旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

2023-01-01から1年間の記事一覧

悲運の貨車〜物流に挑んだ挑戦車たち〜 走る魔法瓶・生活を支えたLNG専用タンク車 タム9600【2】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info タム9600形は形式が示すように、積載重量が14トン〜16トンと、この種のタンク車としては軽量のものでした。というのも、全長は18,950mmで台車も二軸ボギー台車で、軸箱直結式インダイレクトコイルばね台車…

悲運の貨車〜物流に挑んだ挑戦車たち〜 走る魔法瓶・生活を支えたLNG専用タンク車 タム9600【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 「魔法瓶」という言葉を知っている方は、恐らく筆者と同年代の方か、あるいは諸先輩方かと思います。子どもの頃、遠足などで水筒を持っていくと、よく母から「水筒を落とさないように気をつけな…

いろいろある貨車の標記の意味【5】 在日米軍基地の貨物輸送と貨車運用標記

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■米軍軍番号と燃料種別 最後に今では見られない、もっとも特異なケースを紹介したいと思います。 第二次世界大戦の終戦以来、日本にはアメリカ軍が駐留しています。多くは沖縄県にある基地に所在していま…

いろいろある貨車の標記の意味【4】 貨物輸送の仕組みと常備駅

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■○○駅常備 国鉄・JR貨物の貨車は、基本的には所属する区所というのはなく、全国各地で配車・運用されることが基本でした。これは、貨車1両単位で貨物輸送をしていた時代からの流れで、例えばA駅に貨物輸送…

いろいろある貨車の標記の意味【3】 貨物輸送の進化と輸送係の注意喚起

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■道外禁止 この標記は現在では見ることができないだけでなく、その表記の通り北海道以外では見ることのなかった特殊なものといえます。 かつて、国鉄の貨物輸送が物流の第一選択肢だった頃、おおくの貨車…

いろいろある貨車の標記の意味【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■突放禁止 鉄道による貨物輸送が車扱貨物全盛だった頃、ほとんどの貨車は操車場に集められて、方面別に仕訳、そして着駅の方へと向かう列車に連結するという作業を繰り返していました。貨物取扱駅からやっ…

いろいろある貨車の標記の意味【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 日本全国津々浦々走り回る貨車は、今も昔もその運用形態は大きく変わることがありません。例えば、東京貨物ターミナル駅から福岡貨物ターミナル駅に向かう列車に組み込まれたコキ車は、到着後に…

悲運の貨車 奇抜な発想で複合一貫輸送を目指した両用貨車・ワ100【3】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 1992年に落成したワ100形は、翌1993年から東海道本線東京貨物ターミナル駅ー西湘貨物駅間で試験運用が始められました。実際の試験では、営業運用に入ることを想定して、車体部分となるアルミバンボディを…

悲運の貨車 奇抜な発想で複合一貫輸送を目指した両用貨車・ワ100【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ワ100形は計画自体は1990年に始まっていたようでしたが、実際に落成したのは1992年になってからでした。当時、JR貨物は国鉄時代から脈々と続けられてきた、物資別適合貨車による車扱貨物輸送から脱却し、…

悲運の貨車 奇抜な発想で複合一貫輸送を目指した両用貨車・ワ100【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 筆者が鉄道職員になろうと決めたのは、高校3年生の7月も終わり頃でした。当時、高校生の就職活動は5月ぐらいから始めないと出遅れているといわれたもので、初めから会社に入る気がなかった筆者…

2024年問題で鉄道貨物輸送の「復権」はあるのか【5】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info これまで概観してきたように、2024年問題を目前にした今日において、トラック輸送に代わって鉄道がそれを担い、政府が定めた10年後には現在の2倍を輸送するというのは、非常に課題が多く難しいといえるで…

2024年問題で鉄道貨物輸送の「復権」はあるのか【4】

《前回のつづきから》 在来線の貨物輸送量を増やすことが難しいためか、近年、新幹線に貨物輸送を担わせることが議論されています。特にJR九州の初代社長で国鉄時代は技術畑を歩んだ石井幸隆氏は、新幹線に貨物輸送、いわゆる「貨物新幹線」構想を提唱してい…

2024年問題で鉄道貨物輸送の「復権」はあるのか【3】

《前回のつづきから》 2023年10月6日、国土交通省は2024年から施行するドライバーの残業上限規制に伴う長距離トラックドライバーが不足することに対し、トラックに代わって船舶や鉄道の輸送量を今後10年間で2倍に増やす目標を決定しました。 あくまで「目標…

2024年問題で鉄道貨物輸送の「復権」はあるのか【2】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info そもそも「モーダルシフト」という言葉は、筆者が鉄道職員の頃から言われていました。特にバブル経済が真っ只中の1980年代後半から1990年代初頭にかけて、旺盛な輸送需要にトラック輸送が追いついていない…

2024年問題で鉄道貨物輸送の「復権」はあるのか【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 2023年も残すところ僅かになりつつあります。2024年になると、日本の経済活動に大きな影響を与えるとされる法令が施行されることが予定され、ほぼ毎日のように報道がなされています。 その「大…

