お詫び
2026年4月18日に投稿した記事について、内容が前後しているという誤りがありました。この記事について、順序を訂正した上で再度投稿させていただくことといたしました。ご迷惑をおかけしたことお詫びするとともに訂正させていただきます。
10.東海道新幹線開業が揺さぶった伊豆直通準急:1961〜64年の激変と直通需要の強さ
この記事をまとめると
1961年の伊豆急開業で東京〜下田直通体系が成立し、「伊豆」「おくいず」「あまぎ」が伊豆観光の主役となった。1964年の東海道新幹線開業で国鉄は乗り換え利用を促し準急削減を狙ったが、熱海・三島での乗り換え負担や料金面から直通列車の需要は依然強く、伊豆方面は直通優等列車が生き残る特異な地域となった。
《前回からのつづき》
1961年に伊豆急行が開業し、それまで伊東止まりだった列車が伊豆急下田まで乗り入れるようになって、今日の踊り子につながる運転形態がこの時点でほぼできたといえます。そして、この乗り入れには「伊豆」1往復と「おくいず」が充てられましたが、列車種別は準急のままでした。
1963年になると、それまで準急列車としては破格の設備をもった157系で運転されていた「湘南日光」が、本来の準急用でもある153系に置き換えられてしまい、伊豆から157系の姿が消えることになりました。もっとも、この期間はごく僅かで、後に再び湘南と伊豆東海岸にクリーム色と赤帯の列車が走ることになります。
「湘南日光」が本来の準急列車としての体裁を整えるかのように153系に置き換えられた一方で、それまで土休日運転の列車だった「おくいず」が定期列車に格上げされました。そして、東京ー伊東・修善寺間で運転されていた「あまぎ」は、この年の12月から伊豆急下田まで延長され、後年の特急列車につながる運転形態が完成したといえるものになりました。
毎年のように列車の増発や新線の開業による延伸、さらに新型車両の投入による置き換えなど目まぐるしく動いていた東京ー伊豆方面の各列車でしたが、1964年になると激震が走ったといっても過言ではない変化が訪れました。
東海道新幹線の開業は、東海道本線を走っていた優等列車に大きな影響を与えます。特に東京ー名古屋・大阪間を結んでいた昼行の優等列車は軒並み統合や廃止に追い込まれ、伝統の名を冠した列車ですら容赦なく姿を消すか、他の区間を走る列車に転用されるなどしました。
登場時は「ビジネス特急」などと称され、動力分散式の電車にも長距離優等列車を運行する任が務まると証明した151系「こだま」は、列車の愛称はそのまま東海道新幹線の列車に移されるかたちで存続しますが、伝統の特急列車である「つばめ」と「はと」はこれをもって姿を消してしまいました。これらの列車に充てられていた151系は、東海道本線の特急運用をすべて終了し、事故によって廃車になったクロ151−7を除くすべての車両が、新製以来ねぐらとしてきた田町電車区から京都の向日町運転所に配置転換とされ、山陽本線の長距離特急列車に転用されていきます。
東海道本線の長距離特急列車が軒並み廃止になった一方で、伊豆方面の列車にも動きがありました。東海道新幹線は東京ー大阪間をそれまでにない短時間で結びましたが、同様のことは東海道本線の主要駅にもいえました。
東伊豆の玄関口である熱海には、新幹線の「こだま」を利用することで58分でたどり着くことができるようになります。西伊豆の玄関口となる三島にも新幹線の駅が設けられ、従来の在来線準急列車よりも短い時間で行くことを可能にしました。
国鉄としては、これら伊豆方面を訪れる人々に新幹線を利用してもらいたいという意図があったといえます。そうすれば、在来線に準急列車を走らせる必要性は薄れ、列車の統廃合を実施して、伊豆方面へは熱海から伊東・伊豆急下田方面へ向かう列車を運転すれば済み、より合理的な列車の運行を可能にすると考えられたでしょう。そして、安価な準急料金を払えば乗ることができる列車よりも、新幹線に移転してもらったほうがより高額な新幹線特急料金を収受でき、国鉄の増収にもつなげることが可能だからです。

東海道新幹線の開業は、東海道本線の優等列車にとって激震ともいえるほど大きな変化をもたらした。151系で運転されていた「こだま」は、東京ー大阪間を6時間50分で結ぶという、従来の客車列車と比べて驚異的な早さで運転されていた。しかし、東海道新幹線が開業すると「こだま」は新幹線の列車へ移行し、151系は東海道本線を追われる形で山陽本線へ転じていく。在来線の優等列車の多くを廃し、利用者の新幹線への移転をすることで増収を企てたものの、中・短距離を利用する人たちにとっては実質的な料金の値上げに他ならず、加えて在来線などへの乗り換えが必要になるなど、必ずしもよい面ばかりではなかったといえる。(出典:写真AC)
しかし、実際には国鉄が意図したような方向へ向かうことはありませんでした。
そもそも新幹線を利用することは、利用客たちの負担が大きくなってしまいます。できれば安い金額で済めばそれに越したことはなく、出費を抑えたいというのは今も昔も同じ消費者の心理です。
加えて新幹線は早く熱海や三島に着くことはできますが、そこで在来線の列車に乗り換える必要があります。また、乗り換えをしたとしても、熱海から先となる伊東線や伊豆急行線に乗る列車が普通列車では目的とする駅まで時間がかかり、せっかく早く熱海に着いたとしても、長い時間列車に揺られてしまえば新幹線の効果は薄れてしまうからです。
三島での乗り換えも同じことが言えるでしょう。三島から修善寺までは国鉄ではなく伊豆箱根鉄道の列車に乗ることになりますが、東伊豆と比べれば距離は短いとはいえ、乗り換えの手間は同じです。列車の接続が悪いと、三島のホームで乗り換えのための時間は伸びてしまい、やはり新幹線の効果を打ち消してしまうといえます。また、重い荷物をもっての乗り換えは労力が必要で、とても快適な旅とは言い難くなってしまいます。
結局、新幹線を利用するメリットは、少しでも早く行くことができるというだけで、東京から直通する列車と比べると負担のほうが大きいといえるのです。
《次回へつづく》
あわせてお読みいただきたい