■交流版EF63形ともいえる急勾配専用機・国鉄交流電機最大のEF71形
板谷峠区間を含む奥羽本線が交流電化に切り替えられ、それとともに登場したED78形は、軸重可変機構をもち、サイリスタ位相制御で交流電機としては初めて回生ブレーキを装備するとともに、電機子短絡スイッチや過速度検知装置といったEF63形と同等の重装備をした、勾配線区用の交流機として開発・製造されました。
これだけの装備と性能をもったED78形でしたが、不安材料がなかったというわけではありませんでした。列車重量が重い貨物列車を牽くときには、基本的に重連で運用されました。しかし、ED78形は搭載する主電動機が4基のD級機であるため、峠を下るときに回生ブレーキを使い続けると、その熱容量が不足する恐れがありました。これは、常に主電動機を発電機として使うときに発生する熱が、その許容量を超えてしまい過熱、発火の恐れがあったのです。
そこで、補機としての役割をもたせたF級機も必要であると考えられたのでした。これは、碓氷峠越えに運用されていた電機で、本務機であるEF62形と補機専用機であるEF63形の考え方に近いものでした。
1968年にED78形と同時に開発されたのが、交流機としては2番目のF級機であるEF71形です。
EF71形の基本構造はED78形とほぼ同じでした。サイリスタ位相制御で回生ブレーキを使うことが可能であり、連続した急勾配を下ることを可能にした性能をもっていました。車体も重連運転を前提としていたため、貫通扉があるED75形やED76形500番台と同じデザインでした。その一方で、F級機となったことで、全長は18,500mmという大きさになり、国鉄交流電機ではもっともサイズが大きな車両になりました。
豪雪地帯で運用することから、交流機特有の屋根上に設置された降圧機器類はすべて機器室内に収容されたため、屋根上は集電装置から伸びる高圧線があるのみで、すっきりしたものになっていました。
EF71形の最大の特徴は、主電動機を6基搭載したことであるといえます。国鉄交流機のほとんどがD級機であるため、主電動機は4基だけ搭載していました。例外といえるのが北陸本線北陸トンネル開通に備えて増備されたEF70形があるだけで、あとはこのEF71形があるのみだったことからも分かるでしょう。
主電動機は直流機と同じ、国鉄形電機の標準品ともいえるMT52形を6基搭載していました。EF71形では電機子の絶縁を強化したMT52A形が使われましたが、基本的な性能に大きな変わりはありません。この主電動機は直流電機にも使われる、いわば国鉄電機の標準品といえるようなもので、例えばEF65形では1基あたり425kW、2,550kWの出力を出すことができるように設計されています。

国鉄の直流電機の標準型と位置づけられたEF65形もまた、主電動機はMT52形を搭載していた。この主電動機は直流機、交流機、交直流機問わず採用されたが、直流機の場合は6基搭載で定格出力が2,550kWであったのに対し、EF71形は2,700kWと150kWの差があった。これは、直流機が抵抗制御であったため、電流の一部が主抵抗器で熱エネルギーとなってしまう損失があったことによるもので、EF71形はサイリスタ位相制御で電流の損失がなく、その分だけ出力が大きくすることができた。(EF65 2070〔新〕新川崎 筆者撮影)
ところが、EF71形は同じMT52形を6基搭載していますが、機関車出力は2,700kWとされました。同じ主電動機で搭載する数も同じであるにもかかわらず250kWの差があり、交流機であるEF71形の方が高い出力になりました。これは、主電動機に印加する電圧の違いで、直流機であるEF65形は端子電圧を750Vとしたのに対し、EF71形は交流機であることから端子電圧を上げて約793Vとしたため、1基あたりの出力を450kWとなったのでした。
直流機は抵抗制御であるため、主電動機に送る電流の電圧制御は、主抵抗器を組み替えて調整します。そのため、主抵抗器では電気エネルギーの一部は熱エネルギーに変換されてしまうため、その分だけ電流は減ってしまいます。
一方、交流機であるEF71形は、集電装置から取り入れた交流20,000Vを変圧器で電圧を低くします。そして、半導体を使ったサイリスタで電圧を制御するため、直流機のように電気エネルギーを熱エネルギーに変えてしまうことはありません。言い換えれば、取り入れた電流を無駄なく使うことができるので、主電動機に印加する電圧を直流機よりも強くすることができ、出力も大きくできるのです。
主電動機1基あたり450kW、機関車出力2,700kWという国鉄の交流電機としては最強出力を誇る機関車となったのでした。
《次回へつづく》
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