《前回からのつづき》
213系の電装品は、当時の国鉄としては可能な限り新しい技術を投入しました。最も重要視されたのは、信頼性を確保しつつ効率性と省エネ性を追究することだったといえるでしょう。
制御方式は205系で確立された界磁添加励磁制御を採用しました。従来、国鉄の直流電車は抵抗制御を標準としていました。この制御方式は、抵抗器によって主電動機に流す電圧を制御することで、速度制御をしていました。
抵抗制御は抵抗器に電流を流すことによって、電気エネルギーは熱エネルギーに変換されて排出されてしまうため、効率のよいものではありません。加えて電車の性能が高くなるほど、主電動機の出力も高くなり、それに比例するように個々に流れる電流は大きくなります。

国鉄初の電機子チョッパ制御を採用した201系は、中央線快速や中央・総武緩行線、そして京阪神地区の東海道緩行線だけに投入された。抵抗制御とは異なり取り入れた電力を効率よく使うことができるとともに、回生ブレーキも装備していることで高い省エネ性能をもっていた。しかし、主制御器に使う半導体素子が高価であるため、製造コストも非常に高かった。そのため、すべての103系などを置き換えるには至らず、より廉価で省エネ性を保った車両の登場を待つことになった。(クハ201-11〔千ケヨ〕 蘇我 2010年11月14日 筆者撮影)
そのため、電圧を制御するための主抵抗器の容量も大きくせざるを得ず、このサイズも大きくなってしまうのです。その結果として、電圧を制御するために主抵抗器に流された電流は熱に変換されますが、その量は多くなるので電気の効率性はよいものとはいえませんでした。
ただし、抵抗制御にもメリットはありました。回路の構成は非常に簡単で、使われる部品も基本的にはスイッチと抵抗器だけで済むので、古くから使われ続けてきたので、実績と信頼性は非常に高いということでした。
回路が簡単で構成する部品も少ないということは、検修にかかる手間とコストも抑えることができるとともに、作業に携わる検修職員にとっても負担が少なく済むのでした。
しかし、1970年代に入って起こったオイルショックは、それまでのエネルギーに対する考え方を変えざるを得なくなりました。湯水のごとく使っていた電力は、その源となる石油が高騰したことに連動して高くなりました。また、石油の供給が途絶えることによって、発電が止まってしまうのではないかと危惧されました。
こうした社会の情勢が変化したことにより、国鉄はそれまでのような効率性を無視した抵抗制御を使い続けることを許さなくなりました。そして、省エネ性を重要視するようになり、加速時には効率的に電気を使うことができ、減速時には回生ブレーキによって架線に電流を戻すことで運動エネルギーを友好的に使うことができる電機子チョッパ制御を採用した201系を開発しました。
この省エネ性が高い夢のような制御方式である電機子チョッパ制御は、電気を効率的に使うことを可能にし使われる電力量も少なく済む反面、製造コストが非常に高いという欠点を抱えていました。これは、チョッパ制御の回路に使われる半導体素子が高価であることが最大の要因であり、製造コストを押し上げていたのでした。
このような高価な制御方式を大量に導入できたのは、地下鉄線内でトンネルの温度上昇とコスト削減に悩んだ帝都高速度交通営団(営団地下鉄、現在の東京メトロ)ぐらいで、巨額の財政赤字に苦しんでいた国鉄にとっては大きな負担であり、中央線快速と中央・総武緩行線、京阪神の東海道緩行線、そして車体をアルミニウム合金とした地下鉄線内仕様の203系が運用された常磐緩行線に留まりました。

界磁添加励磁制御とオールステンレス車の組み合わせは、通勤形電車だけでなく近郊形電車にも波及した。211系は113系と同じく3ドア・セミクロスシートの0番台と1000番台、ロングシート仕様とした2000番台と3000番台が製造された。従来の113系と115系の両方を統合し、より合理的な運用を目指したものの、登場下の1986年と国鉄の分割民営化まで時間がなく、国鉄時代は東海道本線東京口と名古屋口の配置だけに終わり、民営化後、JR東日本は高崎線系統で運用する1000番台・3000番台を、JR東海は自社仕様に変更した5000・6000番代の増備を続け、民営化直後の両者のローカル輸送の改善を果たすことになった。(クハ211−2〔東チタ〕 川崎 2011年5月4日 筆者撮影)
とはいえ、電力使用量を減らすことをはじめとした運用コストを抑えることは、国鉄にとって喫緊の課題でした。大手私鉄の多くが採用した界磁チョッパ制御は、回生ブレーキを使うことができるものの、主電動機は保守が煩雑で直巻電動機よりも高価な複巻電動機を使う必要があるため、労使関係が極端にまで悪化した国鉄がこれを採用することは難しく、したとしても労働組合から「労働強化だ」として、難しい労使交渉や争議に発展することは十分に考えられたでしょう。そして、大量に導入しなければならない国鉄にとって、電機子チョッパ制御よりも安価とはいえ、コストが高い複巻電動機を使う界磁チョッパ制御の導入は躊躇するものでした。
そこで、実績があり信頼性の高い従来からの抵抗制御を基本としつつ、これに界磁調整器を付加回路として追加し、加速時の電圧連続制御を諦めて回生ブレーキを使えることで省エネ性をねらうことにした界磁添加励磁制御が開発されました。
《次回へつづく》
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