旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

見た目ではブルトレ牽引機 最強電機登場までのリリーフだったF形【2】

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《前回からのつづき》

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 1965年に登場したEF65は、牽引力をもたせながら連続高速運転にも耐えられる性能をもった客貨両用の万能機でした。当然、国鉄寝台特急の牽引にはEF65を充てることを目論み、20系客車を引くために必要な特殊装備をもったEF65 500番代を製造しました。

 0番代に僅かに遅れて登場した500番代は、新製されるとさっそく東京機関区に配置され、計画通りに寝台特急の先頭に立つという、機関車にとって花形といえる仕業に就いたのでした。

 EF65は客貨両用に使える万能機としての性能をもっていましたが、本来はEF60が担っていた平坦線区での貨物列車の高速化を実現させつつ、老朽化した旧型電機を置き換えることを目的に製造された電機でした。

 1960年代も後半に入ると、モータリゼーションの進展によって、それまで貨物輸送の主役ともいえた鉄道から、利便性に優れ小回りのきく自動車へと移転が進んでいました。それまでは黙っていても、荷主は鉄道を利用してくれていたのが、自動車という新たな選択肢が生まれたことで荷主が離れていったのです。

 年々輸送量が減り、鉄道貨物輸送の収益が目減りしていく事態に、国鉄はただ指を咥えて見ているだけにはいきませんでした。少しでも荷主を引き止めて収益を確保するとともに、できれば離れていった荷主を取り戻し、新たな顧客を開拓しなければなりません。そのためには、旧来からある貨物の輸送方式から大きく転換する必要がありました。

 このブログで何度もお話してきましたが、旧来からの鉄道貨物輸送は貨車1両ごとに貸し切る車扱輸送が中心でした。荷主が国鉄に輸送を申し込むと、貨物取扱駅に輸送する貨物に適した空車の貨車が配車され、荷主は通運事業車に委託して発送する貨物を貨車に載せます。

 貨物を積んだ貨車は、発駅となる貨物取扱駅で増解結列車と呼ばれる、貨物取扱駅で空車の貨車を開放したり、積車となった貨車を連結したりする列車に連結されて目的地に向けて出発します。この増解結列車に連結した貨車は、最寄りの操車場へ運ばれていきます。操車場に到着すると、貨車は増解結列車から開放され、操車場内で着駅の方面へ向かう列車に組成されていきます。そして、組成が終わると、今度は次の操車場へ向かっていき、これを何度か繰り返すことで着駅となる貨物取扱駅に到着するのです。貨車1両単位での車扱輸送なので、こうした時間と手間と、そしてコストのかかる方法は避けて通れず、国鉄としてはいかんともしがたいものがある反面、荷主にとっては発送した貨物が送り先にいつ到着するのか分からず、ともすると数日もかかってしまうこともあったようです。こうなると、必要なときに玄関先まで来てくれて、送り先に到着する時間もはっきりと分かり、荷受人は駅まで行かずとも玄関先まで配送してくれるトラックに流れるのは必然だったといえるでしょう。

 そこで国鉄は、列車の運転速度の大幅な向上による速達性の確保と、旧来からのいくつもの操車場を経由する「ヤード継走」ではなく、発駅から着駅まで1本の列車で通して運転する方法を導入することで、貨物の到達時間を大幅に短縮することにしたのです。

 

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1965年から運転が始められた特急貨物列車は、最高速度100km/hというそれまでにない高速運転によって到達時間を大幅に短縮することを目指した。しかし、重量の思い貨物列車を高速で牽くには、強力な機関車が必要で、EF66は強大な牽引力と高速性能を実現させるために開発されていたが、その就役は1969年になるまで待たねばならず、特急貨物列車の運転開始までには間に合わなかった。(EF66 36[吹] 2013年11月11日 新鶴見機関区 筆者撮影)

 

 1965年に10000系高速化車の第一陣として、ワキ10000が製造され営業運転に就きました。次いでコンテナ車のコキ10000、鮮魚輸送に用いる冷蔵車のレサ10000が登場し、特急貨物列車の運転が始められました。これらの貨車で組成された特急貨物列車は、最高速度100km/hと従来の貨物列車よりも25km/hも早くなりましたが、軽量な客車列車であれば万能機であるEF65なら単機で牽くことができましたが、重量がかさんだ貨物列車ではEF65単機では太刀打ちできませんでした。

 そこで、EF65よりもさらに強力な機関車を開発してこれに充てることが計画されましたが、その完成までにはまだ時間が必要でした。しかし、後にEF66の形式を与えられる強力機の完成までは待つこともなく、10000系高速化車で組成された特急貨物列車の運転は始められていたので、そのつなぎの役を担うことができる機関車が必要だったのです。

 そこで国鉄は手持ちの電機の中から、高速性能に優れ、かつ重量のある貨物列車を牽くことができる性能をもつEF65を、高速貨物列車の先頭に立たせることにしたのです。

 

《次回へつづく》

 

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