《前回からのつづき》
筆者が鉄道マンだった当時は、電気区に配属されていました。はじめの頃は見習いとして、管轄する駅や運転区所の信号保安設備や電力電灯設備の保全検査や修繕といった実作業を、先輩についていって一緒に作業し、仕事を覚えていったものでした。その後、在日米軍基地の専用線に関わる設備を担当し、保全検査計画の立案や工事設計にも携わりました。そして、派出勤務を経験してから本区へ戻ると、資材担当者として区が管理するすべての資材の出納と発注検収という、とにかく数字にまつわる仕事もするようになります。

鉄道は基本的に24時間動いていいる。旅客列車は最終列車が発車した後は、翌日の始発列車まで運転されないが、貨物列車は昼夜を問わず運転されている。これは、荷主の多くが日中に生産などの活動をして夕方に出荷するため、貨物駅には夕方以降の搬入になってしまうので、夕方以降の発車の方が都合がよい。一方、旅客会社も日中に数多くの貨物列車が走っていては、自社の都合によい旅客列車のダイヤを編成できなくなってしまうので、貨物列車は基本的に列車の運転本数が少ない夜間の方がよいといえる。そのため、多くの鉄道施設では夜間も稼働することができるように、構内を照らす照明を欠かすことができない。
この資材とは、信号用の小さな電球1個から、駅構内を照らす大きな水銀灯、信号標識、果ては電気転轍器といった大型のものまですべてを指します。これらの資材は鉄道を安全かつ確実に運行するために、どれも欠かすことのできない(たとえ蛍光灯一本でも)ものです。資材担当者は自区で保有する資材は、何が何個あり、どこに保管されているのか、そしてそれらの値段までを熟知していなければなりませんでした。
例えば、管轄する駅や運転区所から、詰め所の蛍光灯がつかなくなったと連絡があるとします。連絡を受けた主任は担当者にそれを伝えると、担当者はどのような故障の可能性があるのかを検討します。
つい最近、安定器(200Vラピットスタート方式の蛍光灯の灯具には、安定した電流を蛍光管に送るための小型のトランス=安定器を内蔵している)を交換したのであれば、それは蛍光管が切れたと判断します。また、2灯式の灯具であれば、2本の蛍光管のいずれかが切れたのか、それとも2本とも切れたのかを聞き取ったうえで判断します。そして、どのような故障なのかを断定すると、詰め所に残っている職員の中から必要な人数を指名し、臨時の修繕作業の計画を立てて助役や区長に報告するとともに、資材担当者には必要なものがあるのかを確認します。

筆者が勤務した横浜羽沢駅構内には、当時は電気設備用の資材倉庫が点在していた。倉庫といっても立派なものではなく、貨物会社らしく廃コンテナを再利用したもので、C10形やC20形を使っていた。しかし、倉庫が点在するということは、これらの資材を管理する立場としては非常に厄介で、何がどこにあるのかを常に把握しやすくする必要があった。中には派出管理という物品もあり、在庫数を確認するために問い合わせを出したり、最悪の場合はわざわざ出向くこともあった。(©Suikotei, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)
資材担当者はすぐに使われる資材を特定し、在庫の有無を回答するとともに払い出しの手続きをはじめます。保管している倉庫に行き、必要なものを必要な数だけ出すと、それを出動する担当者に渡すのです(資材担当者といえども現場に出向くこともあるので、そのまま持っていくこともある。筆者の場合はこのケースが多かった)。この場合、安定器と蛍光管2本を払い出しますが、蛍光管も使われる場所によって違いがあり、例えば職員が執務する事務所であれば、200V40W昼光色の蛍光管(FLR-40SDM)を、休憩をするところであれば200V40W中白色(FLR-40SWM)を払い出すことになるのです。
現場での修繕作業が終わると、作業を担当した職員から実際に使った資材の種類と数の報告を受けます。実際には、払出手続きをしたのは資材担当者なので、使った数の報告だけを受けます。そして、その報告をもとに「物品仕様報告書」を作成して支社経理課へ送付するとともに、保管してある倉庫の現品票に払い出した日付と使用場所、払い出した数量を記入し、資材台帳にもその事実を記載して払出手続きが終わります。
こうしたことを繰り返すうちに、資材担当者は何がどこに何個あるのかを、そして単価と保有資材の合計価格を頭の中に叩き込むようになるので、ある先輩に言わせると筆者のことを「資材の鬼」などと冗談を言っていましたが、技術者であると同時に会社の財務経理の一端を担う重要な役割だったのです。
また、資材担当者にはもう一つ、重要な役割があります。それは、自区が保有する資材について熟知していますが、同時に在庫切れにならないように、払い出したものについて補充をする計画を立てなければなりません。いざ、障害復旧のために必要な資材を使おうとして、それが在庫切れだったなんてことになれば、それを修繕することができません。当然、安全かつ安定輸送を損なうことになり、荷主はもちろんのこと、間接的には乗客に迷惑がかかるだけでなく、構内で執務する職員の安全をも脅かすことにつながるので、常に在庫を確保しておかなければならないのです。
《次回へつづく》
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