いすみ学園に保存の東急デハ3455 クラファンで修復を目指す【後編】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 東急の輸送を支えたデハ3450形は、1981年から後継となる7200系や7700系などに押し出される形で順次廃車されていきます。1980年代に入ってもなお、吊り掛け駆動独特の音を響かせながら、東京の下町を走って…

いすみ学園に保存の東急デハ3455 クラファンで修復を目指す【前編】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 この間の日曜日に何気なく目を通していたネットニュースで、次のような話題が報じられていました。 www.chibanippo.co.jp www.jiji.com railf.jp 今回は、かつて東急線を疾駆した戦前製吊り掛け…

西武鉄道「サステナブル」車両の導入候補決まる 歴史を乗り越えた【7】

《前回のつづきから》 20m級大型車を運用する大手私鉄は、関東では東武鉄道と小田急電鉄、東急電鉄、そして相模鉄道があります。この中で、東武鉄道は8000系という抵抗制御車を運用していることから、車両譲渡を希望しても応えてもらえる可能性は皆無といっ…

西武鉄道「サステナブル」車両の導入候補決まる 歴史を乗り越えた【6】

《前回のつづきから》 ■ 2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標」、いわゆるSDGsは国や個人、法人を問わず、その目標達成に向けてあらゆる努力をしていくことになります。日本の鉄道事業者も例外ではなく、企業イメージも相まって様々な施策を進…

西武鉄道「サステナブル」車両の導入候補決まる 歴史を乗り越えた【5】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 1977年から製造された2000系は、西武初の界磁チョッパ制御車でした。しかし、この2000系をもって抵抗制御車を淘汰することには至らず、それどころか1993年から製造が始められた9000系は101系の廃車発生品…

西武鉄道「サステナブル」車両の導入候補決まる 歴史を乗り越えた【4】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■西武が「サステナブル車両」という他社車両を譲受する背景 西武鉄道は、戦後間もない頃から国鉄の戦災国電や廃車発生品を大量に払い下げを受けて、車両の近代化と拡充を図ってきました。1946年に開設した…

西武鉄道「サステナブル」車両の導入候補決まる 歴史を乗り越えた【3】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■争いの歴史を乗り越えて協力関係を築く 箱根山戦争や伊豆戦争と呼ばれた、関東大手私鉄同士の企業間競争は1960年代に入ると徐々に収束していきました。さすがに熾烈を極め、しかも法廷闘争の泥試合をよし…

西武鉄道「サステナブル」車両の導入候補決まる 歴史を乗り越えた【2】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 戦前から戦後間もない頃まで、芦ノ湖の遊覧船事業は西武グループの駿豆鉄道が一社で担っていましたが、1950年になると箱根方面への観光輸送に力を入れていた小田急電鉄と箱根登山鉄道は、芦ノ湖の湖上航路…

西武鉄道「サステナブル」車両の導入候補決まる 歴史を乗り越えた【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 世の中には、時として「度肝を抜かれる」ほど驚かされることがあります。「あり得ない」「本当か?」などと思わず口にしてしまう程のことで、何にせよ、それまでの常識を言葉通り打ち破るほどの…

東急バス虹が丘営業所大感謝祭に参加してきました

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 11月に入ったというものの、連日の夏日には本当に参っております。先日も遠足の引率にでかけましたが、あまりの暑さに体力を奪われてしまい、帰ってくる頃には言葉通り「ヘロヘロ」でした。 季…

なぜ超低床コンテナ車を追求し続けるのか【7】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ここからは筆者の私見になります。 筆者が鉄道職員時代に、コキ70やコキ71が製作された時に考えたのは、どうしてそこまで小さい車輪の台車を使った設計に拘ったのか、ということでした。確かにFT11系列の…

なぜ超低床コンテナ車を追求し続けるのか【6】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 超低床貨車の最大のメリットは、ISO規格の海上コンテナの中でも、ハイキューブコンテナと呼ばれる高さ6ft9in、2,896mmのコンテナを載せ、建築限界に支障することなく鉄道で輸送できることです。 その反面…

なぜ超低床コンテナ車を追求し続けるのか【5】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 本来ならこの特殊な超低床貨車を新たに開発・製作する前に運用を予定していた区間での建築限界を測定するのが先でした。しかし、現実には建築限界の測定は後回しにされ、試作車が登場したあとに測定結果が…

なぜ超低床コンテナ車を追求し続けるのか【4】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 1994年に、JR貨物は新たな超低床貨車となるコキ71形を開発しました。「CAR RACK」と呼ばれる自動車積載用の特殊な構造をしたコンテナであるUM20A形30000番台を載せ、往路は自動車を、復路はJR規格の12ftコ…

なぜ超低床コンテナ車を追求し続けるのか【3】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info コキ100系は従来の国鉄形コンテナ車よりも、床面高さを100mm低くしました。この100mm=10cm低くしたことで、JR規格コンテナよりも95mm高いISO規格コンテナの積載を可能にし、海上コンテナの鉄道輸送を実現…