旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

さらば札沼線末端区間【6】 《鉄路探訪》かつての「赤字83線」から、都市圏輸送を担う電化路線へと進化する鉄道・札沼線

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新琴似-百合が原(2)


 一度改札口にいってみあると、なるほど改札の外にはいすが並べられていて、列車の到着を寒い思いをすることなく待つことができる。しかも、自動改札機の真上には、到着する列車の行き先と発車時刻を知らせる液晶モニターがあり、さらには列車の到着10分前ぐらいになると、「改札を始める」という放送まで流れるのだ。改札を始めるという発想は筆者にはなく、駅といえばいつでも改札を通ることができると思い込んでいたが、どうやらそれは高頻度に運転される都市圏でのことで、20分に1本の運転ということになると事情も違うらしい。

 ところで、新琴似駅という駅の名称。函館本線にも同じような名称の駅がある。琴似駅は札幌駅から小樽方に2駅目、札沼線函館本線から分かれる桑園駅の次の駅だが、地図で見るとまったく違う位置にあり、その距離は直線でおよそ5kmも離れている。だが、どちらも鉄道を敷設する際に、屯田兵で作る兵村の嘆願によって作られた経緯をもつという点では、この2駅は似ているかも知れない。とはいえ、似て非なるものであるから、間違えようものならとんでもない目に遭うだろう。同じような例を挙げると、国鉄→JRの駅でいえば、東海道線横浜駅東海道新幹線の新横浜駅が有名な話だろう。

 そんなことを考えていると、次に乗る列車がやってきた。

 今度こそは、札沼線を中心に運用されている客車改造のキハ141系気動車と期待していたが、その期待はものの見事に裏切られることになった。やってきたのは先ほどと同じキハ201系気動車。どうやら、日中は札沼線の運用にも入っているようで、この日確認できただけでも3両編成2本のキハ201系気動車札沼線で使用されていた。JR北海道の非電化区間の虎の子であるキハ201系気動車は、その製造コスト故に全部で4本しか造られなかったというから、そのうち半分が札沼線を走っていたことになる。

 新琴似駅を発車すると、やはりこれまでと同じようにすぐに加速を止めて、あとは50km/h程度の速さで走っていく。新琴似駅から少し走ったところで、これまで続いた高架線は終わりになり、あとは地上を走行していく。そして長く続いた直線から、緩やかな右カーブを描きながら次の太平駅に着く。

 

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札沼線の地上線の様子。鉄道用地と一般の土地を分ける柵もなく、道路が線路際の近い場所を通っている。列車の運転頻度もさることながら、このような環境で事故が起きないことに驚く。

 

 太平駅もまた相対式2面2線とこれまでの駅と同じ構造で、ホームも6両編成に対応した有効長をもっていた。だが、これまでの3駅は高架化によって駅が改築ないし新設されていて、ホームはもちろん駅の待合室などは新しくきれいで、JR北海道の直営ではなく業務委託になっているものの、駅員もいてみどりの窓口もあった。

 ところが、太平駅はホームもかなり質素な造りで、およそ都市近郊の駅というよりは、都市圏の大手私鉄支線の一駅という印象を筆者は抱いた。なにより、この駅は無人駅で、待合室もホームの端にこぢんまりとしたものがある程度だった。

 次の百合が原駅も相対式ホーム2面の駅で、同じく無人駅だ。ここまでもやはり速度はあまり出さず、のんびりとした感じで走っている。電車並みの走行性能を持つキハ201系気動車にとっては、かなり持て余し気味の運用だ。

 ここまで車窓を眺めていて、一つ不自然な点があることに気がついた。いや、筆者にとっては不自然と感じるだけなのかも知れない。それというのも、列車の走る軌道敷と道路を挟む場所に、明確な柵やフェンスといった境界を分けるものがあまりないのだ。ともすると、アパートや民家に隣接した場所に線路が走っていても、その間にフェンスはおろか簡単な柵すらなく、入ろうと思えば誰でも容易に軌道敷内に入ることができるのだ。

 これに気付いた時は、さすがに筆者も驚いた。もともと鉄道員であった筆者にとって、軌道敷内という場所は非常に危険が伴う場所という認識がある。当然、一般の人の立ち入りなど論外であり、必要な訓練を受けた鉄道員ですらやはり危険と隣り合わせの場所だ。当然、そうした場所には柵なりフェンスなりを設置するのが「当たり前」と思っていたのだが、札沼線の沿線にはこうしたものが設置されていない場所が多く見られた。

※この記事は、過去に筆者が運営していたwebサイト「鉄路探訪」に掲載した記事を、加除訂正の上こちらで再掲載しています。内容は2011年11月22日~23日に取材した当時のものです。

 

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