旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

存廃に揺れる北海道の駅 「思い」だけでは維持は難しい理由(3)

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〈前回からの続き〉

 

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 このような費用が補助金には組み入れられてないのであれば、経営が非常に厳しいJR北海道としては早期に駅を廃止し、コストを軽減させる必要性が生まれてくるのも当然でした。

 一方、代替となるスクールバスについては、高校生の帰宅ために1便増便し、日中については乗合タクシーを利用することを提案したようです。しかしながら住民からは、スクールバスでは時間が合わず、乗合タクシーでは不便で買い物に行くことが難しくなるということでした。さらに、「駅は列車が停車するから駅だ」というものまであり、駅を廃止にするにしてもなかなか難しいようでした。

 確かに、お買い物に行くために鉄道を利用していた人にとって、スクールバスが運行される時間では利用することは難しいでしょう。なにしろ、スクールバスは学校へ行く児童生徒のために運行されているのであって、学校の登下校に合わせた時間帯で運行されるのが通常なのです。

 乗合タクシーの場合は、利用したいときに利用者が申し込むことで運行されます。こちらなら、買い物に行く時間帯は自由に選べますが、その度にいちいち電話などで申し込まなければならず、手間がかかるという点では不便かも知れません。

 ここまで書いて、列車が停車する時刻が気になったのでもう一度時刻表を見てみることにしました。

○下り(稚内方面) 7時51分 11時49分 19時31分

○上り(旭川方面) 5時36分 10時44分 18時22分 20時31分

※いずれも2020年8月現在の時刻表

 時刻表を見ると、確かに高校生の通学に配慮したダイヤが組まれていることがわかります。例えば、稚内にある高校に通うとすれば、7時51分の列車に乗って登校し、部活などを終えて下校するのは18時22分の列車で帰ってくる、というパターンが想像できます。

 また、抜海駅から買い物で出かけるには、2つ隣の稚内へ出かけるのが現実的と考えられます。しかし、日中に抜海駅に停車する列車は11時49分だけで、これに乗って稚内へ行くと、帰りの列車がないことがわかります。つまり、抜海駅から稚内へ買い物で列車に乗るというのは現実的ではなく、行ったとしても帰りは夕方まで列車に乗れない、ということになります。

 反対に、旭川方面ではどうでしょうか。旭川方面で最も近い市街地は豊富駅と考えられます。ここに買い物に出かけるなら、10時44分発、豊富駅11時17分着の列車に乗ることが考えられますが、帰りは最も早い列車で豊富駅に12時00分に乗ることができます。とはいえ、43分しか時間がないので、かなりのスピードで買い物を済ませなければなりません。

 

f:id:norichika583:20200807153014j:plain(©Rsa / CC BY-SA (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/))

 

 いずれにしても、鉄道より自家用車の利用が多い北海道の土地柄を考えると、買い物は自家用車を利用する方が利便性が高く、移動の第一選択肢になることはほぼ間違いないといえます。

 では、反対をする住民の「思い」はどうでしょうか。

 おっしゃる通り、「列車が止まるから駅だ」というのは十二分に理解できます。町に鉄道が通っていても、そこに列車が停まるのは駅があるからです。100年以上もの間、駅に停まる列車は住民にも親しまれてきたことは容易に想像できます。

 確かにその「思い」は大切にしたいところです。

 しかし現実はそう簡単ではなく、特にJR北海道の経営状況を鑑みると、もはや待ったなしであることは誰しもが認めるところではないでしょうか。

 列車の運転には様々な費用がかかります。線路を維持するだけでも、固定費をはじめレールの交換や砕石(バラスト)の交換、さらにはタンパーなどによる突き固めが必要です。信号を構成する軌道回路には、非電化区間といえども電気を通さなければならず、駅のような施設があればそこに軌道回路を区切る設備も必要で、その分だけ電気を使います。

 車両は加速と減速に最も費用がかかり、車両にも負担がかかることから、消耗品も摩耗などしていくので、やはりコストがかかることは避けられません。

 このように、住民の「思い」だけでは鉄道の維持は非常に難しいといえるでしょう。ここでは早期に廃止にする方がいいとか、いや廃止せずに存続させるべきだとかいった結論を示すことはしまん。住民側に立てば「存続」という結論が、JR北海道の側に立てば「廃止」という結論に至るのが容易だからです。しかし、列車の運転には相応のコストがかかるということを考慮して、存廃を決めなければならないということは間違いなくいえることなのです。

 JR北海道ができることといえば、早期に運転コストを軽減できる軽量で高性能な、利用実態に合った車両の導入をすることや、住民が利用しやすいダイヤを編成するために、昔ながらの長距離普通列車を運転するのではなく、ある程度の生活圏ごとに運転系統を分割することが考えられます。

 また、住民側にできることといえば、仮にそうした努力をJR北海道が実現した時には、可能な限り鉄道を利用することだといえます。鉄道を利用しないで鉄道を残して欲しいというのは本末転倒ですし、残すのであれば利用することが前提と考えるべきでしょう。

 いずれにしても、住民と鉄道事業者の双方にとって最も「よい」と考えられる方法を模索しなければならないと考えられます。

〈了〉

 

 今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

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#JR北海道 #鉄道の存廃問題 #宗谷本線