《前回からのつづき》
1987年になると、今度は大井町線からも退いていきました。1986年から東急初のVVVFインバータ制御車である9000系が増備され、さらに1988年には将来のみなとみらい線直通を見据えて新たに製造されたデハ8590形とデハ8690形を8090系に組み込む編成替えがされ東横線に配置されると、これに押し出された8000系と8090系の一部が大井町線に転出してきました。その一方で、戦前から走り続けてきた旧型車である3000系(デハ3450形など)の老朽化が激しくなったことから、これを置き換える目的も兼ねて大井町線から目蒲線と池上線に転用されたのでした。
この際に、電動車が不足することから、クハ7500形の一部に最新のVVVFインバータ制御装置を搭載し、かご形三相誘導電動機のTKM-85形を装備して電動車化した7600系に改造されました。車体は7200系のままでありながら、電装品や駆動装置は最新のものという、これまた異色の車両が登場したのでした。
そして、7000系を最新の電装品に換装した7700系の転入と、1000N’系が奥沢検車区に新製配置されると、今度は目蒲線からも転出していくことになります。これは、7700系と1000N’系が4両編成を組んでいたためで、これらの車両の配置により目蒲線は4両編成化され、3両編成の7200系と7600系は池上線に転出しました。
しかし、今度は4両編成の1000N’系を3両編成化の上で池上線への転出が決まり、池上線の7200系は4両編成に組み替えられて再び目蒲線に戻ってきました。1995年には目蒲線でともに活躍してきた7700系を3両編成に組み換え池上線に転出させることになり、入れ替わりで池上線に配置されていた7200系を4両編成にした上で目蒲線に転入させることになります。こうして、残っていた7200系は全て4両編成となって、目蒲線に集中配置することになったのです。
2000年に7200系は、東急での役目を終えることになります。この年に、東横線の複々線化工事が一部完成し、同時に目蒲線の運転系統を目黒−多摩川園間と多摩川園−蒲田間で分離し、前者は目黒線として目黒−武蔵小杉間で、後者は多摩川線として運行することになりました。このときに、目蒲線の車両が配置されていた雪が谷大塚検車区奥沢班(旧奥沢検車区)が廃止になり、目黒線の車両を留置する元住吉検車区奥沢車庫となりました。配置されていた車両はすべて雪が谷大塚検車区に配転となり、同時に池上線と共通運用が組まれるようになります。そのため、それまで4両編成を組んでいたのを、1000N’系と7700系は3両編成に組み替えられて、系統分離後も運用が続けられましたが、抵抗制御である7200系はついにVVVF車の波に抗うことができず、すべての運用を失うことになりました。そしてこの年の11月に「さよなら運転」をもって運用を離脱、1966年から34年にわたる東急線での歴史に終止符を打ったのでした。
独特の前面形状である「ダイヤモンドカット」を東急線上で最後まで残したのは、7200系を改造した7600系7601Fだった。もともと7200系の編成組み替えのときに、制御車であるクハ7500形が余剰となったことで、これを電動車化するとともに最新の制御装置であるVVVFインバータ制御として登場したのが7600系だった。しかし、大井町線から目蒲線・池上線への転用時に3両編成化、さらには機器の改造や交換、台車の交換などその経歴は複雑なものだったといえる。7200系が地方私鉄に譲渡され、第二の職場を得て走り続けたのとは対称的に7600系は他社への譲渡はなく、7601Fが2015年3月に廃車されて廃系列になった。(7600系7601F 旗の台駅 2010年8月12日 筆者撮影)
もっとも、抵抗制御車である7200系は東急線から姿を消したものの、VVVF制御車に改造された7600系は残されました。特徴的な「ダイヤモンドカット」の前面形状をもった車両は、今しばらく生きながらえることができたのでした。
腐食に強いオールステンレス車である7200系が、東急線での役割を終えたとはいえ、たったの34年ですべてスクラップにされることはありませんでした。そもそも、軽量化を極端に追求した結果、必要最低限の強度しかもたない近年のステンレス車とは異なり、1960年代から1980年代に設計・製造されたステンレス車は、多少重量はかさんでいるものの優れた強度をもつ車両が多く、7200系もその時代の車両であることには変わりません。
同時期につくられた7000系とその改造車である7700系は、製造からすでに半世紀以上が経った今日も、多くが活躍を続けていることを考えると、7200系も同じくまだまだ使えることは間違いないでしょう。
東急線での活躍を終えた7200系もまた、多くが地方私鉄に譲渡されました。大都市圏とは異なり輸送量の少ない地方私鉄では、18m級の中型車は非常に魅力のある車両で、特に雨水などによる腐食に強く、強度も高いステンレス車は運用面でも保守面でも格好の存在だといえます。
《次回へつづく》
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