旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

この1枚から わずか幅70cmの快適空間

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます

 今となっては遠い昔のことになってしまいましたが、国鉄時代は全国の主要幹線には夜行列車が数多く運転されていました。その中でも「ブルートレイン」と呼ばれる寝台特急は人気もあり、多くの長距離旅行客が利用していたようです。

 かくいう筆者も、幼少の頃はこの「ブルートレイン」に乗って、遠くへ旅をすることを夢見たもので、夕方に始発駅から青い車体の客車に乗り、食堂車で流れゆく車窓を眺めながら食事をし、ちょっとは狭いベッドに横になって車窓に揺られながら寝て、翌日には見知らぬ遠い地を走る車内で目が覚める・・・なんてことを想像したものです。

 大人になり、自由に旅ができるようになった頃には、残念ながら夜行列車は凋落してしまい、ダイヤ改正ごとに列車が廃止されていく有様でした。

 その夜行列車が既に終焉を迎えようとしていた頃、最も廉価だったB寝台はかつてのような三段式ではなく、二段式が主流になっていました。寝台幅も50cmという今では考えられないような狭いものから、20cmも広げられた70cmと多少ゆったりしたものが主役になっていました。

 

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オハネフ24車内 2004年11月(筆者撮影)

 

 もちろん、この幅で十分に睡眠がとれるかというとそうではなく、寝返りを打つのは「コツ」が必要なほど。その度に一度は目が覚めてしまうので、ぐっすりと寝るというのにはほど遠いものがありました。一般家庭のシングルベッドの幅が100cm程度あることを考えると、やはり狭いことは否めないでしょう。それでも、これだけの幅があるのは 「ゆとり」があるというもので、仰向けに寝ようが横に寝ようがある程度は自由がききました。

 写真は寝台特急北斗星」に連結されていた「Bコンパートメント」よ呼ばれる簡易個室B寝台のベッド。モケットも、国鉄時代の紺色から貼り替えられ、茶色系のモケットになっています。

 B寝台といえども寝具類は一式揃っていて、ベッドに敷くシーツと体に掛ける毛布、そおして小さいながらも枕が用意されていました。そして、寝るときに着る浴衣もあり、その模様は「JR」マークをあしらった専用のもの。かつて国鉄時代はこの模様が「工」となっていて、まさに「鉄道の浴衣じゃ!」といわんばかりに自己主張をしていたような浴衣でした。そして、上着を掛けるハンガーまで用意されていたのも、日本の鉄道ならではだったそうです。

 ところでこの寝台幅なので、もしかすると寝返りを打っていて落ちてしまいうのではないかと心配になります。下段には写真をご覧いただいてもわかるように、引出式のアルミパイプの柵が備わっていました。上段はこの柵の代わりに、天地方向に張られた日本のベルトがその役割を担っていました。とはいえ、上段に寝ると、下段以上に神経を遣ったので、熟睡はできなかったと今も思い出します。

 1990年代に入ると、こうした設備も陳腐化が否めず、利用客も低迷していってしまいました。プライバシー意識の高まりは、かつて盛況を呈した開放式寝台は敬遠され、よほど旅慣れた人でなければ利用しなかったようです。もっとも、同じ寝台幅でも個室B寝台はそれなりに需要があったようで、豪華列車と謳われた「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」などは、開放式寝台よりも個室寝台の比率が多く設定されていました。これもまた、時代の要請にあわせたことだったのでしょう。

 筆者もまた、この開放式二段B寝台には何度もお世話になりました。九州の門司から帰省するときには、ほとんどが夜行列車を選んで乗ったものです。もっとも、上り列車は門司駅を発車する頃には既に夜の帳が訪れていたので、車窓を眺めるという楽しみはありませんでしたが、夜行列車独特の「あの静かな雰囲気」を楽しんだものです。

 今となってはこの夜行列車独特の雰囲気を味わいことが叶わないのは、ある意味残念でなりません。

 

 今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

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#夜行列車 #24系客車 #国鉄 #寝台車