旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産 瀬戸内を渡るためにつくられた国鉄最後の新系列・213系【8】

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《前回からのつづき》

 

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 1987年に登場した213系は、24両全車が岡山電車区に配置されて、宇野線での運用に就きました。宇野線は、翌年に瀬戸大橋が開通すると、瀬戸大橋線の一部を構成するためいわば先行運用という性格を帯びたものでした。

 宇野線では主に「備讃ライナー」という愛称をつけた快速列車の運用に充てられます。この「備讃ライナー」では3両編成単独の運用ではなく、3両編成3本をつなげた9両編成での運転されていました。

 この「備讃ライナー」での運用は、213系のハンドルを握る岡山電車区の運転士の習熟も兼ねていたと考えられます。それまで岡山電車区に配置されていた車両は、113系や115形といった抵抗制御を用いた発電ブレーキを装備した車両ばかりで、界磁添加励磁制御で回生ブレーキを装備した車両の運転は皆無でした。

 発電ブレーキと回生ブレーキはどちらも主電動機を発電機として使い、負荷の容量に応じて主電動機にかかる抵抗力をブレーキとする原理は同じですが、発電ブレーキは主抵抗器を負荷として使うために、比較的安定した制動力を得ることができます。一方、回生ブレーキは主電動機で発電した電力を集電装置を通して架線に戻すため、負荷は同じ路線を運行する電車か変電所に設置された吸収装置になります。

 そのため、発電ブレーキとは異なり一定の速度以下では回生ブレーキが効かなくなる「回生失効」というのがあり、その速度は発電ブレーキと比べて高いため、運転士のブレーキ操作にも違いがあり、長年発電ブレーキに慣れた運転士にとっては不慣れで戸惑ったという記録もあります。

 1987年から運転が始められた213系は、瀬戸大橋線の開通までの間は地域輸送に携わりました。そして、この年の3月をもって国鉄は分割民営化され、4月からはこれによって新たに発足したJR西日本に全車が継承され、引き続き宇野線で運用されました。

 1988年になると、いよいよ待望の瀬戸大橋線が開通することになります。1955年に多くの犠牲者、特に小中学生という幼い子どもたちの命が失われた紫雲丸事故から実に33年の月日を経て、本州と四国の間は船舶ではなく鉄道と道路によって結ぶ瀬戸大橋が完成、開通することになります。

 本来、瀬戸大橋を含む瀬戸大橋線での運用を前提とし、国鉄が厳しい財政事情の中で製造した213系にとって、いよいよ本来の役割を果たす時が来たのです。

 ところが、213系を継承したJR西日本は瀬戸大橋線の開通に際して、車両運用の方針を変更しました。

 

瀬戸大橋線の開通によって運行されることになった快速「マリンライナー」には、国鉄時代に想定されなかったグリーン車を連結することになった。JR西日本は全長12,300mにも及ぶ巨大な橋によって、瀬戸内海を渡るという世界でも類を見ない橋の性格を活かして、観光客の需要を取り込む観光路線としての性格をもたせた。その目玉として、眺望を配慮した車両としてクロ212形を投入することになったが、その設計の基本としたのが381系などに導入されたクロ381形などであった。基本設計を流用したことにより、全面は大型の前面窓をそなえて客席から前方の展望を向上させた。(出展:写真AC)

 

 「備讃ライナー」として運転されてきた快速列車は、瀬戸大橋線の開通とともに「マリンライナー」に名を変えて本州と四国を結ぶ快速列車として運転されることになります。基本的には213系を運用に充てることに変わりはなかったのですが、これに乗客の眺望を最大限に配慮した構造で、全席をグリーン車とした「パノラマグリーン車」とした車両を連結することにしたのです。言い換えれば、国鉄は限られた予算の中で瀬戸大橋線の車両として213系をつくり、そこでは単に本州ー四国間の連絡輸送のみを考慮していたのを、JR西日本はその立地を活かして車両そのものを商品化しながら観光路線という性格をもたせようと考えたのでした。

 こうしたコンセプトのもと、「パノラマグリーン車」として1988年に増備されたのが、グリーン制御車(Tsc)であるクロ212形でした。普通列車にグリーン券を必要とする特別車両のグリーン車の連結は、1988年の時点で東海道本線東京口と横須賀・総武快速線だけであり、西日本ではかつて東海道本線大阪近郊で連結されていたものの、需要の低下によって連結されなくなった歴史から、久しぶりに首都圏以外でのグリーン車の連結となりました。

 

《次回へつづく》

 

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