旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

【鉄路探訪記】気動車王国・千葉の名残を残す房総・城下町の鉄道 〜房総半島を走る小さな鉄路:久留里線がつなぐ歴史と自然の旅〜【7】

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久留里線の終着・上総亀山へ:タブレット閉塞と房総山地を行くキハ30の旅

《前回からのつづき》

 

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 列車は久留里駅で最後の閉塞へ入るべくタブレットを交換すると、ドアエンジンが作動する空気音とともに側扉が閉まり、再びエンジン音を唸らせながらホームから滑り出して、上り勾配に挑んでいく。

 もっとも、「挑む」と表現はしているが、エンジン音に比べて苦しい走り方をしているかと言えばそうでもなく、かといって軽快で軽々と上っていくかと言えばそうでもない。ちょうどその間ぐらいで、苦もなく楽でもなくといった案配だ。このあたりは、搭載されているエンジンが旧式で170PSという出力しかもたないDMF17系列から、直噴式で出力もあるDMF14系列に換装されている効果だろう。

 車窓から見える景色も、久留里駅を過ぎたあたりからこれまでの薄茶色で休耕中の田畑が広がる農業地帯から、いよいよ山間部へと入ってきたことを知らせるかのように、常緑樹の濃い緑と落葉樹の枝だけになった木々へと移り変わってきた。そして、時折見える小櫃川は久留里線をつかず離れずといった具合に沿って流れる川で、こちらもやはり冬景色でどことなく物寂しい感じがした。

 

▲冬の朝日を浴びた上総亀山駅は、訪れた当時はまだ「有人駅」であった。駅舎は小さく閑散としているが、かえってそうした雰囲気が房総の山奥にある終着駅らしく感じた。国鉄気動車一般色を身に纏うキハ30形もまた、そうした終着駅によく似合う。(上総亀山駅 2012年1月5日 筆者撮影)

 

 それがもっとも顕著になるのは平山駅を過ぎたあたりからで、いよいよもって人家も見えず田畑もぽつぽつとしか見えなくなり、はたして鉄道利用の需要があるのかとさえ思えるような光景になってきた。

 右に左にカーブを繰り返しながら上り勾配を進んでいくと、上総松丘駅に到着する。単式1面1線のホームには人の姿はなく、降車客もいなかった。もっとも、ここまで来ると列車に乗っている乗客といえば、筆者を含めて数人程度しかなく、しかもそのほとんどは久留里線に「乗りに来た」とおぼしき人だけになっていた。

 上総松丘駅を出て左カーブを通過する頃には、車窓はすっかり木々の生い茂る山の中になっていた。そしてこれまでなかったトンネルもあり、最初は国道410号線をアンダーパスするために、道路部分が盛り土になっている小さなものだったが、次に右カーブを通過し終えると長いトンネルへと入り、ディーゼルエンジンの唸りがトンネルの中で響いて、その音は車内にも聞こえてくる。

久留里を発車すると、執着の上総亀山に向かって房総丘陵を登っていくことになる。勾配は厳しくなり、周囲は木々が生い茂り人家の姿はほとんどなくなる。乗車している人も極端に少なくなり、このとき乗っているのは筆者を含めて数人にも満たなかった。そして、地域に住んでいる人らしき姿はほとんどなく、利用率が思わしくなかった。(2012年1月5日 筆者撮影)

 

 トンネルを通過すると、線路沿いには再び田畑が見えてくるが、それも線路近くにあるだけで、その奥には人の手が入ることを拒むかのように、房総丘陵の山が迫っている。そして、この田畑で農業を営んでいるであろう人の住む人家がぽつぽつと見えてくると、久留里駅からずっと続いてきた上り勾配も終わり、終着である上総亀山駅に到着した。

 木更津駅から乗ってきた列車からは、筆者を含めて数人が降りていくが、駅の改札を出て別の場所へと向かった人は1人か2人で、あとは折り返し木更津行きとなる列車が発車するまでの間、今や貴重となり、その余命も幾ばくもないキハ30形気動車にカメラのレンズを向けたり、山の上にある小さな終着駅の様子を観察して楽しむ人たちだけになった。

 

数坂前山に到着して列車は、ここで折り返しのひとときを過ごす。見ての通り駅の周りは山々が取り囲み、山間の小さな駅といった様相だ。到着したとき、ホームで列車を待つ人の姿はほとんどなく、十数分後に発車するときも車内には2、3人程度しかいなかった。この場所で、列車が折り返すのもあと僅かとなってしまった。(上総亀山 2012年1月5日 筆者撮影)

 

 駅からは駅員がホームに立って列車の到着を出迎え、運転士からキャリアに入ったタブレットを受け取ると、すぐさま駅舎へと引き返していく姿が見えた。列車の到着を久留里駅へ連絡する手続きをしに戻ったのだろう。通票閉塞方式に限らずでは、こうした一つ一つの作業が列車の安全運行を支えていることは間違いない。

 

《次回へつづく》

 

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