旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

唯一無二 新機軸盛り込み過ぎて失敗作に終わったDD20【2】

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《前回のつづきから》

 

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 国鉄初の制式ディーゼルエンジンであるDMH17は、出力180PSと非力ながらも、それなりに使うことができました。このDMH17を2基搭載して開発されたのがDD11でした。さらに戦後、進駐してきた米軍が持ち込んだ電気式ディーゼル機であるDD12も加わり、動力車の無煙化が始まりました。とはいえ、DD11はエンジンに由来する非力さ、DD12はアメリカ陸軍が日本の占領政策のために発注したアメリカ製の電気式ディーゼル機で、どちらも量産には至らない少数機でした。

 気動車用のDMH17を改良し、機関車用として大排気量・大出力機関として開発したDMF31が実用化すると、これを2基搭載したDD13が1968年に製造が軌道に乗ると、ようやく国産の量産型ディーゼル機が登場したのです。

 しかし、DD13の量産で国鉄は満足しませんでした。確かに、DMH17に比べてDMF31は出力も大幅に向上して1基で370PSを出すことができました。これを2基搭載したDD13は、機関車出力も740PSとなりDD11やDD12の300PSと比べれば協力になったものの、本線で長大な貨物列車を牽いたり、大規模操車場で重入換運用に就かせるには満足のいくものではありませんでした。

 

国鉄が長年の研究開発の末、ようやく実用可能な量産ディーゼル機として登場したのがDD13であった。DML31を2基搭載し、初期形では機関車出力も740PSとなったことで、入換運用からローカル線での小運転までこなすことができた。後期形では出力を強化し、機関車出力も1,000PSにまで強化したことで、より実用性が高まった。しかし、冬季の客車牽引で必須であった暖房用の蒸気発生装置がないことや、軸重が重いために簡易線などに入線できないこと、大規模操車場では牽引力や制動力の不足が指摘されたことで、無鉛化推進の決定版になるには至らなかった。しかし、それでも国鉄無煙化の推進のためにDD13を増備したものの、DD13の欠点を克服したDE10が量産されると二線級のディーゼル機となってしまい、国鉄分割民営化までには新幹線用の912形に改造されたもの以外は、1両も継承されなかった。1986年頃、新鶴見機関区の一般公開では数多くの「スター」である機関車が展示されたが、その片隅には廃車前提の休車となっていた2両のDD13が留置され、解体の日を待つかのように無言で佇んでいた。しかし、このDD13 346は解体を免れて、後に京葉臨海鉄道へと移っていきKD55 103として活躍した。(DD13 346[新] 新鶴見機関区 1986年頃 筆者撮影)

 

 非電化の地方幹線での運用には、さらなる強力な機関車が必要でした。

 とはいえ、これに適するエンジンを国鉄は持っていませんでした。

 そこで、DD13などに搭載されているDMF31を更に改良したDML61を開発しました。DML61はV形12気筒4サイクルディーゼルエンジンで、排気量61リットルとDMF31のほぼ2倍という大排気量エンジンになりました。そのため、シリンダーの数も2倍になり大型化しています。通常、エンジンの性能=出力を上げる場合、単純にはシリンダーの数を変え、排気量を増やすのが一般的です。DMF31は直列6気筒というエンジン構成でしたが、これを単純に強化するのであれば、DMF31のシリンダーを倍に拡張して、直列12気筒にすればよいのです。しかし、この方法ではエンジン自体の大型化を避けることができず、機関車に載せるのには大き過ぎなものになってしまいます。そこで、可能な限りコンパクトに収めながら、強力なエンジンとするためにV形エンジンが選択されたのでした。こうした方法は自動車でもよく見られ、大排気量の自動車ほどV形エンジンが選択されているのです。

 このように、当時の国鉄がもつ技術を投じてできたDML61Sは、排気過給器(ターボチャージャー)と中間冷却器(インタークーラー)を装着したこともあり、単体での出力が1,000PSにまで増強され、国鉄が欲していた強力なディーゼルエンジンが完成したのです。

 DML61Sはまず最初に、本線用ディーゼル機であるDD51に搭載されました。この強力な大排気量エンジンを2基搭載したDD51は、機関車出力が2,000PSに、後の改良型であるDML61Zを搭載した改良型のDD51は2,200PSを出すことができ、本格的な本線用ディーゼル機を量産していったのです。

 とはいえ、DD51はエンジンや液体変速機以外は、基本的にはDD13の設計を踏襲していました。特に顕著なのが台車で、DD13の改良強化型である111号機以降で装着されたDT113を、DD51も改良を加えて装着していました。また、車体形状も運転台のあるキャブ部を中央に、それを挟み込むようにエンジンや冷却機構などを収めた機器室のあるボンネットを配置する構造も、DD51には踏襲されました。

 

《次回へつづく》

 

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