旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産~新会社に遺していった最後の国鉄形~ 「魔改造?」出自が変わり種で国鉄最初で最後の1M方式旅客電車・123系【5】

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《前回からのつづき》

 

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 1980年代に入ると、これまで何度もお話してきたように、国鉄が抱える巨額の債務が社会問題となっていきました。国家予算に近い巨額な債務は、文字通り国鉄の財政事情は火の車となっていて、これを解消することは喫緊の課題でした。しかし、あまりにも巨額であるが故に、債務の解消はよほどのことをしなければ、ほとんど不可能に近いとさえ考えられていました。

 相次ぐ運賃の値上げや、大量の車両や多くの施設の老朽化もまた、それに拍車をかけていました。

 前者は債務を少しでも解消しようと、極端なほどに安価に抑えられていた運賃を毎年のように値上げしたものの、国鉄が目論んだとおりの増収につなげることは困難でした。国鉄の輸送サービスの水準が低く、全国組織であるが故に避けて通れない「標準化」がかえって仇になり、画一的なそれは利用者にとって運賃の値段に見合わないと考えられたと思われます。

 加えて、長年に渡る労使関係の極端な悪化は、「スト権スト」や「遵法闘争」に代表されるように、列車の運行が止まったり、慢性的に遅延が発生したりといったことが頻発したことで、国民の国鉄に対する厳しい視線が浴びせられました。特にドル箱ともいえる首都圏や関西圏は利用者が競合する私鉄に離れ、長距離の利用者も航空機や高速バスへと流れていきました。極めつけは貨物輸送は荷主がトラックへと移転してしまうなど、ほとんど壊滅的な状況になり、走らせれば走らせるほど赤字を生むといった状態でした。「国鉄離れ」によって増収して債務解消どころか、債務を増やす結果に陥っていたのでした。

 

1980年代に入っても、地方ローカル線では旧形国電の運用が続けられていた。都心部に新型車両を投入し、そこから捻出した車両を大都市圏近郊の線区へ転用、さらにそこで運用されていた旧型車を地方ローカル線に転用する方法が採られていたことと、これらローカル線での運用に適した車両が国鉄にはなかったことが要因だった。これは、地方ローカル線では1~2両編成でも十分に対応できる範囲であった一方、新性能電車はMM'ユニットを組むのが原則であり、1両編成は不可能、2両編成でもすべて電動車にならざるを得ず、経済的に不利であった。しかし、戦後製ならまだしも、戦前製の省形すら現役で使われていたため、これらの車両の老朽化は深刻なものとなり、これらを代替する車両の投入は急務になっていったといえる。(©栗原 岳 (Gaku Kurihara), CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 

 そして後者も大きな問題でした。年を追うごとに酷使される車両は老朽化が進み、新たな車両へと置き換えることが欠かせません。また、合理化の流れの中で、機関車牽引の客車列車を電車化や気動車化するためには、これに充てる車両をつくらなければなりませんでした。

 そのため、国鉄は鉄道債券を発行してでも、これに使うための車両を製造し続けていったのです。民間の企業であれば、社債を発行するのも限度があり、それを超えればたちまち債務超過に陥って、会社を倒産の危機に追い込むことになります。しかし、国鉄にはそのような意識があったのかないのか(恐らく、国鉄は「親方日の丸」で潰れることはないから、そのような意識は希薄だったでしょう)、「新たな車両は必要だから債券を売ってでも作り続ける」という姿勢から脱却できず、結果として大量の鉄道債による資金調達を続けていったと考えられます。

 こうしたことを続けた結果、巨額の債務を抱え込むことになり、国鉄再建が叫ばれるようになると、増収増益、経費削減と合理化を進めることになります。しかし時すでに遅しでしたが、国鉄は必要な車両を新に新製することを抑制し、余剰となった車両を可能な限り活用する方針へと変えていきました。

 そうした中で、地方ローカル線の電化区間でなおも使い続けられていた吊り掛け駆動式の旧性能電車の置き換えもまた、避けて通れない課題として立ちはだかっていました。中には第二次世界大戦前から使い続けられ、車齢も40年を超えるものまであったことから、これらを新性能化しなければなりません。

 しかし、地方ローカル線の電化区間は輸送量が少ないため、首都圏など大都市圏で使われてきたMM’ユニット方式の電車では、編成を組む自由度が下がるだけでなく、輸送力が過多になってしまうので、運用コストを増大させてしまいます。

 そこで、クモユ141形を始祖とした、新性能1M方式電車に着目されることになったのです。

 

《次回へつづく》

 

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