旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

九州415系の終焉と世代交代 在りし日の415系Fm110編成から【3】

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《前回からのつづき》

 

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 関門トンネルは開業当初から直流1500V電化されていました。当時、山陽本線西明石までしか電化されておらず、蒸機が主役として列車を牽いていました。

 しかし、約3.6kmもの長さがあり、下り線で20パーミル、上り線では25パーミルという急勾配を抱え、しかもトンネルという密閉された状態に近い空間では、蒸機を運用することは吐き出される煤煙によって乗務員が窒息事故を起こす可能性が非常に高いなど不適でした。すでにこのことは鉄道省も認識していたので、建設当初から電化することにしていたのです。

 関門トンネルでの運用に充てられることになったEF10形は、門司機関区を基地として下関ー門司間を通過するすべての列車を牽くことになります。そのため、EF10形の寝蔵となる門司機関区や、そこに通じる門司駅構内も直流電化されたことで、九州で初めての電化区間となりました。

 山陽本線鹿児島本線を蒸機に牽かれて走ってきた列車は、旅客列車は下関と門司で、貨物列車は幡生操車場と門司操車場で機関車の付替えが行われていました。EF10形は短い距離であるものの、本州と九州を結ぶ重要な役割を担ったのです。

 第二次世界大戦が終わり、戦後の混乱や物資不足も落ち着いてくると、国鉄は石炭事情の悪化や煤煙などの煙害に悩まされる蒸機から、電機やディーゼル機への転換を進めていきます。

 

国鉄が初めて実用化した交直両用電気機関車は、関門区間を通過する専用機でであるEF30形だった。九州島内が交流電化されたことで、EF10形からその任を引き継ぐが、交流区間門司駅構内のわずかな距離だけを走ることを前提としていたため、直流区間では定格出力1800kWで最高速度85km/hであったのに対し、交流区間では出力が450kWと極端に低く、最高速度も35km/hと構内走行ができれる程度の限定的なものであった。一方でトンネル内に湧き出る海水による塩害体側は徹底され、車体は耐食性が高いステンレス鋼を使い、肉厚を薄くしたことで歪みが目立つため、コルゲート板を取り付けるなど外観上の大きな特徴だった。(EF30 20 碓氷峠鉄道文化むら 2017年7月8日 筆者撮影)

 

 電機への転換には電化工事が必須となりますが、輸送量が多く列車の運転本数が一定上の路線では直流1500Vによる電化が効率的でしたが、それに満たない地方幹線では工事費用のほうがかえって高くついてしまうのが難点でした。かといって、ディーゼル機や気動車で置き換えることは可能であったものの、燃料費が高くなることや、燃料である軽油を多く消費する割に出力が低いエンジンであることから、輸送効率が下がるだけでなくコストの増大が懸念されました。

 そこで、建設コストを可能な限り抑えることができる電化方式として、商用電源を使った交流電化が実用化されると、地方幹線はこれによって電化が進められることになりました。

 山陽本線はすでに西明石までと下関ー門司間が直流電化されていたので、そのまま直流電化によって工事が進められました。輸送量もそれなりに多く、列車の運転本数もあったことや、東海道本線から通して運航されてくる列車も数多く設定されていたので、直流電化によるメリットが大きかったといえます。

 ところが、九州島内は本州とは輸送量などの事情が大きく異なりました。輸送量が多いのは鹿児島本線の九州北部といったごく一部で、その他は輸送密度も比較的低く、列車の運行頻度も少なめでした。こうした路線を建設コストが高い直流電化にすることは、コストを掛けた割には効果が期待できないと考えられました。そのため、国鉄は九州島内は交流電化による電化を推進することにしたのです。

 ここで大きな問題が立ちはだかります。

 関門トンネルの開通とともに、門司駅構内や門司機関区、そして門司操車場の一部はすでに直流電化されていたことでした。九州島内は原則として交流にした場合、これらの既設区間をどうするかということでした。

 国鉄はこれらの既設区間はすべて交流電化へ転換をするとともに、門司駅構内にデッドセクションを設けた上で、関門トンネルに直通する列車を牽く電機も、直流機ではなく直流と交流の両方に対応した交直流機を新たにつくらなければなりません。

 そこで用意されたのは、国鉄初の量産交直流電機であるEF30形ですが、幡生操・下関ー門司・門司操に限定して運用することを前提としたため、交流区間では出力と定格速度が低いといった割り切った性能の車両でした。これでは、本州ー九州間を行き来する旅客列車は変わらず機関車が牽くことになるので、九州島内を電化したメリットも限られたものになってしまいます。

 

《次回へつづく》

 

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