普段は鉄道に関連したお話を書いておりますが、今回は新型コロナウイルスに関連した時事的な内容です。あくまでも、筆者が感じたことや考えた一個人としての内容です。いろいろなご意見や考えをおもちの方もいらっしゃると思いますが、これらを否定したり肯定したりする意図はありません。予め、ご了承の上お読みください。
とどまることを知らず、猛威を振るい続ける新型コロナウイルスは、国内で感染する人が増え続けています。
東京ではついに1日約190人以上*1が感染し、多くの人の尊い命が奪われています。また、大都市圏を中心に、周辺の府県にも広がりを見せ、同時に感染された方を受け入れる病院のベッド数も僅かとなり、医師をはじめとする医療従事者の方たちのご苦労は計り知れないものがあります。
このような中、4月9日にはとうとう7都府県に対して、政府による「緊急事態宣言」が発令されました。新型コロナウイルス感染拡大防止を最大の目的にしたものでした。が、海外メディアなどを中心に「遅すぎた」「その割には規制が甘いのでは」などといった、批判的な論調を唱える報道機関もあります。
一方では、国民に向けて1世帯あたり2枚の布マスクを配付するなどの、国民を保護する対策も打ち出してはいます。しかし、これとて海外メディアからは失笑と非難の声がありました。
まあ、WHO(世界保健機関)は「布マスクは勧めない」というコメントを発表しています。いったいどっちが本当なの?と聞きたくもなりますが、全くないよりはマシなのかも知れません。
ところで、この「緊急事態宣言」をより効果的なものへしようと、東京都は多くの業種に対して休業を要請しようとしました。そこへ、国が「待った!」をかけたことで大混乱。東京都と厚労省で調整をしましたが、どちらも折り合うこともなく、ついにはトップ同士が話し合って決着させたというものでした。
翌日に休業を要請する業種・業態の具体的な例が発表されましたが、それを見て驚いたのは私だけではないかも知れません。
その、内容とは・・・
なんと、外食産業でもいわゆる居酒屋の類の営業が、条件付きとはいえ認められたということです。東京都は当初、居酒屋も自粛要請の対象にしようとしていましたが、国は対象に入れることに難色を示したとのこと。いろいろなメディアでいろいろなことを言っているので、実際のところは推し量るしかないようですが、アルコールの提供は午後7時までで、午後8時には閉店とは。
これでは、なんのための自粛要請か分からなくなります。
もちろん、個人営業や小規模事業者にとっては大打撃です。こんな自粛、しなければそれに超したことはありませんし、死活問題といってもいいでしょう。お客さんは来ないし、来ても制限があっては収入にもならないことは容易に予想できます。
大手チェーン店なら、これでも持ち堪えることはできるかも知れません。そして、営業を条件付きで許すことで、急激な業績悪化に苦しむ個人経営や中小事業者に対して、補償をしなくても済む口実にもなるのでは・・・なんて、勘ぐってしまいます。
この「玉虫色」の解決方法は、コロナとの闘いの最前線にいる都と、最前線から遠く離れたところで机上で考える国とが生み出した「妥協の産物」といえるかも知れません。
他にも様々なことが、言えるのかなと思います。それを一つひとつあげているとキリがないのですが、いずれにしても「現場」と「非現場」との温度差の違いは大きいようです。(この温度差は、鉄道マン時代に散々味わってきたので、今さら驚きはしませんが、それにしても・・・です)
この緊急事態宣言の発令からこの方、世の中の動きを見ていると、ある映画のワンシーンを思い出しました。
それが、これです。
(amazonより引用)
ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、1980年代終わりから90年代初めの頃に流行ったアニメ。押井守監督の作品の一つです。
この映画は、PKOに派遣され、最前線から遠く離れたところから出す「命令」に従ったが故に、多くの部下を失った元幹部自衛官が、帰国後に首都東京を戦場にした「擬似的な戦争状態」を演出するテロを起こすというもの。それをいち早く嗅ぎつけ、解決する「寄せ集め警官」たちの活躍を描いたものです。
この中で、既に深刻なまでに事が進み、首都東京で治安出動で都内に展開した自衛隊と、首都東京の治安を預かる立場にありながら、上層部のミステイクで脇役にさせられた警察が対峙し、一触即発の状態の中、警視庁内で主人公の1人が呟いた台詞がこれです。
『戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意思決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ』
この台詞。妙に納得してしまうのは、私だけでしょうか。
戦線=つまり現場から遠いところにると、その深刻さなどが分からず、「このくらいなら大丈夫だろう」などという楽観的な見方になってしまう。今回のコロナは防戦一方の闘いに終始しているので、なおのこと現実なんかわかりにくい・・・とも読み取れます。
いずれにしても、この映画の公開は1993年。首都東京で自衛隊が治安出動で展開する事態こそあり得ないお話ですが、新型コロナウイルスという見えない「敵」との闘いで、似たような状況になったのは偶然とはいえ驚くものだと思います。
そして、意思の最終決定を下すときには、可能な限り現場の状況を身をもって知ることが最善なのかもしれません。
いずれにしても、この新型コロナウイルスの災禍が一刻も早く終わり、これ以上の犠牲を出さずに終わることを願わずにはいられません。
そのために、今できることをしっかり
末筆になりましたが、今回のことで感染・罹患された皆さまの一日も早い回復をお祈り申し上げます。また、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
今回も、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
今回、参考にした資料など
*1:2020年4月11日22時現在