《前回からのつづき》
DE50形はエンジンと変速機を2組搭載したDD51形に匹敵する本線用大出力ディーゼル機として、1970年に製作されました。
車体はDE10形と同様のセミセンターキャブ構造をもち、1位側にDMP82形エンジンを搭載、2位側には大型の冷却用ラジエターを搭載していました。1基だけで2000PSという大出力を絞り出すDMP82形エンジンは、その分だけ発熱量も大きくなってしまいます。通常、国鉄ディーゼル機はエンジンが搭載されたボンネット内にラジエターと冷却ファンを装備していました。しかし、この構造ではDMP82形が発する大量の熱を冷却することが難しくなることから、キャブ部を隔てて反対側に長さ3mを超える巨大なラジエターを搭載し、2位側ボンネット上部には冷却用ファンも2基装備するという特異なものでした。
本線用ディーゼル機として開発されたDE50形は、キャブ部の運転台もDD51形に準じたものでした。多くの国鉄ディーゼル機は入換作業にも使うことができるように、運転台はレール方向に設置され、機関士は車内の内側を向くように座ります。これは、入換作業では前進と後退を繰り返すため、いちいち運転台を変えることなく、機関士は進行方向に首を振り向けるだけで操縦ができるように考えられた設計です。
他方、本線で長距離にわたって運転する場合、この構造では長時間にわたって機関士は横を向いたままになるため、頸部を中心に体への負担が大きくなります。DD51形など本線での運用を前提としたディーゼル機は、電機などと同じように進行方向に体の正面を向けるため、機関士の負担も少なく操縦もしやすくしています。DE50形は本線用として設計されたため、DD51形と同じ構造の運転台が設置されました。

DD51形に搭載されて成功したDML61系エンジンは、1000PS以上という高出力という性能もあって、これ以後に開発される国鉄ディーゼル機の標準エンジンといっても過言ではない地位を確立した。支線区や入換作業にも使える万能機DE10形や、軸重制限が厳しい簡易線用のDD16形などは、1エンジン車であるため検修作業もエンジン1基分で済ますことができた。一方、本線用機であるDD51形は2エンジン車のため、検修作業はDE10形などの2倍の手間とコストが必要になった。そこで、DML61系2基分の出力をもつエンジンを1基搭載し、DD51形と同等の性能をもつ本線用ディーゼル機の開発が企図された。(©HATARA KEI, CC BY-SA 3.0, 出典:Wikimedia Commons)
しかし、DE50形のキャブ部はDD51形はもちろん、DE10形と比べて小ぶりなのがわかります。DD51形のキャブ部を短くしたような、寸詰まりの印象を受けるものです。これは、DD51形は冬季の客車列車の運用時に欠かすことのできない、暖房用の蒸気発生装置(SG)をキャブ部に設置するため、このスペースを確保するため広い面積を必要としました。そのため、キャブ部の全長が長くなり、大きなものになっていました。また、DE10形はレール方向に運転台を設置したため、この分の長さが必要になりました。こうしたことから、DE10形のキャブ部もDD51形ほどではないにせよ、それなりの長さをもっていました。
DE50形は本線用として最適な枕木方向に運転台を設置し、主に貨物列車を牽くことを前提としたため、蒸気発生装置を装備していませんでした。こうしたことから、キャブ部の全長はDD51形と比べて大幅に短くなり、本専用としての構造であることも手伝って、寸詰りな印象をうける外観になったといえます。
このような構造の車体であるため、側面から見るとDE10形のボンネットを長くしたようになり、前面から見るとDD51形とほぼ同じデザインになったのでした。
DE50形は形式名が示すように、動輪軸が5個あるE級機で、軸配置はAAA-Bとされました。1位側は一見すると3軸台車にも見えますが、動輪軸は横圧などで線路や台車に負担を与えないよう、それぞれをリンクせ接続することで、曲線を通過するときに動輪軸が横方向に動くことができるDE10形が装着しているDT132形を発展させたDT141形を装着しました。また、後位側にはDE10形と同じ、二軸ボギー式台車のDT131形を装着しました。この台車の軸配置により、本線用大型ディーゼル機でありながら、軸重は14トンに抑えることができ、DE10形と同じくいわゆる乙線規格の線区にも入線を可能とし、当初の計画通りに亜幹線における輸送力増強を可能にしたのです。
ブレーキ装置は通常の自動空気ブレーキのほかに、大出力エンジンに対応した液体変速機に流体継手を内蔵したことで、ハイドロダイナミックブレーキ(リターダ)を装備し、強力な制動力をもたせました。このハイドロダイナミックブレーキを装備したことで、強力な制動力を得ることができた一方で、発熱量もさらに増えることになり、巨大な冷却装置が必要になったため、2位側ボンネットは冷却系を集中して搭載する得意な機器配置になったのでした。
《次回へつづく》
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