旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

鉄路探訪記:湘南モノレール江の島線【4】

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《前回からのつづき》

 

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 湘南深沢駅の周辺を散策して、駅前のコンビニエンスストアでアイスを購入し、熱くなった体を少しだけ冷やしてから、再び江ノ島に向かって行くことにした。大船方からやってきたのは、湘南モノレールの新鋭5000系。従来の500形をベースにしたデザインだが、側窓は最近流行の熱線遮断スモークガラスを使っていて、筆者が通勤で利用していた頃とは違った印象だ。やはり、10年という月日は短いようで長いようだ。

 湘南深沢駅を発車すると、すぐに分岐器を通過して加速を始める。左側の窓から外の眺めると、JR東日本の旧鎌倉総合車両センター深沢地区の大きな建てやと敷地、そして今はほとんど住む人のなくなった官舎と、新たに建設されたマンションなどが深沢地区の街が一望できる。そして、再び分岐器を通過するが、本線はそのまま直進するが、分岐した先には3階建てのビルの中に軌条が吸い込まれて見える。

 

湘南深沢駅で交換をする500形と5000系。湘南モノレール江の島線は全線が単線なので、このような列車の交換が富士見町、湘南深沢、西鎌倉、そして目白山下で見ることができる。普通鉄道とは違って、懸垂式モノレールは文字通り「空中の鉄道」なので、駅とはいえども雰囲気が異なるが、乗務員や閉塞装置はほぼ同じなので、乗っていると違和感はなかった。(湘南深沢駅 2011年8月10日 筆者撮影)

 

 湘南モノレール車両基地である深沢車庫があり、引き込み線の脇には3階建ての雑居ビルらしきものも立っているが、湘南モノレールの本社である。本社と言っても、1階は居酒屋チェーンで2階は「湘南ボウル」というボウリング場になっているから、一般の利用客も出入りできる。本社は3階にあるようだが、湘南モノレール本社の看板はなく、代わりに居酒屋チェーンとボウリング場の看板が目立つから、ここが本社といわれなければ判らない人もいるだろう。

 

 

湘南深沢駅に侵入してくる下り江の島行き5000系。湘南モノレール江の島線はかつての自動車有料道路の真上につくられたので、車が行き交う真上を列車が走っている。また、起伏が激しく狭隘な場所を通っていることを、下に見える道路を見ると分かるだろう。湘南深沢駅は列車の交換を必ず行うので、写真左端に見える閉塞信号機が設置されているは、これを見ると普通鉄道の閉塞と大きく変わらないことが分かる。湘南モノレール江の島線の場合、駅間が比較的短いので閉塞信号機は場所によって二灯式信号機を設置している。(湘南深沢駅 2011年8月10日 筆者撮影)

 

 そして県道の深沢交差点近くを通過すると、再び上り勾配になる。鎌倉市はとにかく山が多いが、この湘南モノレールの沿線も例外ではない。そして大船駅からずっとモノレールと同じルートを走っていた市道とはここで別れ、宅地にもなっていない山の中へと入っていくと、すぐにトンネルに入っていく。

 ちょうどこのトンネルの辺りが鎌倉山と呼ばれる場所で、トンネルの上にはその頂上ともいうべき所になっている。そして、鎌倉山周辺は湘南モノレール沿線の中でも高級住宅街らしく、比較的広い敷地をもつ2階建ての戸建て住宅が建ち並んでいる。列車はその街並みの中に飛び込むようにトンネルから出ると、今度は地表が遠ざかっていき谷間のような地形の中を走る。再び市道がモノレールの軌条の下に現れると、左前方に西鎌倉駅が見えてくる。

 西鎌倉駅の周辺は地形が複雑で、市道もモノレールもきついS字形カーブを描くように走っている。そのちょうどS字の末端に西鎌倉駅があり、駅の周辺は住宅地の中にあるにもかかわらず、商業施設はなくドラッグストアが一軒と、スーパーが一軒、そして鎌倉警察署の駐在所がある程度だ。

 西鎌倉駅は上下列車がの交換ができる島式1面2線の駅で、早朝と深夜の時間帯を除いて、他の交換可能駅と同様に必ず列車の交換をする。筆者の乗った列車もここで上り列車と交換したが、大船駅で見送った列車が江ノ島駅で折り返してきた車両だった。

 西鎌倉駅を発車すると、再びカーブを通過して上り勾配を駆け上がっていく。市道もモノレールの下を一緒に走っていくが、この道路は湘南深沢駅周辺とは違い、交通量が意外と少ない。もっとも、1車線道路で、しかも起伏の激しい地形の中にあるが故に坂も多くそしてきついので、深沢交差点で他の道を選ぶドライバーが多い。筆者もこの道路を自動車で運転して通ったことがあるが、江ノ島周辺から大船方面へのショートカットはできるものの、険しい道のりでカーブも多いので運転操作が煩わしかったのを覚えている。もちろん、勤務先の事務所はこの道路沿いなので、避けて通ることはできなかったが。

 勾配を登り切ると、モノレールにしては珍しく地表近くを走り始める。もちろん、軌条を横断する道路や構造物がないという条件がなければ、懸垂式モノレールの構造上、地表近くを走ることはできないのだが、この辺りはその条件が揃っている。そして片瀬山駅へと滑り込む。

片瀬山駅は道路の真上ではなく、ごく普通の橋上駅舎が設けられ、地上と同じ高さの位置に設けられている。駅前に清涼飲料水を販売する自動販売機が設けられ、その横は道路がある。モノレールの軌道はここでは高さもなく、地上に近い場所に設けられているが、この場所が起伏が激しいことと、道路脇に用地が確保できたため、わざわざ空中を通す必要がないからだった。8月の初旬といえども夏至をすぎると午後の日差しはわずかに朱色を帯びてきている。(目白山下駅 2011年8月10日 筆者撮影)

 

 単式1面1線の片瀬山駅は、これといった特徴のない中間の一駅に過ぎない。だが、筆者はここで降りることにした。筆者以外には2人ほど降車したが、もともと乗っている乗客が1両に数人程度なので、まとまって降りるような駅でもない限りこの程度だろう。集札する車掌に乗車券を見せて駅を出ると、片瀬山駅の周辺も住宅地で、駅前には大船駅から続いている市道が通っている。そして、駅の入口に飲料の自動販売機が数台並んでいる以外なにもなく、あるのは戸建ての住宅だけと言った具合だ。

 道路を渡って片瀬山駅を眺めてみた。やはり、モノレールの駅というと高架の高い場所に在るものというイメージがついて回るが、この片瀬山駅に限って言えばそのイメージにはあてはまらない。筆者はこの特異な構造をもつ片瀬山駅を一度外から観察してみたくて、わざわざ列車を降りたのだ。

 

 

目白山下駅を発射する5000系下り列車。貸駐車場であろうその路面の位置と、モノレールの車両の位置が程同じであるため、軌道を除けばほかの普通鉄道のように地上を走っているものだと見紛うものがあった。(目白山下駅 2011年8月10日 筆者撮影

 

 駅の入口に置かれている自動販売機から、少し高い位置に鉄鋼で組まれた桁がみえるが、これはモノレールの軌条で、やはりこのような位置にモノレールの軌条が見られる例はあまりない。ちょうど上り列車が駅に滑り込んできたが、通り過ぎる車両だけを見ていると普通の鉄道とさほど変わらないのだが、やはり普通の鉄道にある車輪がレールの継ぎ目を通過する音もなく、ただモーターと風を切る音だけがするのは不自然だが、ここではこの「不自然な光景」が当たり前なのだ。

 

《次回へつづく》

 

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