■補機運用にも就くことが可能な最新鋭機EF210形300番台
国鉄の分割民営化後、旺盛な需要に対応するために、1列車あたりの輸送力を増強するために、1600トンという途方もない超重量列車を実現すべく開発されたEF200形は、定格出力6000kWという性能は実現できたものの、コキ車32両、列車延長640mという長大な編成を収めることができる施設もなく、最高出力を発揮すると変電所が追いつかないため架線の電圧降下を招くなど、過剰性能と過大な構想による弱点が露呈しました。

定格出力6000kW という世界でも類を見ない強力なパワーをもったEF200形は、1600トンという超重量級列車を牽くことを前提に開発された。しかし、これだけのパワーを絞り出す車両に、地上の変電設備などが対応できず、電車線の電圧降下を引き起こしたり、変電車が異常を検知して電流の供給を遮断してしまったりと問題になった。また、1600トン列車を実現するためには、駅の施設もそれに対応しなければならなす、単純計算でコキ車40両、列車延長784m(コキ107形で)などという途方もない長さの列車を停車させるためには、莫大な費用をかけて施設の改良工事をしなければならなかった。結局、1600トン列車は非現実的な夢でしかなく、後に1300トンという現実的な数字に落ち着くことになる。こうしたことから、EF200形のような超強力機は意味のないものになってしまい、より現実的な性能に落ち着いたEF210形の量産へと移っていった。(出典:写真AC)
結局、期待されながらも十分な性能を発揮することもできず、たった20両の量産で終わってしまったことの反省から、より実際の環境に見合った性能に最適化し、いずれ老朽化による置き換えとなるEF65形やEF66形の役割を担う直流電機として、1996年から製造が続けられているのがEF210形です。
試作機である901号機は1996年に製作され、新鶴見機関区に配置後は2年間にわたる各種試験を経て、1998年から量産機の製造がはじめられました。試作機の登場からすでにこの原稿を書いている2025年の時点で29年、量産開始からは27年も経っています。途中、改良を加えた100番台に製造が移行したものの、同一形式の車両がこれだけ長期にわたって生産が続けられているのはこれまでになかったことだといえます。
EF210形はVVVFインバータ制御を採用し、定格出力は1時間出力で3,390kW、30分出力では3,540kWとEF200形はおろか、EF66形にも及ばない出力ですが、最大で1,200トンの列車を牽くには十分な性能であると考えられたのです。
そして、EF210形は安定した性能を示すようになり、年に数両ほどが新製される程度ですが、徐々にその数を増やしていき、計画通りに老朽化が進んだEF65形やEF66形を置き換えていったのでした。
そうした中で、2012年になるとそれまで量産が続けられてきた100番台から、新たに300番台が起こされ、広島車両所に新製配置されました。EF210形は直流区間で汎用的に使うことができる平坦線区用の標準電機でしたが、この性能であれば連続して20パーミルの急勾配を擁する瀬野八の補機としても十分な性能をもっていると考えられたのでしょう。
新たに300番台に開発された区分であり、瀬野八の補機専用機であったEF67形を置き換えることが主たる目的でした。そして、1エンド側には大型のシリコンオイルを充填させた連結器の緩衝装置が装備されました。
新製直後こそ、広島所に配置されてEF67形とともに、瀬野八を通過する上り貨物列車の最後尾に連結され、補機専用機として運用されましたが、汎用性の高い車両をそのまま補機として使うことの非効率性、残存するEF65形やEF66形を置き換えるためEF210形は今後も増備を続けなければならないこと、梅田貨物支線に想定されていた地下線から地上部への急勾配では、瀬野八同様に補機を連結しなければならないことなどから、他のEF210形と共通運用を組んだ方が得策と判断され、最終的にEF210形300番台は広島所配置をなくして吹田機関区へと異動、一般の貨物列車も牽くようになったのでした。
そして、2012年以降に増備されたEF210形はすべて300番台となり、瀬野八用の補機専用機という立場から、瀬野八に対応した汎用機へと変化していったのでした。

EF210形は1996年に試作機となる901号を製造、各種試験の後に1998年から量産が始められた。長距離・高速走行を強いられるという過酷な運用をこなしてきたEF66形の老朽化による取替用、さらにはEF65形の取替用として量産が続けられ、いまやJR貨物の直流標準軌としての地位を確立、2025年現在で既に160両以上がつくられ運用されている。この間、一部の改良によって100番台に製造が移行し、さらに2013年からは瀬野八越えの補機運用にも使うことができる300番台に生産が移っている。300番台も既に70両以上が生産され運用に就くなど、汎用的に使われている。この汎用性こそがEF210形の最大の武器であり、1000km以上の長距離列車から大都市圏内の小運転までこなしている。JR貨物が特殊会社とはいえ民間企業であるため、国鉄時代のような使う線区の特性に合わせた仕様の車両をつくるという非効率的なことは不可能であり、車両1両についても効率的な運用は欠かすことができない。また、形式が別々の車両を所有することは、検修作業や技術的な知識、補修用の部品の調達に至るまで煩雑になり、その部だけコストが増大する。汎用的な車両を1形式だけに絞れば、補修用部品の調達も1形式のものだけになり、必用であれば検修区所間での融通も利く。乗務する機関士や検修職員も、EF210形について知っていればJR貨物の大多数の機関車を知っていることになり、人的な負担も軽減する。このように、汎用機であるEF210形は様々な面で効率性を高めた電機となり、瀬野八越えの補機専用機を不要なものにした。(出典:写真AC)
2025年現在、EF210形300番台の増備は続けられています。既に吹田区だけでなく新鶴見機関区にも300番台が新製配置され、残存するEF65形を順次置き換えてきました。そして、これはあくまでも筆者の予想ですが、初期に製造されたEF210形は車齢が30年以上に達し始めており、これらも置き換えの対象になると考えられます。特に岡山機関区配置の0番台は、インバータ装置に使われている半導体素子がGTO素子であるため、100番代以降と共通性がなく、補修用部品も枯渇することは時間の問題でしょう。なにより、重量の重い貨物列車を長距離、長時間牽き続けるという過酷な運用は、車両そのものに大きな負担を強いることになり、老朽化を進めてしまうのは避けて通れません。こうしたことから、EF65形の置き換えが終わった段階で、初期車を300番台で置き換えることはは想像に難くないといえるのです。
いずれにしても、補機専用機という国鉄以来のカテゴリーをなくしたEF210形300番台は、補機運用もこなせる汎用性の高い電機であるといえるでしょう。そして、その能力を十二分に発揮し、今日の鉄道貨物輸送を、日本の物流を支え続けているのです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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