旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産~新会社に遺していった最後の国鉄形~ 私鉄車両に迫ったアルミ車体とチョッパ制御車・203系【3】

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《前回からのつづき》

 

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 千代田線開業は、都市交通審議会の答申に沿って建設されましたが、答申では小田急小田原線常磐線にそれぞれ至るとされていました。代々木上原から喜多見までを、そして綾瀬から取手までをそれぞれ営団地下鉄が別の線路を建設するようにも読み取れますが、それでは建設費がか嵩んでしまい合理的ではありません。そこで、千代田線が接続する代々木上原からは小田急小田原線に、綾瀬からは常磐線に乗り入れて、相互直通運転することにしました。

 千代田線は、電力消費量が従来の抵抗制御よりも低く抑えられるとともに、電装品から放出される熱の量が少なくできるチョッパ制御を採用した車両を使う計画でした。開業当時はこの新たな車両がいまだ開発段階にあったため、暫定的に東西線でも運用されていた5000系を増備して運用に充てましたが、程なくして実用段階に漕ぎ着けたので、新たに6000系を増備してこれを置き換えていきました。

 この6000系で採用したチョッパ制御は、半導体であるサイリスタ素子を使った電機子チョッパ制御でした。電機子チョッパ制御は主電動機に従来から使われていた直巻整流子電動機が使える上、電圧の連続的な制御を可能にする無段制御を実現でき、力行時の電気エネルギーの損失がなく、粘着性能を高めることができます。また、制動時には回生ブレーキも使えるので、電力消費量を抑えることもできました。そして、何よりも重要なのは、抵抗制御のように電気エネルギーを熱エネルギーとして放出することがなく、地下鉄線という狭い空間では、トンネル内の温度上昇を抑えることもできたのです。

 これに対して、乗り入れてくる車両も6000系と同等のものを営団は求めました。小田急電鉄は千代田線乗り入れ用として、界磁チョッパ制御を採用した9000系を用意しました。界磁チョッパ制御は力行時は抵抗制御と同じ方法で電圧制御をするものの、制動時には回生ブレーキを使うことができるため、電機子チョッパ制御に及ばないものの消費電力を抑えることができました。

 その一方で、国鉄103系を地下鉄仕様にした1000番台を用意しました。

 

国鉄営団千代田線乗り入れに際して用意したのは、103系を地下鉄線走行に適したA-A基準に則った仕様の1000番台だった。前面には非常口となる貫通扉を設け、保安装置は千代田線でも使うCS-ATC国鉄形式はATC-3)を搭載、難燃素材や配電は鋼管に収めるなどしたが、制御装置は抵抗制御のままで、ブレーキも発電ブレーキのままになるなど、地上線用の車両と大きく変わらなかった。そのため、主抵抗器からは大量の放熱がありトンネル内の温度を上昇させ、電力消費量も営団6000系よりも多くなってしまうため、国鉄営団に対して電力使用料の差額を支払わなければならなかった。(©永尾信幸, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 

 103系国鉄が大量に製造した通勤形電車です。数多く生産され、長い間使われ続けたことや、回路構成が簡単であり製造コストも安く実績のあるものですが、力行時には抵抗器の接続を変えることで電圧泥魚をするため、電流を熱として捨ててしまうのでエネルギー効率は低いものでした。さらに、制動時には回生ブレーキを使うことができず、代わりに発電ブレーキを使ってるたため、電力消費量を高くしてしまいます。また、発電ブレーキは主電動機で電流を発生させるものの、その電流は主抵抗器に流され、熱エネルギーに変換してこれを放出するので、トンネル内の温度を上昇させる弱点がありました。

 そのため、営団国鉄から乗り入れてくる103系1000番台は、電気を多く使ってしまうために電気代を上げ、さらにはトンネルの温度を上げてしまう厄介な存在として見ていたといえます。

 実際、営団6000系国鉄103系1000番台では電力消費量が大きく違い、会計検査院からは「国鉄営団に電気代の差額を支払う」という指導までされていました。さらに、103系の主抵抗器は走行中に生じる風を使って冷却する自然通風によるものでしたが、地上線ではこれは可能でしたが、狭い空間の地下線では思うようにこれができず、排熱による主抵抗器の誤作動や故障の頻発、そして車内の温度を上げてしまうので、乗客の快適性を削いでしまう弱点を抱えてしまったのです。

 さすがに営団としては看過できない問題を抱えた103系1000番台を、そのまま乗り入れてくることをよしとはせず、早い時期にチョッパ制御を採用した車両を導入するように、国鉄に対して申し入れをしたのでした。

 

《次回へつづく》

 

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