旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産~新会社に遺していった最後の国鉄形~ 「魔改造?」出自が変わり種で国鉄最初で最後の1M方式旅客電車・123系【1】

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 国鉄形の電車というと、どのような車両を思い浮かべるでしょうか。

 最近まで活躍していた特急形の381系や185系もあれば、今なお走り続けている近郊形の113系115系も挙げる方もいることでしょう。いずれも国鉄が設計した車両らしく、電装品をはじめ車体に至るまでほぼ共通したものを使い、全国規模で配置転換しても使えるように、標準化した車両でした。

 これらの車両はカルダン駆動方式を採用した新性能電車と呼ばれるカテゴリーのものですが、その大きな特徴として電動車は主制御器など「主機」と呼ばれる機器を搭載した車両と、空気圧縮機(CP)や電動発電機(MG)といった「補機」と呼ばれる機器を搭載した車両の2両を組ませる「MM’ユニット」という、2両1ユニットを組むことが大前提でした。言い換えれば、国鉄の新性能電車は主機と補機はそれぞれ別の車両に装備させ、電動車は不可分のユニットを組んで編成に組み込んでいました。

 編成中に電動車が多くなると主電動機の数が多くなるため、1本あたりの出力は大きくなります。その結果、列車は速く走ることができたり、大きなトルクを得ることで0km/hからの引き出す力が強くなったりします。

 このように、MM’ユニット方式ではメリットがある反面、デメリットも存在しました。

 電動車は必ず2両1ユニットを組まなければならないことから、編成を仕立てるときにある程度の制約が生じてしまいます。例えば、3両編成で十分な線区へ投入するとした場合、2両は必ず電動車にしなければならないので、残り1両は付随車となります。しかし、編成の両端は先頭車にしなければならないので、1両は制御車としても、もう一端の1両は制御電動車にする必要があります。

 115系のようにクモハ115形のような制御電動車がある系列なら、このような短い編成も容易に組むことができます。しかし、113系のように制御電動車がない系列は、3両編成を組むことができないので、やむなくTc+M+M'+Tcのような4両編成にせざるを得ません。

 いやいや、4両編成なら混雑したときに多くの人を乗せることができるからよいのでは、という考えもあるかも知れませんが、日中など閑散時間になるとこれは輸送力が過大になるため、経済的にも好ましいものとはいえません。線区の事情によっても異なりますが、列車の連結両数は利用実態によって可能な限り適正な輸送力を確保することが欠かせないので、輸送力が過大になることはコストも嵩んでしまい、ともすると収支が悪くなり赤字になってしまいます。

 また、1編成あたりの電動車の比率が高くなることは、それだけ電気を使う量が多くなることを意味します。そして、多くの電気を使うほど、電気使用料として電力会社に支払う金額も増えるので、コストを削減して利益を上げるという鉄道事業者の考え方とは相反するものになるので、輸送力を実態に応じて適正にすることは経営上からすると欠かすことのできない要件になるのです。

 MM’ユニットが原則となる新性能電車を、2両編成で十分な線区へ投入するとなると、さらにそのデメリットは顕在化します。2両ともに制御電動車でなければならないので、こうした線区へ投入できる車両には限りがありました。

 

モハ90系、後に101系と名を改めて登場した新性能電車は、カルダン駆動式になったことで従来の吊り掛け駆動式と比べて、騒音や振動がなく、高速性能に優れた新世代の電車だった。制御方式は抵抗制御であるものの、旧性能電車と比べて超多段制御器を採用したことで、滑らかな加速を実現した。その一方で、主制御器などの電装品は大型化したことで、1両の床下にはすべての機器をぎ装できなくなり、補機類は別の車両に装備させることで解決した。こうした構造から、電動車は主機類と補機類を別々に搭載した車両にユニットを組ませる「MM'ユニット」式となり、M車とM'車は必ず2両1組で編成を組まなければならなくなった。このことにより、新性能電車は最小でもMc+M'cという2両編成が限界になったことで、2両編成でも輸送力が過剰な支線などの閑散線区での運用を難しくしてしまった。2025年現在も、このMM'ユニットを最小限で運用しているのは、播但線小浜線に配置された103系で、どちらもMc+M'cを組んでいる。(出典:写真AC)

 

 その最たる例として、南武線浜川崎支線を挙げることができます。尻手駅浜川崎駅間はたったの4.1kmしかありません。政令指定都市の中にある通勤路線としては非常に短く、日中は40分間隔で運転されているという、ローカル線並みの運行体制がとられています。しかも、1日あたりの乗車人員は浜川崎駅で2000人前後、途中の川崎新町駅は1500人弱程度で推移していたため、列車は2両編成という短さで十分でした。

 

《次回へつづく》

 

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