旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

【今週の1枚】 クハ721-3018〔札サウ〕

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クハ721-3018〔札サウ〕 札幌 2006年8月6日 筆者撮影

 

北の大地、北海道の冬は本州以南に住む人には想像がつかないほど過酷だといえます。筆者も真冬に北海道・小樽に行ったことがありますが、日本海から吹き付ける強い風は想像以上に冷たく、寒いを通り越して痛かったの思い起こします。それほど気温は低く、人々の生活に大きな影響を与えいるといえます。

冬季は日中でも気温が零度近く、厳しいときには氷点下になることもあるそうです。そんな中を降る雪は、本州のものと比べて湿り気が少ない粉雪であるため、列車が高速で走ると、線路に降り積もった雪を煙のように舞い上げてしまいます。この捲き上げた雪が車両についてしまうと、機械的な動作部に入り込んで動作不良を起こしたり、一度溶けて水になったものが、再び低い気温にさらされたことで凍結してしまうこともあるため、徹底した耐寒耐雪装備をもつ独特の車両が投入されてきました。

721系は、国鉄が分割民営化して設立されたJR北海道が、札幌都市圏区間用として初めて新製した交流近郊型電車です。国鉄から継承した711系が主力として使われていましたが、これだけでは数が足らないため、50系51形客車も都市圏輸送に充てられていました。しかし、機関車が牽く客車列車は終着駅での折り返しに機回し作業が必要なことや、機関車が牽く特性から加速力が弱く、列車の高速化をねらったダイヤ編成をするうえでネックとなっていたことから、これを置き換えるために新たに設計・製造されたのが721系電車でした。


 クハ721形3000番台は、721系の第2−4次車を130km/hに対応した高速化改造によって登場した区分です。もともとは0番台として製造され、写真のクハ721−3018は1991年に川崎重工で落成したクハ712−18を、快速「エアポート」の高速化をするにあたって2001年に改造されました。改造によって3000番台という新たな区分が起こされ、高速化改造車は原番号+3000の改番をされています。

 前面は北海道用特急形気動車であるキハ183形500番台を基にしたデザインで、前面窓上部にポリカーボネート板に収められた前部標識灯を左右1個づつ、さらに窓下にも丸型の前部標識灯をそれぞれ1個づつ、合計で4灯の前部標識灯を設けた北海道独自の仕様となりました。3両編成を基本とするため、前面は貫通構造とすることで分割併合時に、車内の通り抜けを可能にしています。

 側面は乗降用扉が3か所、車内は転換クロスシートを備えた近郊形電車ですが、冬季の厳しい寒さの中で運用することを前提としていたため、扉は幅1000mmの片開き戸、乗降用扉の部分は全てデッキ付きとして、客室内へ冷気が入り込むことにより暖房効果が失われないように配慮されています。

 台車は国鉄DT50系を改良したN-TR721形を装着しています。ボルスタレス式空気ばね台車で、軸箱支持は円錐積層ゴムを使ったものですが、高速で走行することを前提としていたためヨーダンパを取り付けることで蛇行動を抑える構造になっています。また、降雪が多い北海道で運用するため、ブレーキ装置は鋳鉄制輪子を使った両抱き式踏面ブレーキを使い、耐雪ブレーキの機能ももっています。

車体は北海道向け車両としては初めてのステンレス製で、アクセントとしてJR北海道のコーポレートからである萌黄色の帯を、窓下と幕板部に巻かれました。

2001年の改造以来、函館本線・小樽−旭川間や千歳線、室蘭本線の電化区間などを中心に運用され、新千歳空港への連絡列車である快速「エアポート」の運用では、130km/hの高速運転もされました。

 2012年の札沼線電化で運用範囲が広げられた一方、後継となる733系の増備によって快速「エアポート」の運用も減少したと考えられます。しかし、札幌都市圏の輸送では重要な戦力の一つであり、普通列車の運用にも就いて、2026年現在も多くの人を運び続けています。

 

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