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2020年最後の投稿は、昨日のつづき「郵便物は令和の時代も鉄道で運ばれている」です。
〈前回からの続き〉
鉄道による郵便輸送の休止(実質には廃止)されたもう一つの背景には、国鉄が荷物輸送を廃止したことにもあるようです。手荷物や小荷物を輸送していた荷物列車は、その利用は減少の一途を辿っていました。ヤマト運輸による宅配便の台頭によって、それまで小さな荷物を送るためには、郵便局に持ち込んで小包郵便として送るか、荷物を取り扱う駅に持ち込んで小荷物として鉄道で送るかでした。
かつては鉄道でも荷物輸送が行われていた。荷物車や郵便車だけで組成された荷物列車はその主力で、郵便物を輸送する郵便車もこれに連結されていた。写真のEF58の次位には、オユ10が連結されているのが分かる。
出典:Wikimedia Commons ©spaceaero2, CC BY 3.0,
しかし近所の小売店などを取扱店とした宅配便は、駅や郵便局まで行かなくても荷物を送ることができ、しかも送り先の玄関まで運んでくれる便利さが受け、その需要は急激に減っていったのです。そのため、荷物列車は走らせれば走らせるほど経費がかかり収益がないという状態に陥り、ただでさえ人手も必要なことから国鉄にとって文字通り「お荷物」になっていったこともあり、分割民営化を見据えた合理化の嵐の中で廃止されたのでした。そのため、荷物列車に併結することで運用されていた郵便車もまた、国鉄の分割民営化の嵐に巻き込まれて廃止されていったという見方もできるでしょう。
しかし、すべての鉄道による郵便輸送が廃止されたのではありませんでした。
確かに郵便車による輸送は全廃になりましたが、1985年のダイヤ改正以後もコンテナによる締切便は残っていたのです。この時点では、なんとたったの14便だけが鉄道コンテナによる輸送として残ることになったのです。
その後、1987年の分割民営化によって、鉄道コンテナによる輸送はJR貨物が担うことになります。とはいえ、その後も大きく増えることなく推移していきましたが、近年はその状況が変わってきました。
その一つとして、国の施策であるモーダルシフトが挙げられるでしょう。トラック輸送を他の輸送手段へとシフトさせる政策によって、JR貨物もまたその需要を伸ばそうとしてきました。その中にあって、郵便物の輸送も僅かずつですが取扱い量は増加に転じていったようです。
例えば、武蔵野線の越谷貨物ターミナル駅の近隣に、新たな郵便局が設置されました。新越谷郵便局は、貨物駅近傍という立地を活かして、大量の冊子小包郵便物を引き受け、それらをコンテナへ積載して貨物列車で全国に発送する業務を担っています。また、輸送日数に比較的余裕のある通常便(定型内、定形外ともに)や、航空機で運ぶことのできない禁制品は、鉄道コンテナによって運ばれるようになりました。
特に近年は、トラックドライバーの慢性的な不足は郵便輸送も例外ではなく、それらを解決するための方法として、鉄道コンテナによる輸送も行われるようになりました。中には30ftコンテナに積載して運ばれるなど、一時は途絶えたかに見えた郵便物の鉄道輸送は少しずつですが形を変えて増えてきているようです。
郵便物輸送には、このような30ftコンテナも利用され始めているようだ。日本郵政のホームページにも、このコンテナで運ばれている光景が紹介されている。多くの郵便物を遠方へ輸送するには、今も鉄道が活躍している。
出典: Wikimedia Commons ©高頭 稔, CC BY-SA 4.0,
ところでこれは筆者の経験からの推測ですが、郵便局から年賀状は12月25日頃までに差し出すと元日に届くというアナウンスを見かけます。1月1日までずいぶんと長い日数があるなあと思われるかもしれません。これは、年賀状の差し出しで郵便物が極端に多くなることで、処理能力が通常では間に合わず、手作業によって行われることを加味して、比較的長い日数を確保しているためともいえます。同時に、年賀以外の通常の郵便物もあるため、それらは優先的に処理し輸送しなければなりません。
そこで、年賀状は引き受けた郵便局で手順通りに区分されますが、長距離の郵便物については、可能な限り鉄道コンテナに載せて運ぶため、ある程度の余裕をもたせているのでしょう。基本的には郵便物が郵便局内で滞留することは避けているようですが、さすがに年賀状が一度に大量に差し出されると、処理能力を超えてしまいます。今では基本的に機械による区分作業ですが、機械でも捌ききれないと伝統的な人力による区分作業で捌くほかありません。ですから、中には1日程度は局内に滞留することもあるかも知れず、そうしてコンテナに載せられた後は1日程度の時間をかけて、相手先の郵便局近くの貨物駅まで列車で運ばれているのかもしれません。
いずれにしても、鉄道による郵便輸送は1985年にほぼ全廃されましたが、細々と続けられてきたコンテナによる締切便輸送は、今日は様々な環境の変化によって大きな役割を担っているといえるでしょう。
もしかすると、今年差し出した年賀状は、コンテナに載って運ばれているかも知れません。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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