《前回からのつづき》
クモハ123形の走行に必要な機器は、種車のクモニ143形のものを活用しました。
主制御器は電動カム軸式のCS44形で、この制御器は力行時に直列11段、並列13段、弱め界磁4段の計28段、発電ブレーキ20段の回路制御をすることができ、これを出力100kWのMT57A形に印可する電圧制御します。
主電動機は前述の通り、出力100kWのMT57A形を4基搭載していました。この主電動機は、国鉄初の新性能1M方式電車であるクモユ141形を製造するにあたって開発されたもので、端子電圧は750V、主電動機を2個直列2並列に対応した仕様のものでした。
この2個直列2並列というのは、主電動機そのものは2個直列に繋いで回路を構成し、これをさらに並列に繋いだ構成だといえます。主電動機、すなわちモーターを電源に対して2個直列でつないだ場合、その回転力は電源の電圧によって左右されます。そして、電源の電圧が高ければ回転力も高くなりますが、モーターそのものが互いに抵抗器と同じはたらきになる(これを「負荷」という)ので、1個の時と比べて同じ回転を得るには高い電圧が必要になります。それ故に、MT57形は端子電圧を従来のMT55形などの375Vの倍になる750Vになるようにしました。
しかし、2個直列につないだモーターは、高い電圧によって回転力を得ることができますが、低い回転時のトルク力は失われます。そこで、この2個直列につないだモーターをもう一つ、並列に接続すると同じ回転のモーターが4個になるので、トルク力を得ることができます。
このような主電動機の回路構成をすることで、新性能1M方式電車は低速域のトルクを確保しつつ、高速域での高い回転力を得るようにしたのでした。
クモハ123-1の台車もまた、種車のものをそのまま活用しました。国鉄の新性能電車の標準ともいえる、ウィングばね式軸箱支持で、枕ばねはコイルばねを使ったDT21形で、ブレーキ装置を車輪の両側から抱くようにして作動する両抱き踏面ブレーキのDT21C形を装着していました。クモハ123形を運用する線区は、それほど高速で運転するのではないので、この台車の性能で十分だったといえます。
ブレーキ装置も種車と同様に、発電ブレーキ併用の電磁直通ブレーキを装備し、高速域からの応答性が高く、国鉄がながらく使ってきた実績と信頼のあるものでした。また、種車であるクモニ143形は上越線などの勾配線区での運用に充てられていたので、抑速ブレーキも装備していました。この点は非常に有意であると考えられ、連続した勾配のある路線でも運用を可能にしたといえます。
集電装置は狭小トンネルに対応させるため、折り畳み時の高さを抑えたPS23形を装着しました。これにより、集電装置周辺の屋根高を低くする「低屋根化」をすることなく、非電化時代の規格のまま電化された低いトンネルの通過も可能にしています。
こうしてつくられたクモハ123-1は、長野工場で落成すると松本運転所には位置されて、計画通り中央本線辰野支線の運用に充てられました。当初は冷房装置はなく、車体はクリームアイボリー地に側面窓下に緑色の帯を巻き、全面はそれを反転させたデザインで、窓周りと腰板部分が緑色という塗装でした。
松本運転所に配置になったクモハ123-1は、終日に渡って岡谷駅ー辰野駅ー塩尻駅を往復する運用でした。朝と夜の入出庫時だけは、松本駅発着の1往復が設定されていましたが、それ以外はただひたすら辰野支線を往復していたのです。
その後、鉄道車両の冷房化の波は地方ローカル線にも及ぶようになり、JR東日本は1993年にクモハ123-1を長野総合車両所で冷房化改造の工事を施しました。この時の改造では、可能な限り改造コストを抑え、施行期間を最小限にするため、国鉄時代からのAU75形集中式冷房装置ではなく、簡易な改造で済むAU712形集約分散冷房装置を2個、屋根上に設置しました。また、この冷房装置の電源はAU75形のように直流ではなく交流としたため、SC24形インバータ制御装置も屋根上に設置しました。
クモハ123-1は、「ミニエコー」という愛称がつけられ、前面に台形を逆さまにした形状のヘッドマークをつけていましたが、冷房化改造時に楕円形の小さなものへ交換、これは電照式となり夜間も見えるようになりました。そして、塗装も車体上半分は赤色、下半分はアイボリーに変えられ、側面には185系踊り子塗装に似た3本のストライプが白色で入れられるなど、装いを新たにしました。

辰野支線に投入された123系も、改造から27年が経ち老朽化が進んでいた。もともと荷物車であるクモニ143形を種車として、大がかりな改造を施して旅客車化したことや、冬季は厳しい気候の中で運用されることから、その進みは相当であったと考えられる。また、JR東日本にとってはたった1両という少数形式であり、より効率性の優れたVVVFインバータ制御の車両が増えたことなど、置き換えるに至る要因が日増しに大きくなっていった。2013年のダイヤ改正をもって、辰野支線で運用され続けてきたクモハ123-1は運用を退き、後継は軽量ステンレス車体をもちVVVFインバータ制御を採用したE127系へと置き換えられた。(出典:写真AC)
1986年の改造以来、一貫して松本運転所に配置されて辰野支線のローカル輸送に携わり続けましたが、2010年代に入ると老朽化も進んできました。また、電力効率の面で抵抗制御は不利であり、JR東日本の一般形電車はほとんどがVVVFインバータ制御に置き換わってきたこともあり、2013年3月のダイヤ改正をもって運用を離れ、辰野支線の運用をE127系に託して、クモニ143形として新製以来35年、改造からは27年の生涯に幕を下ろしました。
《次回へつづく》
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