《前回からのつづき》
1986年に製造されたキハ54形は、JR北海道とJR四国にとって貴重な戦力として走り続けています。新製以来、すでに39年という長い年月が経っていますが、軽量ステンレス車体は冬季の厳しい気候や、海沿いを走るがゆえに避けて通れない塩害にも強く、なにより国鉄の設計はほかの国鉄形と同様に、頑強なつくりが長期にわたる運用にも耐えているといえます。
また、分割民営化に際して「三島会社」と呼ばれ、輸送量も少なく収益も期待できないローカル線を多く抱えるJR北海道とJR四国は、「本州三社」のように車両が老朽化したからといって簡単に新型車への置き換えができる経営環境にはないため、古くても使い続けざるを得ないということも、キハ54形が長寿化しているといえます。加えて、国鉄から継承した普通鋼製のキハ40系が多数残っている中では、キハ54形の置き換えは当分先のことと考えられます。
真冬の北海道は本州以南に住む者にとって、想像を遙かに超える厳しい気象条件である。気温は極端に低く、雪も降り積もる中を北の気動車は走り続けてきた。キハ54形の前面にこびりついた雪がそれを物語っている。こうした厳しい気象条件に耐えうる装備を、北海道の車両には求められるのだ。(©Kc3302, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)
しかしながら、経営基盤が脆弱て、民営化後も苦しい経営が続くであろうと予測し、新会社の負担が少しでも軽くなればと、破綻した財政事情を抱えていたにも関わらず、廃車となった車両から使えそうな機器を流用してコストを抑えつつ、新しい車両を「置き土産」として持たせたあたりは、どんなに苦しくても我が子のためと小遣いなどを持たせる親心にも通じると感じるところです。
そして、その国鉄の「親心」は見事に通じ、JR北海道とJR四国はこのキハ54形を今なお活用し続けています。近年、「単独では維持困難」というフレーズで、両社は想像を超える厳しい状態に置かれていることを訴え、一部では路線の廃止、他のモードへの転換を模索しつつあります。そうした中で、キハ54形はいずれ「老朽車両」として後継車両への置き換えとともに廃車の運命をたどることは想像に難くないところですが、少しでも長く走り続け、地域の人々の貴重な足としての活躍を願うばかりです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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