旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産:キハ38形が繋いだ非電化路線のバトン【8】

広告

8.キハ37形からキハ38形へ──国鉄末期の気動車政策と通勤形気動車誕生の背景

この記事では、次世代の一般形気動車として登場したキハ37形が、なぜ5両で製造が打ち切られ、そしてどのような経緯で最後の通勤形気動車キハ38形へとつながっていったのか、その背景を整理します。国鉄末期の気動車政策は、特定地方交通線の廃止や需給バランスの混乱、老朽車両の置き換え計画などが複雑に絡み合い、キハ35系の代替問題を含めて大きく揺れていました。こうした状況の中で生まれたキハ38形は、国鉄分割民営化を目前に控えた1986年に設計・製造された、最後の通勤形気動車でした。

《前回からのつづき》

blog.railroad-traveler.info

 

■ キハ37形の登場と期待された役割

 キハ37形は次世代の一般形気動車として製造コストと運用コストの両方を軽減させることを実現し、老朽化が深刻になりつつあった一般形気動車の代わりとして期待されました。
 実際、キハ37形はキハ40系のように、運用する線区に応じた様々なバリエーションも考えられたようで、片運転台車を基本にオプションとして両運転台にしたり、温暖地使用だけでなく寒冷地仕様や酷寒地仕様も考えられていたほか、AU79形による冷房装置の搭載も考慮されていたようでした。
 しかし、先行量産車として製造されたものの、たったの5両で打ち切られてしまいます。
 その理由として、赤字ローカル線を整理するための第1次特定地方交通線が廃止されることが具体化すると、これらの線区で運用されていた気動車の多くが余剰化するため、比較的車歴の浅い車両を配置転換することで、老朽車両の置き換えが可能になる可能性が出てきました。
 また、特定地方交通線の廃止とともに、経営改善計画の方針に沿った輸送改善策が実行に移されたことなどにより、膨大な数の車両需給そのものが見通せなくなってしまったことによるものでした。
 このことは、言い換えれば国鉄がいかにして、車両需給についても『ざる勘定』であったと窺わせるには十分だと言えるでしょう。管理する車両の数が膨大で、しかも運用する線区は短長様々であると言った国鉄特有の環境があったという理由もあるでしょうが、民間企業であれば許されないものであり、こうしたあたりが国鉄らしい体質を具体化する一つの例だったともいえるでしょう。

■ DMF15系の直噴化改造の停止と国鉄末期の混乱、需給・老朽化・改造の三重苦

 同じ時期にキハ40形が搭載していたDMF15系を、従来の予燃焼室式から直噴化することによって出力を強化するための改造工事が進められていました。DMF15系はDMH30系を半分にしたようなエンジンで、DMH17系よりは幾分性能は向上していたようですが、それでも民生用エンジンと比べると非力であることには変わりなかったといえます。

 特に燃料系は構造も簡単で部品点数も少なく、長く使われ続けられたことで実績と信頼性のある予燃焼室式が採用されていましたが、この方式では性能も頭打ちになるなどの課題を抱えていました。

 対して自動車や船舶用のエンジンは効率性と高性能を追求した結果、同等あるいはそれ以下の排気量でも高出力、高トルクのエンジンが開発されており、それらの多くは直噴式を採用していました。

 こうした中で、旧式化した国鉄のエンジンは効率性が悪く、運用コストも嵩むことなどから、エンジンの出力を向上させるとともに効率性を高める古都などを目的に、既存のDMF15系エンジンに対して直噴化改造を始めました。

 しかし、キハ37形の増備と同様に、ローカル線における車両の需給見通しが立たなくなってしまったことから、ここで一旦止められ、北海道向けに配置されていたもののうち118両に施されたに留まりました。

 

国鉄時代にエンジンを直噴化することは、燃焼効率を高めるとともに、出力の強化などあらゆる面で有利になることは試験運用で確認されていた。そこで、特に1両編成での運用が多い北海道に配置された車両を中心に、搭載するDMF15系エンジンの直噴化改造工事が施されていったが、ローカル線における車両需給のみと悪心が立たないなどといった混乱から、118両が改造されるに留まってしまった。北海道におけるエンジンの直噴化は、民営化後にエンジン換装が始まるまで待たねばならなくなった。(キハ40 777〔旭アサ〕 滝川駅 2011年11月23日 筆者撮影)

 

 このように、国鉄の末期はローカル線で運用する気動車については、需給バランスや老朽車両の置き換え、輸送力改善のための改造工事を巡って混乱していた時期であったといえるのです。

 

《次回へつづく》

 

あわせてお読みいただきたい

 

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info