旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

この1枚から 最後まで残った前期形のPF・EF65 1037【1】

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 EF65 1000番代PF形は、今となっては貴重になりつつある国鉄形電機です。”国宝”とまでいわれるようになったEF66 27号機に比べれば、まだまだ現役で走り続けている車両も多いのでその域とはいきませんが、それでも、JR貨物は年に数量ずつとはいえ、EF210を新製してじわじわとその数を増やしているので、ここ数年のうちにはさらに数を減らしていき、いずれは淘汰されていくのは間違いないでしょう。

 今日、現役で残っているのは、1976年以降に製造された後期形と呼ばれるものです。1965年に製造が始められたEF65は、貨物列車用の0番代、寝台特急用とされた500番代P形、さらにEF66の量産までの繋ぎとして特急貨物列車用とされた500番代F形が次々につくられました。

 そして、それらの使用実績を踏まえて、さらに客車列車、貨物列車ともに広汎に使うことができる万能機として、1968年からは1000番代PF形に製造が移行し、その後1979年までに139両がつくられました。

 そのPF形も大きく分けて前期形と後期形に分けられるでしょう。1968年から製造が始められたPF形は、集電装置はPS17を装備し、前面窓下には通風孔が設けられていることが外観上の大きな特徴でした。この2つの特徴は、PF形の製造時期を特定する大きな手がかりとして知る人も多いことと思います。

 メカニズムの麺では、0番代と500番代ではCS25抵抗バーニア制御器を装備していました。しかし、このCS25は製造コストの軽減を狙ったためか、電動カム軸を作動させるモーター制御とバーニア制御の回路を共用させたことに起因するトラブルがついて回りました。そのため、幾度も改良が重ねられ、現場の検修陣の努力もありそれを克服して運用されていましたが、根本的な解決には至っていませんでした。

 そこで、PF形ではCS25の装備をやめて、新たに設計されたCS29抵抗バーニア制御器が装備されました。CS29は、CS25の欠点だった電動カム軸動作用モーター制御と、バーニア制御の回路を分離させたことで、ようやく安定した性能を発揮することが可能になったのです。

 言い換えれば、PF形は0番代や500番代で顕在化した不具合や、運用上の課題を解決し、より安定した性能で運用しやすい万能機として進化したものといえるでしょう。それ故に、国鉄が生み出した前代未聞のハイパワーと高速性能に特化したEF66が、運用上、長距離高速運転が常態化していたことを差し引いても、PF形に先んじて廃車となっていくのを横目に、今なおある程度まとまった数が現役であることはその証左と言えるでしょう。

 さて、そのPF形でも前期形に分けられる車両は、JR貨物で機関士養成用の教材機として使われた後、動態保存機として残されている1001号機を除いて、今日ではすべて廃車されてしまいました。

 1968年から製造され、前期形の最終製造が1971年であることを考えれば、既に50年以上が経っているので仕方がありません。しかし、その前期形も、つい最近までは活躍が続いていたのでした。

 

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 今回ご紹介するのは1037号機です。

 塗装こそ、貨物更新色を身にまとっていますが、前面窓下には運転台に外気を取り入れる通風孔のスリットがあり、後部標識灯は内バメ式、そして集電装置はオーソドックスなひし形であるPS17を装着しています。

 1037号機は昭和44年度第4次債務の1両として、1969年に川崎重工富士電機のコンビによって落成しました。呉線・高島線電化と特急客車列車の増発、東北本線高崎線の貨物列車増発などの名目で製造されましたが、何よりも驚くのは、この頃の国鉄はその予算区分が示すように、債務、すなわち借金に次ぐ借金をしてまでも機関車をつくっていたということです。まあ、この頃は電化工事も次々に進められていた時期で、しかも動力近代化計画によって蒸気機関車から電機やディーゼル機に置換えが進められていたので、どうしても借金をしてまでも機関車をつくる必要があったのかもしれません。

 新製配置は宇都宮運転所で、製造の目的に沿って東北本線の貨物列車を中心に活躍を始めます。これは、それまで東北・北海道方面の貨物列車に充てられていた500番代F形からその任を引き継いだことによるものです。同時に、上越線の貨物列車も500番代F形が担っていましたが、1037号機とともに宇都宮所に配置された1000番代PF形に置き換えられました。

 

《次回へつづく》

 

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