今週のお題「お花見」
ついこの間まで寒い冬かと思っていたら、あっという間に暖かくなって春がやってきました。いえ、今週の中頃には雪まで降って一旦冬に逆戻りと思いきや、この後は春らしい陽気が続くようなので、本格的な春になりそうです。
春といえばやっぱり桜。淡い桃色の花が満開になると、「ああ、またこの季節がやって来たんだ~」なんて思いながら、ついつい見入ってしまいます。
「お花見に行かない?」
なんて軽い気もちで職場の同僚を誘ったことから恋愛に発展したことがありました。
もう、今から20年ほど前の若かりし頃のお話です。
当時はシステムエンジニアで、しかも200人強はいる大きな部署でたった一人の技術職。社内のあらゆる情報システムを運用・管理するのが当時のお仕事でした。
もちろん、社内の業務はすべてコンピュータ化がされていたので、一人一台のパソコンは既に当たり前。今の職場とは雲泥の差があるほど、デジタル化されていました。
社内での文書作成はもちろん、受注処理やら発注処理やらもすべてコンピュータ。コンピュータが停まってしまっては、すべての業務も停まってしまうので、それなりに重要でやりがいのあるお仕事でした。
ところが、パソコンが時折へそを曲げてしまうのか、それともお疲れになってお休みをしたいのかは分かりませんが、時として固まったまま止まってしまい動かなくなるほどもしばしば。そうなると、営業職や事務職の同僚には手に負えないとなり…
プルルルル♪
私のデスクにある電話が鳴るんです。
用件を聞くと多くはトラブル対応だったり、ワードやエクセルの使い方を教えてほしいと言ったことで、フットワークの軽さを売り(?)にしていた私は、すぐさまその部署へと馳せ参じては、
「おりゃーーーーーっ!」
とまでは言ってませんが、とにかくスピード解決!
自分で言うのもなんなんですが、社内の頼れる存在でした。
この時務めていたのは、70階建ビルの真ん中より下の階。
窓からの眺めはとにかく最高!毎日が楽しくて楽しくて仕方がありませんでした。
で、そんな高いところで働いていたものですから、窓からは街に咲く桜がよく見えます。といっても、淡いピンクの塊でしかないんですけどね。
「あ~、こんな陽気がいい日に仕事だなんてもったいないよなぁ。近くで桜が見られたらどんなにいいのに…」
とぼやく毎日。
ある日の夕方、もうそろそろ退勤時刻が近づいた時間に、いつもと変わらず「ヘルプ!」の電話。
私もいつもと変わらず、「すぐいきま~す」と軽く答えて、依頼主のところへと急行しました。
依頼主のところへ行くと、その事務職の女性はもの凄く困り果ててしまったようで、今にも泣きそう(?)な顔をしていました。
これまたいつもと変わらず現象を聞いて、トラブルの対応方法を考えていると…
「今日中に直りますか?」
と聞かれました。
聞けばどうしても今日中に片付けなければならない作業が、パソコンのフリーズですべてがおじゃんになりかねないとのことでした。
ううむ、これはなんとかせねばなりません。
20分から30分ほどかけたものの、トラブルシューティングをしていくと、思ったより症状は悪くなかったので無事に解決!
内心、「あ~よかったよかった」と思いました。
しかも、おまけに作業の途中だったものが、一切破損することなく再開できそうだったので、
「え!?本当ですか?すごい助かります!」
と、この女性の同僚は満面の笑みで喜んでくれました。
すると、このお仕事は残り20分もすれば片付くとも言って、今日も長い残業をしないで済みそうだとも。
?
一応、現象とその原因、そしてどのようにして解決できたかは依頼をしてきた方すべてにお話をして、それから退散していくのですが、この日ばかりはちょっと違ったんです。
ちょっとした雑談をしていると、私の口から出た言葉は…
「お花見に行きませんか?」
だったのです。
いま思うと、おいおい!何を言っているんだ!?なんですが、若いというものはこういうことを言うのでしょう、とにかく「誘って」いました。
お返事は、
「ごめんなさい」
となるのが…・
「ええ、いいですよ。私もお花みたいです」
あ、はい、そうですよね~。
やっぱり見たいですよね~。
ん?見たい!?
予想とまったく逆のお返事に、私は思わず目を丸くし、周りをキョロキョロと見回し、一瞬で社内に入り込んだ不審者みたいな挙動になってしまいました。
「え、いいんですか?」
「はい」
その日、お互い仕事が終わると、勤め先近くのお花見スポットでお花見をし、それから食事をして帰りました。
で、どういうわけか、その後、あろうことか(?)休日に一緒に出かけるようになり、とうとう付き合いだしてしまったのです。
まさに天にも昇るような気分で、お花見をしてよかった~♪
このまま我が世の春を謳歌していくことになりました。
と、言いたかったのですが、春はやはり長続きはしないもんです。
でも、その恋は桜の花が咲くとともに開花し、桜の花が散るとともにその恋は終わりを告げました。
まだまだ20代、ちょっと遅い青春を謳歌した頃の、お花見にまつわる甘酸っぱい思い出です。