久留里線沿線の再発見:久留里城・亀山湖・房総の自然を歩く追補記
《前回からのつづき》
さて、久留里線の名称のもととなった久留里藩、その藩庁が置かれた久留里城は、この地域を訪れたなら立ち寄ることをお薦めしたいスポットである。というのも、さほど高くない山城なので気軽に登ることができる。その天守がある本丸からの眺めは、房総にある自然を堪能するには十分すぎるほどで、しかも都心部にはない静かで穏やかな時間が流れている。仕事に、生活に疲れたならこうした自然の中でリフレッシュするのもいいだろう。

▲終着駅である上総亀山駅へと向かう線路は、房総半島の山中へと入っていく。運転台の窓越しに見ると、勾配のきつさなど狭隘な中を走って行く様子が窺いしれる。線路の向こうには常緑樹の木々が、線路際には枯れて薄茶色の野草が見えるが、春になれば青々とした緑に囲まれていく。(2012年1月5日 筆者撮影)
もう少し自然の中で癒やすなら、山林歩道を歩くことをお薦めする。しっかりと整備された遊歩道であるが、本丸付近から山中を歩いて駐車場付近まで行くことができる。筆者も山歩きするつもりはなかったので、まったくそうした装備など持っていなかったが、1kmほどしかなく勾配もきつくないのでちょっとだけハイキングという感じだった。手軽に自然の中に抱かれるにはうってつけのポイントだといえる。
さて、久留里線の終着駅である上総亀山駅の周辺についても話しておこうと思う。久留里線で訪れた時は、上総亀山駅の周辺には何もないと本稿でも紹介したが、実際には駅前などごく近いところには目立つような施設や建物などはなかった。
ところが、2014年に自動車で付近を行くと、なんと駅から僅か数百メートル先には、小櫃川をせき止めてつくられたダム湖・亀山湖があり、しかも湖の畔には温泉まであったのには驚かされた。亀山湖を造る亀山ダムは、千葉県内にある数少ない上水道用の水源として機能し、同時に小櫃川の河川水量維持や農地防災などの多目的に活用されている。そして、その亀山湖の畔にある亀山温泉は、名だたる温泉街の雰囲気とはほど遠い、小さな温泉宿が二軒しかないところだが、非常に静かな中にあるので日常の喧噪を忘れてのんびりと寛ぐにはいいかもしれない。夏季であれば湖畔のキャンプ場でアウトドアを楽しむのもいいだろう。とにかく、駅から徒歩10分程度の先に温泉や湖があるとは、久留里線を訪れた時には知らず、この機会に訪れて新たな発見したことには驚くほかなかった。

久留里線の線路沿いには、このような田畑が広がっている。訪れた1月は休耕中で何もないが、夏になれば水を蓄えて緑豊かな水田になるだろう。千葉県は関東でも有数の米の産地で、オリジナルのブランド米もあるほどだ。田圃のあぜ道らしき道は、小高い丘の麓にある民家へと続いている、。そして、線路を横切る第4種踏切が数多く存在した。手前に写り込んでいるのは、そのことを示す標識だろう。(2012年1月5日 筆者撮影)
新たな発見といえば、久留里線が走る沿線の光景もそうである。久留里駅から木更津方は水田が多いが、上総亀山方は山間部であることは本稿でも紹介したと思う。しかし、自動車で並走する国道410号線を走りながら横目で久留里線を俯瞰していくと、列車の車窓からは分からないことに気づいた。
それは、久留里線が緑が豊富な自然の中を行く鉄道であるということだった。列車の中からだと確かに木々が鬱蒼と生い茂る中を走破するイメージだが、列車の外から俯瞰すると見事な緑の中を通っている、豊かな景色に感じられた。これもまた、都心部の鉄道にはない光景だろう。
とにもかくにも、あらためて訪れることによって再発見あり、新たな気付きありと、楽しみは次々と湧いてくる。それは、久留里線に限らずどこを訪れても同じであると思う。しかし、今回、久留里線沿線を訪れたことで、そうした再発見ができるということを筆者は学んだと思う。

久留里城趾の本丸から望んだ久留里の町並み。城山の麓にはいくつかの民家が集まった集落を形成しているが、やはり農地が多い。房総半島の山々に囲まれたこの地は、室町時代に城が築かれ、その後、江戸時代には久留里藩が置かれ藩庁としての役割ももった頃から城下町として栄えたという。いまでこそ農村地帯の様相を呈しているが、かつてはここが中心地であり栄えたのであろう。(©English: Abasaa日本語: あばさー, Public domain, via Wikimedia Commons)
上総国里見氏が興し、江戸時代は久留里藩として栄えた古の街、そこを通る鉄道は首都圏では少なくなった大自然の中を走っている。その古き良きものや、豊富な自然がいつまでも残され地元の人々はもちろん、訪れる人々にとって癒やしてくれる存在であってほしいと願いながら、追補の筆を置く。
《次回へつづく》
あわせてお読みいただきたい