっているからこそできることなのでしょう。

10.なにを学ぶことができるのか

 さて、専任客室乗務員の方の「技」から、何が学べるでしょうか。
 仕事をするということは、大きく分けて二つあると思います。
 一つは、あてられたミッションを粛々とこなし、それを完遂することです。そのミッションにはある程度の困難も伴い、ともするとある程度の創意工夫が求められることもありますが、基本的にはミッションを完遂すればよしとされます。
 もちろん、それでも給料はもらえるので、何の問題もありません。

 もう一つは、与えられたミッションを完遂するだけではなく、常に目の前の仕事のために、その時できるベストを尽くせるのか、あるいは常に自らを高める努力をしているか、ということです。

 専任客室乗務員の方は、恐らく後者であり長年そうした努力を積み重ねてこられたのでしょう。
 それ故に、一瞬でお客さんの細かい特徴を捉え、その時に考えられるベストな仕事を、瞬時に判断してできるのだと思います。

 やはり、同じ仕事をするのなら、与えられたミッションをこなすだけでなく、この専任客室乗務員の方のように、その時できるベストな仕事ができるように、日頃から腕を磨き続けたいものです。