《前回からのつづき》
213系には主制御器として、1M方式に対応した電動カム軸式のCS59形を実装しました。この主制御器は211系が実装しているCS57形を基本にしたものですが、213系は勾配がほとんどない平坦な瀬戸大橋線で運用することを前提としていたことや、軽量なオールステンレス車であること、3両編成という短い編成を組むことを想定していたことから、従来の国鉄形電車のようなMM’ユニットによる電動車2両でなく、編成中に電動車は1両でも十分な加速性能を確保できるとともに、ほとんど破綻したに等しい厳しい財政事情の中で製造コストを可能な限り抑える方針から、1M方式を採用することにしたので、新たな主制御器が開発されました。
主制御器であるCS59形を実装したのみでは、従来とは変わらない抵抗制御の電車になってしまいます。これにHS65形励磁装置を追加することで、回生ブレーキを使うことを可能にする界磁添加励磁制御となります。このHS65形は、弱め界磁と回生ブレーキを使うときに励磁制御をするための回路装置であり、これがあることで界磁添加励磁制御を実現するのです。
主電動機もまた、1M方式に対応したMT64形を搭載しました。211系ではMM’ユニットを組む電動車にはMT61形を搭載し、どちらも出力は120kWを出すことができますが、MT61形の端子電圧が375Vであるのに対し、MT64形は750Vと2倍の高さとされました。
この違いは、MM’ユニットを組む211系では2両1組になるため、床下には多くの電装品をぎ装できるスペースがあります。そのため、主抵抗器も多く搭載で生きるので、主電動機に流す電圧を抑えることが可能です。主電動機に印可する電圧は高いほど回転が上がりますが、低くするほど回転は緩やかになる分だけトルク力を得ることができます。長大編成を組むことが前提の211系では編成重量は重くなるので、端子電圧の低いMT61形の方がトルク力を得ることができるのです。

軽量オールステンレス車体にFRP整形の前面は211系の構造と同じだが、側面の扉と窓割りは大きく異なっている。車内は転換クロスシートを備え眺望にも配慮したため、側窓は1段下降式の2枚連続とされた。また、乗務員室のすぐ後ろにも座席を配置したことから、前面眺望にも配慮したことにより、前面窓の助士席側は下方向に大きく広げられた。国鉄時代、乗務員室と客室の仕切りにある窓は常にカーテンが下ろされていて、前面を眺めることがほとんどできなかった。これは、乗務員が「客室の照明が窓に反射して視界を妨げるから危険である」という理由でカーテンを降ろしていたが、その実態は乗客から見られることを嫌い、中には乗務中に飲食や喫煙などをする者もいたいうから、このような設計と施策は大きな転換だったといえる。(クモハ213−2〔岡オカ〕 岡山 2017年5月27日 筆者撮影)
一方、213系は電動車は1両で必用な電装品をすべてぎ装しなければなりません。主制御器はもちろんのことですが、サービス用電源や空気圧縮機といった補機類も可能な限り1両に載せる必要があります。そのため、主抵抗器は自ずと小さくせざるを得ず、容量は211系と比べて小さくなってしまいます。主抵抗器の容量が小さくなると主電動機に印加する電圧は高くなってしまうので、これに対応した主電動機を使わなければならないのです。
もっとも、105系や123系のように主電動機を直列接続する方法もありました。この方法であれば、主電動機はMT64形のような端子電圧750Vのものではなく、従来の375Vのものでも対応できます。しかし、この回路構成では主電動機の直並列組み合わせ制御をすることができなくなるため、速度性能を犠牲にしなければならないのです。
213系は電動車1両単位で運用するため、前述の通り補機類も搭載する必要がありました。空気圧縮機は従来と同じ物を装備していましたが、サービス用電源は電動発電機ではなく、より小型で軽量な静止形インバータ(SIV)を採用しました。大手私鉄の電車などでは一般的なものでしたが、国鉄では伝統的に電動発電機が使われていた中で、213系は床下スペースが狭いことから、初めてこれを装備したのです。
実はこのCS59方とMT64型の組み合わせによる1M方式は、213系のために開発されたものではなく、211系のためのものでした。211系は電動車2両1ユニットを基本としていましたが、性能が向上したことで従来の113系のようなMT比では経済性に劣るとされました。
《次回へつづく》
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