旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産~新会社に遺していった最後の国鉄形~ 私鉄車両に迫ったアルミ車体とチョッパ制御車・203系【6】

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《前回からのつづき》

 

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 残存する旧性能電車を置き換えつつ、混雑路線の高性能化による輸送力増強へとつなぐことができた201系の量産は、国鉄としては高価な設備投資に見合うものだったと考えたことでしょう。そして、201系の量産は、電機子チョッパ制御車の量産でもあり、国鉄にとってもう一つの懸案を解決する糸口にもなったのです。

 その懸案とは、常磐緩行線から営団千代田線へ乗り入れている103系1000番台でした。営団は千代田線用の6000系以降に新製する車両はすべて電機子チョッパ制御を採用し、地下鉄の宿命ともいえるトンネル内の温度上昇を抑え、同時に効率的な電力消費による運用コストの削減を実現していました。

 対する103系1000番台は抵抗制御車で、主抵抗器からは大量の発熱、そして発電ブレーキによって効率的な電力消費とは程遠いもので、ダイダンからは早期にチョッパ制御車への置き換えを要請され、国鉄からは営団に対して電気代の差額を支払っていましたが、201系の登場によりこれも解決へと向かったのです。

 そして、国鉄は千代田線乗り入れ用に新たな通勤形電車を開発しました。

 1982年に登場した203系は、営団からの要請に対して国鉄が出した答えでした。そして、203系は国鉄の通勤形電車の中でも類を見ない、特殊な用途と仕様をもった車両でした。

 

201系の実用化と量産によって、国鉄はチッパ制御車の運用を始めた。千代田線乗り入れ運用に充てていた103系1000番台は抵抗制御のままで、営団からは早期にチョッパ制御者の導入を求められていた。201系の実用化により、国鉄もようやく営団からの妖精に応えることが可能になったことから、201系の制御装置などの機器類を使い、車体をアルミニウム合金で製作することで車両の自重を軽量化し、6000系に肩を並べる203系を開発した。(クハ203-102〔東マト〕我孫子駅 2010年6月26日 筆者撮影)

 

 203系の電装品は、201系のものとほぼ同じでした、主制御器はサイリスタ素子を使った電機子チョッパ制御方式のCH1A形を装備していました。この主制御器は201系の試作車と初期量産車が装備したCH1形を改良したもので、容量を600Aから1000Aにしたものでした。このCH1A形は国鉄最初にして最後のチョッパ電気機関車であるEF67形に搭載したものを同じで、大容量化することにより搭載するチョッパ制御装置の数を少なくできるので、製造コストを抑えることを可能にしました。

 このCH1A形を1基に対して、制御できる主電動機は8基、すなわち1C8Mとされました。これは、MM’ユニットを組むのが基本である国鉄新性能電車では、M車にチョッパ制御装置を1基搭載すれば、ユニットすべての主電動機を制御することができることを意味し、できるだけ製造コストを抑えていたと考えられます。

 

 

《次回へつづく》

 

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