旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形【2】

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《前回からのつづき》

 

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 ロータリー式と呼ばれる除雪方法は、一度かき寄せた雪を取り込んで、回転する羽を使って雪を遠方へと飛ばす方法です。蒸機時代はキ600形やキ620形がこのロータリー式除雪装置を備えた唯一の車両でした。しかし、その動力源は機関車と同じ蒸気であるため、事業用貨車でありながらボイラーと蒸気機関が備えられ、燃料と水を供給するために炭水車を従えるという、まるで蒸機のような構成でした。もちろん、蒸気機関は羽根車を回転させるための動力なので、自走することはできませんでしたが、これを使うためにはボイラー技士の免許をもった職員と、石炭をボイラーに投入するための職員が乗務しなければならなかったのです。

 また、キ600形やキ620形は純然なるロータリー式雪かき車であるため、線路際につくられた雪の壁を取り崩す機能はもっていませんでした。そのため、高く積み上がった雪をかき寄せるマックレー式除雪装置を備えたキ800形やキ900形も必要でした。このマックレー式雪かき車にも機器を操作するための職員が乗務するので、やはり人員を割く必要がありました。

 そして、これらロータリー式雪かき車もマックレー式雪かき車も、自力では走行できないので、機関車による牽引または推進が必要になるため、それぞれに車両と乗務員を手配しなければならなかったのです。すなわち、キ800形+蒸機と蒸機+キ600形といった、いわゆる「キマロキ編成」と呼ばれる強力な除雪列車は、雪かき車に乗務する保線区職員と、蒸機に乗務する機関士と機関助士の手配を欠かすことができなかったのです。

 もちろん、人員と手間、そして車両の手配とその運用にかかる燃料費などのコストも高くつきますが、当時は強力な除雪列車として頼もしい存在であったことは間違いなかったといえるでしょう。

 ディーゼル機関車の実用化と量産は、この手間もコストも掛かる除雪列車の運行に大きな変革をもたらしました。国鉄初の量産ディーゼル機であるDD13形は、その派生型として除雪用ディーゼル機であるDD14形とDD15形を生み出しました。ラッセル式のDD15形はキ100形が担っていた役割を代わるようになり、冬季はラッセルヘッドを取り付けて除雪用として、夏季はそれを取り外してDD13形と共通の運用に就くことができるようにしました。それまでキ100形と蒸機の2両必要だったので、ディーゼル機1両で済むので、大幅なコストダウンと効率化を実現させました。

 豪雪地帯で欠かすことのできなかった「キマロキ編成」も、ディーゼル機に置き換えられるようになります。DD14形は独特のエンドキャブ、それもエンジンフードは欧米のディーゼル機並に背高の車体に、ディーゼルエンジンを動力源にした強力なロータリーヘッドはキ600形と同等以上の除雪能力を持ち、その前方に設けられたかき寄せ板はキ800形の役割をこなすという、それまで4両も必要だったものをDD14形はたった1両でそれをこなすものとして設計されました。

 

キマロキ編成」をディーゼル機1両で代替できると期待されたロータリー式除雪装置を備えたDD14形だったが、本州日本海沿岸特有の湿り気を帯びた雪には太刀打ちできないことが相次いだ。その要因として、DD14形が搭載したDMF31系エンジンの非力さによるもので、エンジン1基を除雪用に、もう1基を走行用に使用した場合、除雪が困難になった。そのため、写真のようにDD14形を背中合わせに組んだ「背向重連」と呼ばれる方法が採られたが、常に2両のDD14形を運用することは経済的に不利であった。(©Mitsuki-2368, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons)

 

 当然、このような能力をもつDD14形は、豪雪地帯で毎年のように除雪に悩む国鉄関係者の期待は大きかったといえます。そして、1960年から製造が始められたDD14形は、豪雪地帯に優先的に配置されていきました。

 1962年に新潟地区に配置されたDD14形は、除雪能力を試す実用試験に充てられました。というのも、除雪能力を実際の運用で試す機会は冬季に限られます。1960年から製造が始められたとしても、まだ2シーズンだけしかその機会がありませんでした。加えて、1962年当時の機関車配置表を見ると、DD14形はまず北海道から優先的に配置されたようで、1号機は札幌局の苗穂機関区に、2号機は旭川局の名寄機関区に配置されています。そして、本州の豪雪地帯の一つである新潟機関区に3号機が配置されているのがわかります。このことから、新潟地区にとってDD14形の新潟区配置は、まさに待望のものだったと考えられます。

 

《次回へつづく》

 

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