旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産 瀬戸内を渡るためにつくられた国鉄最後の新系列・213系【7】

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《前回からのつづき》

 

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 211系は東海道本線だけではなく、横須賀・総武快速線にも投入することを想定していて、特に品川ー錦糸町間の地下区間では高い走行性能を確保する必要があったものの、113系と同じMT比ほどは必要とせず、その比率を細く設定できるおうにするために1M車が必要とされ、編成中にユニット車と1M車を組み合わせることで、必要な走行性能を確保しながら効率よい運用を可能にしようとしたのでした。

 しかし、実際には211系の増備と配置は東海道本線と高崎・上越線にとどまり、113系や115系をすべて置き換えるには至りませんでした。その結果、横須賀・総武快速線に211系が配置されることはなく、この1M車のために開発した技術はより短編成での運用を想定した213系に活用されたのでした。

 台車はこの時期に新製されていた車両の標準ともいえる、DT50系が装着されました。DT50系は国鉄初の軽量ボルスタレス構造で、205系以降のほとんどの国鉄形車両に採用されたもので、国鉄最後の傑作台車といえるほど多くの車両が装着しました。

 

DT50系は国鉄初の軽量ボルスタレス構造の台車として、205系に採用されたのを皮切りに、以後、製造される国鉄電車の多くに装着された。ボルスタアンカーがなくなったことで、構造が簡単になり整備性も向上した。また、従来のコイルばねを使ったDT21系などと比べて乗り心地の面でも大幅に改善し、国鉄の通勤形電車としては特急形を凌ぐものとなった。211系や213系にも装着されたほか、民営化後も旅客会社各社で開発・新製された車両にも使われ、さらに発展・改良されたものもあり、いわば国鉄・JRにおける新しい標準形式といえる台車になり、整備性だけでなく部品の共通化などによって運用コストも抑えることにつながった。213系にはDT50B・TR235B形が装着されている。(DT50B形 岡山 2017年5月27日 筆者撮影)

 

 この台車は枕ばねにダイヤフラム式の空気ばねとし、ボルスタアンカーを省略して直接空気ばねを台枠に接続したボルスタレス構造でした。ボルスタアンカーをなくすことで、台車を構成する部品点数は大幅に少なくなるので、台車自体の重量も軽減できます。また、台車枠はストレート方にしたプレス鋼板製で、この形状は製造時の工作数を少なくするだけでなく、比較的単純な作りになるため台車全体の部品の数を減らすことにつながります。そして、そのことは検修の手間を減らすことにもつながり、全体としてのコストダウンにもなるのです。

 軸箱支持は、従来の国鉄形電車に多く用いられたウィングバネ・ペデスタル式ではなく、形状軸ばねも円錐積層ゴム式としました。軸受は密封ころ軸としたことで、走行性能を向上させています。

 このように、DT50系台車は構造を簡素にして部品点数を少なくし、整備性を向上させつつ製造コストを抑えるとともに、台車の重量を軽くするなどしながら従来のコイルばねを使った国鉄標準型ともいえるDT21系はもちろんのこと、インダイレクトマウント空気ばね式のDT33系と比べて大幅な乗り心地の向上を実現させています。

 

オールステンレス車体とボルスタレス台車の採用の嚆矢となったのは、山手線などに投入された205系だった。ステンレス鋼は耐食性に優れていたため普通鋼では必須だった塗装を省略し、同時に車体の軽量化を実現した。また、ボルスタレス台車は台車自体の軽量化と構造の簡素化をすることを可能にした。これ以後、国鉄はこの組み合わせによる車両を増備し、運用コストの軽減を図り採算性の向上を狙ったが、既に時を逸していたといっても過言ではなく、結局は国鉄再建法の成立により分割民営化は避けられなかった。(品川を発車して外回り線を行く205系トウ55編成〔東トウ〕 品川 2004年8月27日 筆者撮影)

 

 213系が装着したのは、このDT50系の中で電動車がDT50B形を、付随車はTR235B形を装着しました。これらの形式の台車は211系と共通のものであり、可能な限り共通化することで製造コストを抑えようとした国鉄の苦心が伺われます。

 213系が登場した1987年は、普通列車など一般の列車に充てられる車両にも冷房装置を装備するのが当たり前になってきている時代でした。そのため、新製時から冷房装置を装備していましたが、211系が冷凍能力45,000kcal/hのAU75形集中式冷房装置出会ったのに対し、213系ではこれよりも冷房能力が低い33,000kcal/hのAU79形を装備しました。

 これは、211系が3ドア車でドアが開いたときに、車内と車外の空気の入れ替えが大きく、せっかく温度を下げたのが駅に停車するたびに外気が入り込んでしまいことで、再び冷やすためには強力な冷房能力を持った装置が必要だと考えられたからです。

 AU75形は国鉄の通勤形電車や近郊形電車に使う冷房装置として標準的なものとされ、新製時はもちろんのこと、非冷房車を冷房化改造するときにもこのAU75形を搭載するのが当たり前でした。全国で数多くの車両を運用する国鉄としては機器の標準化は欠かせないものであり、その能力や実績からも標準型として信頼された装置でったといえます。

 しかし、213系ではこのAU75形を装備することはなく、代わりにAU79形を装備しました。これは、213系が2ドア車であり、211系よりもドアを開けたときに車内外の空気の入れ替えがそれほど多くないとされ、AU75形ほどの冷房装置は必要がないと判断されたからでした。こうした点でも、国鉄は可能な限り製造コストを軽減する努力がなされたといえるでしょう。

 このように、211系を基本としつつも運用を想定していた瀬戸大橋線の輸送実態に合わせ、近郊形電車としては破格の接客設備をもった213系は、可能な限り製造コストを抑えながら、実際の運用に就いたときにも電力使用量を軽減するなど、運用コストにも配慮した213系は、奇数向きとなる制御電動車としてクモハ213形(Mc)、付随車となるサハ213形(T)、そして偶数向きとなる制御車となるクハ212形(T'c)の3形式が起こされ、Mc+T+T'cの3両編成8本、合計24両が製造されました。

 

《次回へつづく》

 

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