旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

学校の児童生徒だけが乗る「専用列車」 思い出とともに走った修学旅行用電車たち【終章】

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《前回からのつづき》

 

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国鉄形淘汰のあとを継いだE257系

 2020年をもって集約臨から185系が退くと、その後継として特急「踊り子」と同じく、E257系が就くことになりました。

 E257系は2001年から中央東線の特急「あずさ」「かいじ」用として製造された特急形電車です。また、房総各線の特急用としてE257系500番代も増備されました。

 「あずさ」には、1993年から製造された振り子装置を装備したE351系が運用に充てられていました。当初は183・189系とともに中央東線の都市間輸送を支えていましたが、183・189系の老朽化が進むと、E257系の新製増備によって置き換えられました。

 E351系が製造から30年近くになることや、長距離高速走行が祟って老朽化が進んだこと、特殊な振り子装置の保守管理に手間やコストがかかることなどから、E353系を新たに製造して置き換えることになりました。

 それまでE351系とE257系という異なる構造の車両を運用してきましたが、運用管理の手間とコストがかかることから、中央東線の特急列車はすべてE353系に統一し、共通運用を組むことを可能にすることで、運用コストの軽減を図りました。

 また、房総特急も183・189系によって運行されてきましたが、こちらも老朽化を理由にE257系500番代の新製増備で置き換えられていきます。しかし、房総半島の道路事情が大きく改善したことで利用者が減り、特急の再編とともに大幅な減便と廃止がされ、E257系500番代も余剰となっていきました。

 

185系の老朽化による廃車が始まると、波動輸送用として残った車両を残して姿を消していった。その代わりに集約臨に充てられたのが、運用の減少で遊休化していたE257系だった。特に房総特急の削減で、E257系500番代は余剰と化しており、その処遇が課題となっていた。中央本線の「あずさ」「かいじ」E353系に統一され、その玉突きで0番代、500番代共々更新工事を受けて東海道本線の「踊り子」へ充て、185系を置き換えることになった。同時に波動輸送用の185系もE257系が充てられることになり、それぞれ更新工事を受けて5000番代、5500番代となったので、この姿の集約臨は短期間しか見られなかった。(クハE257-511・マリNB-11編成【千マリ】 久地-宿河原 2021年6月28日 筆者撮影)

 

 E257系は2001年から、500番代は2004年から製造された車両なので、2010年代後半の時点でも車齢は20年に達していません。これらの車両が余剰化したからといって廃車とするのは、税制上も経営上も得策ではありません。そんなことをすれば、多額の費用をかけたにもかかわらず、なぜ廃車にしてしまったのかと株主から問われかねません。

 もちろん、そうしたことをJR東日本がするはずもなく、余剰化したE257系を活用する策を講じました。それが、最後の国鉄形特急用車両である185系の置き換えと淘汰でした。

 余剰化したE257系は、大幅なリニューアル工事を施されて、2000番代、2500番代として再度登場します。そして、特急「踊り子」の運用を185系から引き継ぎ、東京−伊豆方面を結ぶ「顔」として活躍をはじめました。

 一方、JR東日本は波動輸送用の185系もE257系で置き換えることにしました。編成中にサロハが組み込まれた5000番代と、普通車のみで組成された5両編成は5500番代に区分され、集約臨は5500番代での運転が始められました。

 

E257系の多くは大宮に配置転換されるが、「踊り子」用として2000番代、2500番代に更新改造を受けた。また、波動輸送用に5000番代、5500番代が更新改造を受け、集約林にも充てられるようになる。(©Sakurayama 7, CC BY-SA 4.0 出典:ウィキメディア・コモンズ)

 

 残念ながら筆者はこの5500番代で運行される集約臨に乗ったことはありませんが、E257系は乗降用扉が185系と同じ1000mmの幅があるものの、1両につき1箇所しかないため、児童の乗降には相当な時間がかかると考えています。そのため、引率する教職員は相当な神経を使い、児童もまた乗降に苦労してしまうことは容易に想像できるのです。しかし、種車が特急用であったことと、乗降用扉を増設すると工事費がかさむばかりか、乗車定員も減ることからあまり現実的ではありません。やはり、このあたりは相当な工夫が求められるのではないでしょうか。

 いずれにしても、当分の間はE257系5500番代が集約臨の運用に充てられることになりそうなので、いつかは筆者も乗ることにはなりそうです。

 

■最後に・・・「修学旅行」とは

 歴代の修学旅行用車両、特に後半は関東地区でいまなお続く集約臨の車両について概観してきました。

 ところで、「修学旅行」とは学校の教育活動ではどのような位置づけになっているのか、簡単にお話したいと思います。

 そもそも学校での教育活動は、文部科学省が告示している「学習指導要領」に沿って行われています。これは一種の法令であり、ここから逸脱することは許されません。「修学旅行」はこの中の「特別活動」という領域に示されている「宿泊を伴う学習活動」として定義されている「学校行事」なので、カリキュラム上に位置づけられている教育活動です。言い換えれば、学校ごとに好き勝手に設定できるイベントではなく(そもそも、そのようなイベントを学校で設定することはできませんが)、授業と同じ活動のひとつなのです。

 子どもたちにとってとても楽しみな活動の一つなので、多くの人も思い出に残っていることと思います。もちろん、これから修学旅行に出かける子どもたちにも、「一生の思い出」に残る旅になってほしいと筆者は願っています。ですから、元鉄道職員としては車内でワイワイするのはもちろん、ちょっと車窓に目を向けて移り行く景色を楽しみ、そして「どこを通ったのか」など、ちょっとした疑問ももってもらえればと思います。

 もっとも、実際に引率する立場になると、「夜も寝ずに番をする」こともあり、少々寝不足になりますが・・・、勤務としてカウントされていないことを除けば、大人もやはり思い出に残るものです。

 

 今回はかなりの長文になってしまいましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

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